機種変更時のデータの移行、どれくらい手間がかかる?最新の移行ツールで見るiOSとAndroid徹底比較

機種変更時のデータの移行、どれくらい手間がかかる?最新の移行ツールで見るiOSとAndroid徹底比較

機種変更にまつわるデータ移行のツールは、近年著しく進化しています。写真はGoogleのスマホ「Pixel」シリーズのデータ移行ツール

 スマホの機種変更にともなうアプリやデータ、設定の移行は何かと面倒なもの。新規にセットアップするだけならまだしも、アプリやデータを取りこぼしなく移行させる手間を考えると「もうしばらくこのまま使い続けよう」と、機種変更を躊躇してしまう人も少なくないことでしょう。

 もっとも、こうした機種変更に伴うデータ移行は、専用ツールの進化も著しく、ユーザにかかる負担は徐々に少なくなりつつあります。今回は、iOSとAndroidそれぞれについて、最新のツールを用いて、機種変更に伴うデータ移行の手間がどのぐらいかかるのかを検証します。

■iOSは「クイックスタート」でほぼそのまま使用可能

 まずはiPhoneについて見ていきましょう。iPhone、iPadといったiOSデバイスについては、iOS 11で新たに搭載された「クイックスタート」機能を使うことで、手軽に新しいデバイスへのデータ移行が行なえます。

 利用は至って簡単で、新しいiPhoneの電源をオンにして従来のiPhoneの近くに置くと、「クイックスタート」という画面が表示されます。ここで従来のiPhoneの画面に表示されるパターンをカメラで読み取ると、データをiCloudからダウンロードするか、それともiPhoneから直接転送するかが表示されますので、どちらかを選んで実行するだけです。

 このクイックスタートでは、インストール済みのアプリはもちろん、アプリ固有データの多くもほぼそのまま移行できます。またAppleウォレットに登録されているカード情報も、指示に従ってセキュリティコードなどを入力すればそのまま使えるなど、再設定の手間はこれ以上ないほど抑えられています。

■LINEなどSMS系には注意が必要

 一方で、LINEや+メッセージなど、特定の電話番号と紐付けられているSMS系のアプリは、それぞれのアプリごとに定められた手順で移行する必要があり、これを怠ると過去のトーク履歴が見られなくなるなどの問題が発生します。

 これらはAndroidでも同様で、iOS固有の問題というわけではないのですが、こうした個別作業が必要なアプリをいくつ利用しているかが、移行の手間を決定づけると言っても過言ではないでしょう。

 とはいえ全体的な流れは非常にスムーズで、数十GBのデータがあっても移行完了までには数時間程度しかかからず、実際に画面を見ながら行わなくてはいけない操作はほんの十数分程度です。

 重要なデータについては、きちんと引き継がれているか念のためチェックしたほうが無難ですが、用心して旧端末を何日にもわたって初期化せずキープしておくほどの必要は感じません。機種変更のハードルは、極めて低いといっていいでしょう。

■Androidはメーカー事にツールがバラバラ

 一方のAndroidはどうでしょうか。Androidはメーカーごとに機種変更のためのツールがバラバラで、それによって手間も大きく異なるのですが、今回はGoogleの「Pixel」シリーズが採用している最新の移行ツールを例に紹介します。

 このツールでは、新旧デバイスを有線ケーブルで接続してのスムーズなデータ転送が行えます。細かな設定はもちろんのこと、インストール済みアプリはGoogle Playストアから自動的にダウンロードされ、従来と同じ配置でホーム画面に並べてくれます。

 試した限りでは、公開が終了したアプリを除けば、手動で再インストールしなくてはいけないアプリはありませんでした。

 生体認証などの設定こそ、改めて行わなくてはいけないものの、全体的に作業はほぼ自動化されており、iPhoneにおけるクイックスタート機能と比べても、移行作業はきわめて容易です。

 Googleアカウントでログインしているアプリは、再ログイン不要でそのまま使えてしまいますし、Google Payに登録しているカードも、セキュリティコードを入力すれば再登録なしで引き続き使用できます。

■LINEなどに加えて注意が必要なのは電子決済系アプリ

 ただしiOSと同じく、LINEなどのSMSアプリは、定められた手順に従って移行を行う必要があります。また楽天EdyやWAONのような電子決済アプリも、機種変更用パスワードを発行しなくてはならないなど、バーコード決済アプリと比べても移行は面倒です。iOSとAndroidの両方を所有しているユーザは、Androidを電子決済専用にしている人が多いはずで、登録している電子決済アプリが多いと、かなりの労力が必要になります。

 またPixelからPixelへの移行のように同一メーカーの機種間ならまだしも、メーカーをまたいでの移行では、アプリの再設定が必要になる場合があります。

 例えばある銀行系のアプリは、iPhoneからiPhone、またPixelからPixelへの移行であれば生体認証でログインしてそのまま利用を続行できましたが、Pixelから別のAndroidスマホへの移行では、IDとパスワードで再ログインして生体認証を再設定する必要がありました。

 このような再設定を求められるケースは、iOSのクイックスタートと比較して、現状ではAndroidのほうが多いようです。またアプリに含まれるデータについても、iOSに比べて移行されないケースが多く、完了していざ使おうとすると「あのデータがないじゃん」となることがしばしばです。そのため移行後すぐに旧端末を初期化するのは避け、きちんと移行が完了できているかどうか、ひととおりチェックして回ったほうが無難です。

 このほか、Google Playストア以外からインストールしたアプリについては、移行の対象に含まれませんので、手動でインストールを再度行ってやる必要があります。iOSと違って純正以外のストアからアプリを導入できるAndroidならではの特徴の一つといえます。

■Androidは移行完了後のチェックが不可避?

 まとめると、LINEなどのSNSや電子決済アプリこそ、iOSでもAndroidでも個別に移行作業を行わなくてはいけないものの、それ以外の設定やアプリの移行についてはどちらも専用ツールが用意されており、数年前に比べると移行にあたってのハードルは格段に低くなっています。特に今回試用したPixelの移行ツールは、有線接続でデータを転送するぶん、作業時間そのものはiOSと比べてむしろ短時間で済みます。

 ただしiOSの場合、仕事を終え帰宅してから移行作業を開始して、就寝前にはほぼ元のiPhoneと同じ状態にすることも不可能ではないのに対して、Androidは見た目は復旧できても、必要なデータがきちんと転送されているか、ひとつずつチェックしなくてはならず、そうした意味では、移行作業はまとまった時間が取れる休日に行ったほうがよいかもしれません。

 Androidの場合、多くのメーカーが手掛けておりデバイスの組み合わせが無数にあること、またGoogle Playストア以外からアプリを導入できるなどの自由度の高さもあって、移行ツールの守備範囲外となるデータが少なからず発生することは避けられません。同じメーカー間の移行はある程度信頼が置けますが、そうでない場合は、今後どれだけ移行ツールが進化しても、作業完了後のチェックはより入念に行うべきと言えそうです。

(山口 真弘)

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