《改造車で歩道を暴走》「最高にダサい成人式になりましたね(笑)」大牟田の地元民でさえ迷惑がる“16人のヤンキー特殊部隊”とは 中には野球の元日本代表選手も…
2023年01月24日 20時10分文春オンライン

街中を暴走する改造車。落書きも旗もとにかく目立つ
鮮やかな赤と青のペンキでフロントガラスまで塗装し、「大牟田」「祝」「成人」などと白文字で書かれた異様な軽トラックが爆音をまき散らしながら歩道へ乗り上げる。
歩道を歩いていた男女は危うく身をかわしたが、荷台に乗った異様な服装の男たちは心配する様子も見せずに駆け抜けていく――。
成人式を翌日に控えた1月8日、福岡県の大牟田市で開かれた「はたちの集い」会場付近で撮影された映像に、日本中から批判が殺到した。
「大牟田の成人式は毎年、どれだけ目立てるかを競う祭りのようなもの。今回話題になったあれも極めつけのヤンキーたちで、何年も前から準備していたんだと思います。『ダサいことは絶対やらない』と言っていたみたいですけど、警察のお世話になって全国に顔を知られて、最高にダサいことになりましたね(笑)」(成人式に参加した男性)
“軽トラック暴走”の当日に男性のうちの2名が道路交通法違反の疑いで検挙されている。“暴走”の詳細を社会部記者が説明する。
「午後2時30分頃、車のマフラーなどを不正に改造した軽トラック2台が、交差点を曲がった死角地点で待ち伏せていた警察官を避けようとして歩道に乗り上げました。その後すぐに警察官に止められ、改造車は押収。運転していた男性2名が歩道通行、消音器不備などの道路交通法違反で取り締まりを受けました。逮捕ではなくいわゆる『キップを切られた』という行政処分で、反則金として2台あわせて2万1000円を科されています」
■「あれは地元でも“特殊部隊”のようなやつらです」
大牟田署の幹部は「目立つことは悪いことではないが、人に迷惑をかける行為は絶対にやめてほしい」とコメント。この“新成人”たちは、一体どんな人物たちなのか。事件当時も、歩道に向かって「どけ!」「轢くぞ!」と大声を上げた“特殊部隊”の1人を知る男性が、彼らの素性をこう話す。
「彼らは16人のヤンキーグループで、高校時代から単車で走り回っていた地元でも“特殊部隊”のようなやつらです。何人かが塗装業や車の整備関係の仕事に就いていて、今回の改造車も自分たちで部品集めや塗装をしたお手製だと思います。小さい頃に野球で日本代表に選ばれた人もいるんですが、地元では完全に“たちの悪いヤンキー”として有名人です」
多くは地元に残って就職しているが、中には成人式に参加するために遠方から地元に戻った人物もいるといい、会場でも「大牟田がNo.1! ナメんな!」「北九州には負けん!」と奇声をあげていたという。
「成人式の会場に入った時に、駐車場に改造車が停まっていて、“あのグループの車だろうな”と予想はつきました。会場の入り口付近でタバコを吸ったりお酒を飲んだりしながら写真を撮っていました。一緒にいた親らしき人に「産んでくれて、これまで支えてくれてありがとー!」と叫びながら花束を渡していたんですが、親はどういう気分で見ていたんでしょうね」(前出・知人男性)
歩道への危険な乗り上げはともかく、改造車や名前入りの旗、派手な袴姿での成人式は「毎年繰り返されている大牟田の風景」だとこの男性は話す。
中には衣装を派手にするために100万円を超える大金を使う人もいるという。
■「『大牟田バンザイ、やっぱり1番』と英雄気取りでしたよ」
“目立ってナンボ”の価値観の中で生きる彼らは、動画が拡散され批判を招いていても、当初はそれを誇っていたという。
「やはりどれだけ目立てるかが勝負ですから、拡散され始めた頃は『大牟田バンザイ、やっぱり1番』と英雄気取りでしたよ。暴走前の写真では16人全員いたのに、式が終わった時の写真には14人しかいなくて、2人は捕まったんだなと思って笑いましたが」(同前)
騒動の拡大を受けて暴走を起こしたグループの1人がSNSで「#歩道の家族ごめんなさい」と謝罪したが、同時に「#後悔なし」とも書き込んでいる。しかしネット上で個人が特定され批判がさらに高まると、次々にSNSを非公開にしている。
“荒れる成人式”というと沖縄や北九州市が有名だが、大牟田もその荒っぽさでは負けていない。その背景には、地元の“黙認”の空気があるという。暴走があった道路の近くに住む50代の男性は同情混じりにこう語る。
「成人式は子供でいられる最後の日ですから、見て見ぬフリ、容認している人の方が多いんじゃないですか。7月の『大蛇山』の祭りはもっと激しいから、成人式くらいだと驚かないんです。周りも止めるどころか煽る一方で、先輩は『今年の奴らはどうかな』と見に来るし、付き合ってる女の子たちも『派手じゃないとかっこ悪い』というくらい。警察も大勢配備されてはいますけど、街中を警戒することなんてできっこないですからね」
“荒れる成人式”に対して寛容な大牟田の雰囲気がわかる。それでも今回は、騒動の広がりを迷惑がる住民もかなり多くいるようだ。小さな子どもを持つ女性(30代)は暴走トラックに乗っていた男性たちについて顔をしかめてこう語った。
「大牟田にもああいうタイプの子たちばかりが住んでいるわけではないので、本当に迷惑しています。巻き込まれてケガをしそうで、会場や駅近くには毎年近づきません。あの動画で轢かれそうになっていた子供が自分の子供だったらと思うと怒りがこみあげます。ああいう子には育って欲しくないし、関わらせたくもないですね。“大牟田の恥”だと思います」
■成人式支持派も「一般の人に迷惑をかけるのはダメ」
会場近くで飲食店を構える40代の男性も「今回はあまりにもひどかった」と非難の気持ちを隠さない。
「誰にも迷惑をかけず、誰も怪我なく終わるなら騒ぐくらいはいいと思うんですが、一般の人に迷惑をかけるのはダメでしょう。死人が出てからでは遅いですが、警察も本気で取り締まる気があるのかないのか……。ウチは会場から近いので、成人式の日はタバコの吸殻や空き缶、空き瓶が散乱して掃除するのが大変なんですよ。衣装の羽が地面に広がっていたこともあります。そもそもあの羽は一体何なんでしょう」
毎年のように問題視されながらも、成人式での“目立ったもの勝ち”という傾向は一向に収まる気配がない。抜本的な対策が待たれる。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
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