6キロ超の大盛りラーメンを20分で爆食…元大食い選手・ロシアン佐藤(37)がYouTubeで人気を獲得した“納得の理由”

6キロ超の大盛りラーメンを20分で爆食…元大食い選手・ロシアン佐藤(37)がYouTubeで人気を獲得した“納得の理由”

ロシアン佐藤さん ©文藝春秋

「開始10秒で『ああ、帰りたい』と…」元大食い選手・ロシアン佐藤(37)が『大食い王決定戦』で直面した“意外な試練” から続く

“ロシアン佐藤”こと佐藤ひとみさんは、きれいに、楽しそうに大食いにチャレンジする。

 その姿は、自身のYouTubeチャンネル 『ロシアン佐藤「おなかがすいたらMONSTER!」』 でも健在で、チャンネル登録者は95万人を超えるほど。驚くべきは、同チャンネルが共同代表兼COOを務めるエッジニア合同会社の事業でもあるという点だ。

 食を通じて恩返しがしたい――。そう語る彼女に、YouTuberで支持を得るために必要なこと、大食いで学んだことを訊いた。(全2回の2回目/ 最初から読む )

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■あごの強さで勝ち上がってきた

――ロシアンさんは、当時、生の海鮮系が苦手だったということですが、大食いファイターが総じて苦手とする食材などはあるのでしょうか?

ロシアン うーん、やっぱり揚げ物ですかね。歯ごたえのある揚げ物などはあごが疲れちゃって噛めなくなってくる。胃の容量がどれだけあっても、飲み込めなくなってしまうんですよ。

――胃がハードウェアだとしたら、噛む力はソフトウェアのような感じですか……?

ロシアン 咀嚼して飲み込む力というのは、インターフェースが機能しないから入っていかない感じに近いかも。スピードよくデータを送り込めないのと同じですね。たとえば、胃の容量が10キロの選手と8キロの選手が、4キロのかたいものを食べるとします。

 前者は4キロのかたいものを食べるのに4リットルの水が必要。対して、後者は500mlの水で十分。この場合、4リットルを必要とする人よりも、500mlで十分の人のほうが勝つんです。胃の空き容量に余裕があるし、あごと喉をそんなに使っていないので食べるのが早い。
 
 私自身、あごと喉の強さで勝ち上がってきたタイプ。女性選手の中では、私と正司(優子)さんが極端に水分を取らずに試合をこなしていたと思いますね。

■レジェンド・小林尊の「すごさ」

――逆に言うと、水をよく飲む人というのは、飲み込む力があまり強くない人ということなんですね。

ロシアン ですね。ただ、胃の容量がものすごくあるタイプの人は、柔らかくて喉越しがいい白米や麺類などはめちゃくちゃ強いです。トップクラスで強い人って、容量も大きくて、飲み込む力も強い人。その最たる例が小林尊さん。

 小林さんは、過去に『ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権』で優勝されていますけど、あれってほぼ噛んでいなくて、口の中にあるホットドッグを、次のホットドッグで押し込んでいるんです。噛まずに飲み込めるほど喉の力が強くないとできないし、パンを水に浸して食べやすくするので、水分を入れても余裕がある胃の容量を持っていないとできない。あんなに短時間でホットドッグを食べることができるのには理由があるんですよ。

■自炊系大食いYouTubeを始めたわけ

――肉体の可能性を感じますね……。現在、ロシアンさんは登録者95万人を超えるYouTubeチャンネルで大食い動画を配信する人気YouTuberでもあります。ロシアンさんは2016年という早い時期から始められていますが、なぜYouTubeを?

