給料を取り上げ、骨折するまで暴行、火傷で広範囲に皮膚が剥がれ…衰弱死した25歳男性への“あまりにも酷すぎる仕打ち”
2023年03月17日 18時00分文春オンライン

※写真はイメージです ©AFLO
成人男性の体重が36.8kgに…「衰弱死」させたとして起訴された57歳悪女の“驚きの弁明”《滋賀県「同居男性衰弱死」事件》 から続く
滋賀県愛荘町のアパートで同居していた岡田達也さん(当時25歳)に暴行し、十分な食事を与えずに衰弱死させたとして、傷害致死罪などに問われている小林久美子被告(57)。小林被告は起訴内容を否定するが、実際にはどうだったのか――。
検察側はLINEに残っているメッセージや関係者の証言などをもとに、反対尋問で小林被告に斬り込んだ。
■主尋問で給料は月6万~7万と言っていたが…
検察官「達也さんが病院に通っていたことはあるのか?」
被告人「初めの頃にあったようなないような……。胃腸風邪になって、病院に通院した」
検察官「達也さんにはお金を渡していた?」
被告人「1000円とか、2000円とかずつぐらい。月にしたら1万3000~1万4000円ぐらい」
検察官「給料はあなたに渡していた?」
被告人「最初は長女に渡していたけど、長女が出て行ってからは私に直接渡していた」
検察官「主尋問で月6万~7万と言っていたが、もっと多くないか?」
被告人「そんなことはない」
検察官「これは裁判所に証拠として提出されているものですが、達也さんの給料は2月に10万円、3月に17万円、4月に20万円とあるが」
被告人「絶対にそんなにもらっていない」
■LINEには《もらった、ハゲの預かってるぜ》
検察官「Xが勤めていた解体屋で働くようになってからは、あなたがXに指示して給料をもらってきていたのでは?」
被告人「違います」
検察官「これはあなたとXの2019年2月22日のLINEのやり取りです。《給料預かったやろ?》《もらった、ハゲの預かってるぜ》って何ですか?」
被告人「私はいつも達也からもらうから」
検察官「5月25日にもXとのLINEのやり取りで、《給料は頼むで》《もろた》《ハゲのよ》とある。あなたはこのときにXから給料を受け取った記憶はある?」
被告人「私はいつも達也から受け取っている」
検察官「お金を搾取しようとしていたのではありませんか?」
被告人「違います」
■娘の彼氏を略奪したという後ろめたさは…
検察官「これはあなたの自宅アパートから見つかったものですが、『死ぬまでお金を払い続けます』という文書を達也さんに書かせたことはありませんか?」
被告人「(文書を示されて)これ自体、読んだことがないので、何でこういう文書があるのか分からない」
検察官「長女はどうして家を出て行ったんですか?」
被告人「放浪癖があるので」
検察官「あなたとの生活がイヤで出て行ったのでは?」
被告人「今までも5~6回あることなので。いつも『家に帰りたい』と電話がかかってくる」
検察官「最初は長女と達也さんが交際していたんですよね?」
被告人「長女が出て行ってから、達也と親密な関係になって、『交際したい』と何度も言われるので……。でも、年齢がだいぶ下なので、引け目を感じているところはあった」
検察官「娘と交際し、その母親とも交際することについて、達也さんは何か言っていたか?」
被告人「長女は達也さんを邪険に扱っていたので、私は長女を叱っていた」
これまでも小林被告は出会い系アプリなどで知り合った男性と肉体関係を結び、最初は優しく接するものの、ヤクザの話を持ち出して脅し、暴行や食事制限によって支配するという悪行を繰り返してきた。長女や次女もそのためのコマでしかなく、娘の彼氏を略奪したという後ろめたさは皆無のようだ。
■自宅から見つかった文書について「ふざけて書いた」
検察官「あなたが達也さんに惹かれたところは?」
被告人「優しいところもあるし、きついところもあるし……。でも、付き合ってみたら、DV被害に遭った。自分も暴力を振るわれた」
検察官「それがどうして達也さんと付き合うことに?」
被告人「一緒にいるうちに情が湧いた」
検察官「達也さんを雑用係として住まわせていたのではないか?」
被告人「そういうことはありません」
検察官「達也さんが亡くなる直前まで掃除をさせたりしていなかったか?」
被告人「ないです。本当にないです」
検察官「これもあなたの自宅から見つかった文書です。『達也のすること。トイレ掃除、月水金日。風呂掃除、火木土。達也を人間として自立させる』って、これはどういう意味ですか?」
