ピエール瀧逮捕でにわかに浮上 映画『麻雀放浪記2020』“お蔵入り危機”騒動に火を点けたのは誰か?

ピエール瀧逮捕でにわかに浮上 映画『麻雀放浪記2020』“お蔵入り危機”騒動に火を点けたのは誰か?

2014年3月、「日本アカデミー賞」授賞式 ©文藝春秋

「近親者や世間からの強い非難や法による罰則で、違法薬物への依存者は救われるか。」

 やっとこういう切り口のコラムがきたか。ピエール瀧容疑者の薬物逮捕から6日経った朝の、日経新聞1面の「春秋」(3月18日)。

 コラムは「排除よりつながり、処罰より治療や支援との視点が大事」と紹介しつつ、

《相変わらず「白い粉」の映像でおどろおどろしく描く番組が目立つ一方、依存症を社会の課題としてとらえ、相談窓口を紹介するなどの試みも増えている。断罪から支援へ、薬物依存を見る目の転換点となるかもしれない。》

 と締めた。

 そうなのだ。多くの報道は「ピエール瀧、20代から薬物使用!」と大きく驚いてみせるが、それは「20代から止めたくても止められなかった」「誰に相談していいかわからなかった」という意味とセットかもしれない。そんな視点も必要な社会問題だと思う。

■『麻雀放浪記2020』にしみじみする

 さて今回書きたいのは映画『 麻雀放浪記2020 』(白石和彌監督)についてだ。ピエール瀧容疑者の出演作なのだが、私はこの作品に関する最近の流れにとてもしみじみするのです。もっと言うとくすぐったい。そのワケを書いていく。

 先月、次のネット記事が話題になった。

「斎藤工主演映画お蔵入り危機 東京五輪中止設定に“クレーム”」(デイリースポーツWEB 2月13日)

 俳優の斎藤工が主演映画『麻雀放浪記2020』が公開危機に陥っていることをイベントで明かしたというのだ。

■「荒川強啓デイ・キャッチ」で東映に電話してみた

 理由として、

《1月31日に国会議員の麻雀議連限定試写を開いた際、東京五輪が中止となる映画の設定に“クレーム”が入ったといい、斎藤は公開中止の可能性を「あります」と渋い顔で肯定。マスコミ向けの試写は行わない方針で「設定自体がお叱りを受けています。試写をしてしまうといろんな指摘を受けて、(公開が)ゼロになる可能性もあるので、強行していきたいと」と内情を明かした。》

 え、東京五輪が中止となる設定に国会議員からクレーム? 公開危機?

 この記事がSNS上で拡散されると著名人を含む多くの人々が怒った。

 たしかにギョッとする。しかしあまりにもわかりやすい構図すぎて半信半疑だったので、私はTBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ」(2月13日)で配給元の東映に電話してみた。すると担当者曰く、

・国会議員からのクレームはない。
・斎藤工さんのリップサービスという部分もある。

 ということだった。

 イベントの壇上で聞かれた斎藤工はサービス精神で言ったのだろう。これをデイリーは見出しで派手に「お蔵入り危機」と書いたわけだ。あらためて記事を読むと「“クレーム”が入った」と表現し、行間がある表現をしている。

 私がラジオ番組で確認した2日後、毎日新聞も記事にした。

「『映画公開に政治圧力』、実は炎上商法か 『麻雀放浪記2020』東映の宣伝戦略」(2月15日)

《「政治家の圧力か」「表現の自由の侵害だ」と議論を呼んでいる。しかし、取材を進めると、まったく違う事情が見えてきた。》

 と書き、毎日新聞も政治家の圧力はなかったという結論。

 日刊ゲンダイには、圧力をかけたとされた議員の「東映側から、とにかく映画を批判してくれとの依頼がありました。国会議員が批判すれば話題になると考えたのではないか」というコメントが載った(2月16日付)。

 こうしてみると東映側の仕掛けだったことがわかる。たしかに炎上商法かもしれないが、国会議員に見せて感想を言わせるという発想はゲリラ戦法のようにも思えた。

 そもそも試写会をおこなわないという理由も、「原作の『麻雀放浪記』と違いすぎてファンに怒られる可能性があるので……」と東映担当者が言っていたのを思い出した。個人的には脱力というかおかしみのほうが勝った。

■「公開延期するのか?」と本気で判断を迫られる局面

 そんな、なんとか話題になろうと懸命だった『麻雀放浪記2020』だったが今回一躍注目された。

 ピエール瀧容疑者の出演作が軒並みお蔵入りされるなか、同作品は予定通り4月5日に公開する方向と報道され「英断だ!」と称賛されているのだ。何度も言うが、私はこの褒められ方にしみじみする。

 だってそうでしょう。今まで「公開延期かもしれない!」と自分で煽ってきた映画が、瀧容疑者の件で「公開延期するのか?」と本気で判断を迫られる局面を迎えたのである。なんという展開!

 その結果、公開を正式発表した(20日)。断固支持したい。しかし一方で「有料コンテンツとして判断は観客に委ねる」という東映側の”悲壮な決意”を目にするとニヤリとしてしまう自分もいる。

「東映、おヌシもワルよのう」と。

 あれだけ仕掛けてきた『麻雀放浪記2020』である。瀧容疑者逮捕によって出演作品は自粛のオンパレードだが、公開することで今回の件をプラスに転じてやると張り切った可能性もある。そんな陣営がひとつぐらいあってもいい。おまけに「自粛に一石を投じた」と、今回の問題をすべて背負った英雄のようになってるのも感慨深い。『麻雀放浪記2020』、いろいろあったけどやったじゃないか。

 瀧容疑者は同作で、戦争によって東京五輪が中止になった2020年の五輪組織委員会の元会長を演じているという。

 あらすじをみてみよう。

《主人公・坊や哲がいるのは、2020年の“未来”。なぜ? 人口は減少し、労働はAI(人工知能)に取って代わられ、街には失業者と老人があふれている。そしてそこは、“東京オリンピック”が中止となった未来だった。嘘か? 真か!? 1945年の“戦後”からやってきたという坊や哲が見る驚愕の世界。》

 思いつく時事ネタをぶっこんできた感。くだらなさも漂う。

 これはやっぱり映画館で観たほうが……よい!?

(プチ鹿島)

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