「主婦と青年を勧誘せよ」統一教会系企業の「霊感商法マニュアル」入手

「主婦と青年を勧誘せよ」統一教会系企業の「霊感商法マニュアル」入手

警察に押収された印鑑(写真は大阪で販売されたもの)

「特に2009年以降、コンプライアンスの徹底に努めております」

 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の田中富広会長は8月の記者会見でこう発言した。長らく被害を生み続けてきた統一教会の霊感商法。そこに警察のメスが入ったのが09年の「新世事件」だった。

◆ ◆ ◆

■設立から10年間で売り上げは約7億

 摘発されたのは、教団本部のお膝元である渋谷区にあった有限会社「新世」(解散済)。09年2月に警視庁公安部による家宅捜索が入り、同年6月、社長のT(当時51)以下、7人の社員が特定商取引法違反容疑で逮捕されている。

 同社社員は、全員が統一教会の信者。渋谷駅の街頭で「先祖の因縁があなたの運気を悪くしている」「因縁を振り払うには印鑑を持った方がいい」などと通行人に声をかけ、印鑑を売り捌いていたのだ。

「印鑑は3本120万円が基本セット。立件したのは氷山の一角で、新世は設立から10年間で約7億円を売り上げていた。収益の大部分は、教団本体に還流していた」(当時の捜査関係者)

■押収された霊感商法のマニュアルなど内部資料を入手

 当時、教団側は「当法人と『新世』は無関係」とシラを切り続けたが、

「新世は教団の南東京教区傘下にあり、社長のTは教区長の下につく伝道部長。印鑑販売の顧客データは教区長に送られており、新世と教団は一体だった」(同前)

 今回、「週刊文春」は、同社から押収された霊感商法のマニュアルなど内部資料を入手した。その中で新世は〈特別伝道部隊〉と呼ばれ、〈SKを出させるのが最高の教育〉などと記されていた。伝道は勧誘のこと。SKとは「信者献金」を意味する。つまり、新世は霊感商法を入口に、信者と献金の獲得を目的とする教団の前線組織だったのだ。

■主婦と青年を勧誘せよ

 同社は、相手を入信させ、教育し、献金させるまでの過程を「生産ライン」と呼び、フローチャートも作成。信者化した者の一部は、被害者から、加害者に回っていく。スタッフとして勧誘する人材についてマニュアルにはこう綴られている。

◆実践壮婦になれる人(30~50代)主婦/時間がある、経済的余裕

◆献身青年になれる人

 高齢者と学生はペケ印が付く。元信者が補足する。

「実践壮婦とは、教団の活動を行う婦人信者。献身青年は集団生活をしながら勧誘や物販など、教団の活動に専念する若者。献身者とは、いわば出家信者です」

 Tは、新世を「全国のモデル店舗」と自負。

「新世の売上は、約100社あった統一教会系の同種会社の中ではトップクラス。Tの作ったシステムとマニュアルは全国で利用されていた」(前出・捜査関係者)

■金集めの手口は巧妙化

 新世の摘発後、統一教会の徳野英治会長は、信者の関与を認めて引責辞任。09年11月、Tらは有罪判決を受けた。判決文ではこう断罪されている。

〈相当高度な組織性が認められる継続的犯行〉〈犯情は極めて悪い〉

 刑事事件で教団との関係が認定されたのは、これが初めてのケースだった。

「教団本部にも強制捜査が入るのではないかと、内部は大混乱に陥っていました」(本部勤務だった元信者)

 その後、教団は変わったのか。渋谷駅で勧誘を阻止し、新世の社員に殴打された経験のあるジャーナリストの鈴木エイト氏は、こう指摘する。

「信者に献金をさせ、見返りとして物品を授ける手法が主流となりました。商品が介在しないだけで、人の財産を収奪する本質は変わっていません」

 むしろ、外部に向けたノウハウが封じられたことによって、内部の信者に対する献金の圧力はより強まったともいえた。

 新世事件について、改めて統一教会に問うと「有限会社新世は当法人の信者が経営していた企業になります」とだけ回答。司法が認定した教団本体との関係を今も認めようとしない。

 反省はなく、金集めの手口は巧妙化。これが統一教会の実体なのだ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年9月22日号)

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  • 1

    またかよ? 非科学的な文春。 今度はどこにタカるの?呆れるフォーマット

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