被告人「分からないです。でも、これは見たことはあります。長女と私がふざけて書いた」
■なぜ愛していた相手が低栄養状態になるのか
検察官「誰かが達也さんに食べ物を与えたりすると嫉妬すると言っていましたが、それはどういうこと?」
被告人「ヤキモチみたいな……」
検察官「達也さんのことを愛していたんですよね。結婚まで考えていた。それがなぜ、低栄養状態になる?」
被告人「……」
検察官「2019年4月9日に達也さんからあなたに送られたLINEには、《分かった、本当にごめんね。2度とお菓子取らん。ママに言う》とありますが、意味内容を説明してもらえますか?」
被告人「どういうことか、ちょっと分からない」
■解剖医の所見を能面のような顔で聞いていた
岡田さんの遺体を解剖した法医学の専門家によると、岡田さんの左手には火傷の痕があり、かなり広範囲に皮膚が剥がれてしまっている状態だったという。しかも腕が曲がらない状態だった。「沸騰した温度に近いものがかかった可能性がある。相当痛かったはずだ」と見解を述べた。
また、岡田さんの右足のスネは楕円形に皮膚が剥がれており、骨が見えている状態で、骨折していたという。古い傷と新しい傷が混在しており、開いた傷が治癒されることなく、放置されていた。少なくとも1カ月以上前から暴力を受けており、「岡田さんの痛みは非常に強いものだったと考えられる」と述べた。
また、死因に直結することだが、岡田さんは腹膜炎を起こしており、十二指腸が破れていた。「潰瘍だけでも相当痛いが、粘膜を破って穴が開く状態になれば、必ず緊急手術を受けなければならない。これを十二指腸穿孔と言いますが、放っておいたらまず亡くなる」と述べた。
つまり、岡田さんは激しい低栄養状態から、臓器に栄養が行き渡らなくなり、傷を治すためには栄養が必要なのに、それがないために免疫力がどんどん低下していった。岡田さんの解剖所見には「加害行為を受けないと損傷されない傷ばかりで、日常的に暴行を受けていたと考えられる。暴行と食事を摂取できていないことの2点に行き着く」と書かれていた。
それでも小林被告は解剖医の所見を能面のような顔で聞いていただけだった。
■「病院に連れて行った方がいいと思わなかった?」
検察官「2019年9月初めに達也さんは左手を火傷したんですね?」
被告人「でも、保険証がなくて、病院に行かなかった。本人も『行かない』と言っていた。皮がめくれていたけれど、薬を塗ってあげたら、ちょっとはマシになった。だけど、包帯を替える度に痛がっていた」
検察官「足も折れてたでしょ。火傷よりだいぶ前。8月頃ですか。病院に連れて行った方がいいと思わなかった?」
被告人「曲げ伸ばしができなくなったのは、もうちょっと経ってから」
検察官「胃腸風邪になったときは連れて行ったのに、なぜ対応が違うんですか。ケガを隠したかったのでは?」
被告人「隠してるわけないじゃないですか」
検察官「達也さんが病院には行かないと言い張った?」
被告人「……」
検察官「答えがないので次の質問に行きます。親戚のYが達也さんを木刀で殴ったのは、『仕事をしていないから』と言いますが、そんな理由で何で殴る?」
被告人「私のことを思ってしてくれたんじゃないですかね」
■「あなたが達也さんに暴力を振るわれているのを見た人はいない」
検察官「複数の証人が『Yは大人しくて暴力を振るう性格じゃない』と言っている。あなたの指示で暴力を振るったんじゃないですか?」
被告人「それはありません」
検察官「Yは達也さんが死亡する直前の2019年9月29日に交通事故死している。その前日にも達也さんと殴り合いのケンカをしているのはなぜ?」
被告人「私との結婚がうまくいかないのが原因だと思う」
検察官「事件の関係者で、あなたが達也さんに暴力を振るわれているのを見た人はいない。何で他の人がいる前では達也さんとケンカにならない?」
被告人「一般的に人の前で夫婦喧嘩はしないと思いますけどね」
検察官「あなたの話がウソなのでは?」
被告人「この場で私がウソをつくことはありません」
小林被告は別の同居男性3人に対しても同じ手口で臓器損傷や脳損傷を負わせた傷害罪にも問われ、地裁は先行して裁判官のみで審理し、今年1月に有罪とした。
検察側は部分判決の有罪分も含めて懲役24年を求刑し、結審した。“稀代の悪女”に対する裁判員裁判の判決は、3月24日に言い渡される。
(諸岡 宏樹)
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