「若い頃は甘い結婚生活を夢見るが…実際は小競り合いを繰り返す」水野美紀(48)がそれでも“楽しい世界”を想像して暮らす理由

「若い頃は甘い結婚生活を夢見るが…実際は小競り合いを繰り返す」水野美紀(48)がそれでも“楽しい世界”を想像して暮らす理由

水野美紀さん ©佐藤亘/文藝春秋

「育児は想像以上に男性には分からないもの」水野美紀(48)が気付いた子育て中のママとパパに起こる“根本的なすれ違い”とは から続く

 交際0ヵ月から42歳でスピード婚し、翌年、出産。俳優の水野美紀さん(48)が、突然はじまった怒涛の子育てを綴ったエッセイの第2弾『 水野美紀の子育て奮闘記 今日もまた余力ゼロで生きてます。 』(朝日新聞出版)を刊行した。ここでは同書より、「幸せは想像の中」を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)

◆◆◆

■舞台公演の楽しさ

 楽しいことの予定を立てている時が人生で一番幸せな瞬間の1つだ。 

 遠足の前夜が楽しいとはよく言ったもんだ。

 舞台の公演を打つにあたって、一番楽しいのはどこかと問われたら、ポイントはいくつかある。

 まずは、かなり初期段階のアイデア出し。セットや衣装、キャストなどのアイデアを自由に出してイメージを共有していく作業。

 これは楽しい。ただただ何の制約もなく自由に夢を語る時間。 

 「フライングやりたいね?」とか「こんな映像使えるかな?」とか「この人出演してくれるかな?」とか「こんな衣装作れるかな?」とか。

 その後、現実的に可能な予算枠の中に落とし込んでいかなければならないが、それは未来の自分に丸投げ。この段階では自由に夢を見る。

 この段階の想像の中で舞台に立っている自分はとても楽しそうだ。これ以上楽しくて素敵なことはないと思うくらいにワクワクしている。

 そりゃあもう、とにかく都合よく楽しいことばかり想像する。 

 その後にやって来るのはもう、産みの苦しみだ。いくつもの「大変!」を乗り越えて「プチ達成感」を得る工程の繰り返しだ。

 そして千秋楽を終えたら、しばらく腑抜けになる。安堵からくる脱力だ。

■初日から千秋楽まではプレッシャーと緊張

 実際に公演が始まると、プレッシャーやら緊張やら蓄積疲労で、楽しむどころではない。過去の自分を恨むほどだ。 

 楽しい時間に比べて苦しい時間の長いこと長いこと。あの、初期段階の想像の中の楽しさは、この世に存在しないものなのだ。

 想像の中の自分には、蓄積疲労がない。プレッシャーも緊張もない。現実とは全く違うものだ。

 分かってはいるが、想像の力は偉大だ。どれだけ大変な思いをしても、また公演を打つのだから。また1からぜーんぶやろうってんだから。

 モデルルームで素敵なインテリアに囲まれて、「こんなお部屋で暮らしたらさぞ楽しいわねえ」と夢を見るのに似ている。その夢は現実にはなり得ない夢だ。

 だってその夢の中の自分には、蓄積疲労がない。仕事のストレスもない。 

■想像力は人を突き動かすガソリン

 結婚生活だってそうかもしれない。

 若い頃に夢見る結婚生活のイメージ。

 素敵なお家で素敵な旦那様と仲睦まじく生活する甘い新婚生活。 

 そこに蓄積疲労はない。隣人トラブルもない。

 排水溝に溜まる髪の毛もない。請求書の束もない。

 実際の結婚生活が始まったら、100の小競り合いを繰り返しなから価値観の違いをすり合わせていくことになる(うちの場合)。 

 蓄積疲労め!!!

 いや、そういう話ではない。

 この、楽しい想像力が、我々を突き動かすガソリンになっているんじゃないかと思うのだ。

 我々は、現実になり得ない、存在しない想像世界を追いかけ続け、そして走り続けるのだ。

■我が子の「おかあさん、きょう、これたべたい!」

 我が子がテレビを見ながら私に言った。 

「おかあさん、きょう、これたべたい!」

 グルメ番組で紹介されていたのは人気店の、シチュー的な……チーズたっぷりの……なんか、複雑な料理。

 想像したのだろう。小躍りするほどの美味しさを。それを頰張る幸せな瞬間を。

 私はチャレンジした。

 食べたこともないその料理を想像だけで作ってみた。

 我が子の、お皿に盛られたそれを見た瞬間の「あれ?」という表情。 

 もちろん見逃さなかった。

 1口食べた。そして何も言わずに別のおかずに手をのばし、2口目を食べることはなかった。

 きっと我が子は学んだのだ。

 テレビの中のご飯と母が作るご飯は違うのだと。 

 想像する味と、現実の味は違うのだと。 

 そう。現実は思ったようにはいかない。

 そうやってちょっとずつ、大人になっていくのかもしれない。 

 それから数日後。

「おかあさん、あれ食べたい!」

 テレビに映っていたのは、クリームシチュー。

 それならば! と私は張り切って作る。

 そして夕食時、「ほら! テレビのやつだよー」と食卓に並べる。

 我が子の反応は薄い。

「あなた、食べたいって言ってたじゃない」 

 1口食べる我が子。やっぱり反応は薄い。

「やったー!」「おいしい!」そんな反応を期待していた私も学んでいる。

 現実は想像のようにはいかないと。 

 そこに蓄積疲労があろうとなかろうと。

撮影=佐藤亘/文藝春秋
ヘアメイク=面下伸一(FACCIA)
スタイリスト=山下友子

◎衣装情報

・シャツ¥48,400(YOHJI YAMAMOTO/ヨウジヤマモト プレスルーム)
・シャツワンピース¥48,400(YOHJI YAMAMOTO/ヨウジヤマモト プレスルーム)

・ピアス¥22,000(Grossé /グロッセ・ジャパン)

・眼鏡¥36,300(MOSCOT/MOSCOT Tokyo)

・その他スタイリスト私物

(水野 美紀)

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