ロシアン きっかけは、女性フードファイターの木下ゆうかちゃん。当時、すでにゆうかちゃんは70万人くらいの登録者を持つ人気YouTuberだったのですが、彼女から話を聞いて私もやってみようかなと。ホントに軽い感じで始めたのですが、100個食いチャレンジみたいな企画をしてみると、結構な再生数を記録しまして。「待ってました!」みたいなコメントが来る一方で、「木下ゆうかのパクリだ!」というコメントもたくさんきた(笑)。

 大食いYouTubeは、ゆうかちゃんの専売特許みたいな状態だったので、どうすれば差別化を図れるかと考えた結果、自分で作ってみたらどうだろうって。それで自分で作って食べるシリーズを始めるようになったんですね。自炊系大食いYouTuberのハシリだと思います。

――今はフードファイターの方が、自身のYouTubeチャンネルを持つことは当たり前になっていますが、当時から“かぶらないこと”を意識されていたんですね。

ロシアン 今は群雄割拠状態ですよね。いつ自分が埋もれるかヒヤヒヤしているくらい。でも、あの頃はブルーオーシャンだったので、差別化を図りやすかったところもあります。自炊系大食いって、やっぱり食べる量が多いので、凝ったものを作り出すととても時間がかかる。今まで一番時間がかかったのが、「理想のおせち」という企画。料理の仕込みだけで3日ぐらいかかってしまって……でも、食べるのは4時間とかで終わっちゃう(苦笑)。

■「大食い王決定戦」で学んだ“技術”

――ロシアンさんのチャンネルを見ていて感心したのが、唐揚げを順次揚げながら食べていく動画などです。おいしさをキープしながらバクバクと食べていくのはすごいなぁと。

ロシアン 熱々で食べてほしいという視聴者さんの思いと、一遍に並べて壮観にしたいという思いを両立させるなら、この方法しかないなって。私のチャンネルは、大前提として「おいしく食べる」というのがある。費用対効果のせめぎ合いもそうですけど、サムネイルの映えとおいしさのせめぎ合いもありますね。

――もうプロのディレクターですよ(笑)。

ロシアン そうした意識って、『元祖!大食い王決定戦』で培われたところが大きいような気がします。素人の私たちが参加しても番組としてしっかり面白くなる。その現場を直に体感して、後日放送で「編集するとこういう形になるんだ」という実体験があったからこそ、何が必要で何が要らないかということがわかったというか。

■食事マナーへの配慮も入念に

――たしかに、無名の素人が輝ける『TVチャンピオン』に端を発する『元祖!大食い王決定戦』って、企画次第で誰でも人気者になれるYouTubeと親和性が高いかもしれない。

ロシアン それはあるかもしれないです。YouTubeって、ホントに好きじゃないと見てくれない。なので、私も食べ方やマナーなどには細心の注意を払って、場合によっては「食事マナーに配慮する余裕がないかもしれません」といったテロップを付けるようにしています。

「咀嚼音注意」とか、視聴者の趣味嗜好に寄り添うことが大事なので、サムネやタイトル、概要欄で、「この動画ってこういうものを配信しています、こういうテンションですよ」といった情報をなるべく伝えるようにしています。視聴する前に、自分の趣味嗜好に合ったものかどうかをきちんとつかみ取ってもらう工夫が必要です。

――できる限り道路標識を掲げておくことが望ましいと。ロシアンさんは、現在は食のインフルエンサープロダクションやシステム開発などを手掛けるエッジニア合同会社の共同代表兼COOという立場。もともとは、システムエンジニアだったんですよね?

ロシアン そうなんです。ただ、当時は収入として大食い一本だけで生計を立てられるわけではなかったので、社会人をしながら趣味の延長でフードファイトを続けていたという感じです。その後、自分たちでシステムやものづくりにチャレンジしてみたかったので、独立してエッジニアを起業しました。せっかく特技があるのだから、個人でやっていた私のYouTubeチャンネルを、事業の一環としてエッジニアのメディアとして組み込んだんです。

■YouTubeで“稼げる”ようになるまで

――先ほどのYouTubeの工夫のお話もそうですが、その設計力に感心してしまいます。

ロシアン いやいや。創業当時はまったくYouTubeのコンテンツでお金は稼げませんでした(苦笑)。昼はエンジニアとして普通にシステム開発をやりながら、夜は自宅でYouTubeの撮影をするという毎日。 登録者数が30万人まで到達した際の記念動画『5kg超!!大食い専用?大人様ランチ!夢のワンプレート 30万人ありがとう!』がものすごくバズって(2022年11月現在で670万回再生)、ようやく収益の柱として見合うようになってきました。

 そこからはエンジニア業務は他の社員に任せて、私はYouTubeをはじめとしたメディア運営にシフトしていくように。会社の代表ですから、雇っている社員たちの毎日の糧にならなきゃいけない。「責任を持てることをお前はしとるんか」ということを自分に問いただしながら、その一方で「ファンの人をちゃんと楽しませているのか」といったところも考えて動画を作製しています。

――会社の事業としてのYouTubeチャンネル。「自分1人が楽しめればいい」という視点だけではないからこその細部にこだわった作りなんですね。

ロシアン もともと私は、「1人でできる範囲でやればいいじゃん」というタイプだったんですよ。なので、人に任せることがとても苦手だった。でも、いろいろなものづくりをしていく中で、1人でできることなんてホントに限られている。私ができること、得意なことってすごく少ないということに気付きました。会社の事業として達成感があると、1人じゃなくてメンバーと分かち合える。いっぱい反省もして、いっぱい泣くこともありましたけど、今の自分って過去の積み重ねでしかない。みんながいないと何もできませんって、最近はよく言っています(笑)。

■フードファイターから引退…今後の展望は?

――現在は、「OTEMOTOプロジェクト」という新しいプロジェクトを掲げています。

ロシアン 「すべての人に幸福な食卓を」というのがOTEMOTOの大きなスローガンです。私は昨年、フードファイターの引退宣言をしたのですが、これからやりたいことや自分の人生は何を指針にして生きていくのか――ということがわかったから、引退を表明しました。ようやく今まで私がやってきたことが何だったのか、それを言語化できるようになったというか。

 お料理を作ってくださる方たちも、1次産業に関わってくださる方たちも、自分たちの作っているものに対して愛情、プライドを持っている。そういう思いを、SNSをはじめ今の伝え方に合った形で伝え、「大切に食べよう」と思う人が1人でも増える循環を作りたい。私自身、食のおかげで今があります。「食」を通じて、その恩返しがしたいんですね。

■「つわりのひどい妊婦さんも視聴してくださって…」

――フードファイターの皆さんって、大食いをするからこそ、食への姿勢が真摯というイメージを受けます。そういう方々にしかできない食の発信があるような気がします。

ロシアン ファンの方に支えていただいている『おなかがすいたらMONSTER!』という大きなチャンネルを持つ今の環境は、とてもありがたいこと。ただ、そこに甘んじるのではなく、今いるファンの方たちがより日々のご飯を楽しめるようになるなどネクストステップに踏み出していかないといけないと思っています。

 病気で食事制限がある方や、つわりのひどい妊婦さんなどが視聴してくださって、「食べてくれて元気が出た」といったメッセージをありがたいことにいただくこともあるんですね。私のチャンネルって、女性の視聴者がとても多い。私が作っているものが、ほんの少しでも生きるための支えになるという方がいる以上、適当にやっちゃいけないって、すごく感じます。

――大食いって、ものすごく「生命力」を感じるコンテンツだと思います。だから、ずっと人気なんでしょうね。

ロシアン 先ほど群雄割拠って言いましたけど、それだけそれぞれのチャンネルが成長しているということですよね。同じパイを持っているものとしては脅威でもあるんですけど、同時にすごく喜ばしいことで、大食いがそれだけ支持されているジャンルなんだなって思うんです。

「好きだな」と思ってもらえる普遍的なコンテンツですから、私自身、その意味を考えていきたいです。大食いは、第6世代、第7世代と新しい世代が登場しているけど、その子たちもおいしいご飯をいっぱい食べて、食の魅力を伝え続けてほしいなって……なんだかお母さんみたい(笑)。私も、その1人であり続けたいですね。

写真撮影=釜谷洋史/文藝春秋

(我妻 弘崇)

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