堕ちた大英帝国 メイ首相がついた108回の“嘘”

堕ちた大英帝国 メイ首相がついた108回の“嘘”

「国民はうんざりしている」と語るが…… ©共同通信社

 期限の3月29日までにEUを離脱できなかった英国のメイ首相(62)。市民生活の大混乱を招く「合意なき離脱」を阻止しようと、離脱撤回や2度目の国民投票を求め、過去最大級の約100万人がロンドン市中に繰り出した。

 これまで議会で、煩悩の数と同じ108回も“3月末離脱”を誓ってきたメイ氏。ところがそれが“嘘”となるや、「英国は内紛や政争、難解な手続き論、EU離脱しか議論しない議員に辟易している」と議会に責任をなすりつけた。

 しかし責任の大半はメイ氏にある。与党の強硬離脱派を封印するため大勝を当てにした解散総選挙で過半数割れを喫し、閣外協力を求めた10議席の北アイルランド地域政党・民主統一党に鼻面を引き回されてきた。完全に無視してきた野党に今さら協力を求めても聞いてもらえるはずもない。英国以外のEU27カ国は一枚岩なのに、英国は閣僚や議員一人ひとりが好き勝手なことを言い出す“学級崩壊”状態に陥っている。

■メイ氏を1時間半詰問し、4時間待たせた

 元はと言えば、EU離脱の大きな原因を作ったのは、メイ氏と離脱交渉を仕切るオリバー・ロビンス欧州担当顧問のコンビだ。メイ氏は内相時代、事務次官がいるのにお気に入りのロビンス氏を呼び寄せ、無理やり第二事務次官に任命。だが、2人が掲げた移民の純増数年10万人以下との目標は一度も達成されないどころか、33万人の大台に乗り、離脱機運を盛り上げてしまった。その結果、企業の英国離れは加速し、英国際会計事務所は、7000人以上の仕事と約8000億ポンド(約116兆円)もの資産がEU側に移されると分析する。

 3月21日、EU首脳会議で6月末までの離脱延期を訴えたメイ氏を1時間半詰問し、4時間も窓のない部屋で待たせた各国首脳。4月12日まで猶予を与える代わりに「離脱合意案を可決しなければ、合意なき離脱を」と“最後通牒”を突き付けた。かつて7つの海を支配し、「太陽の沈まぬ帝国」と呼ばれた英国の威信は地に落ちた。

 16年に英史上2人目の女性首相となった当初は「鉄の女の再来」と持ち上げられたメイ氏。100万人デモで掲げられた彼女の風刺画には「レームダック」を通り越し、「デッドダック」と書かれていた。

(木村 正人/週刊文春 2019年4月4日号)

関連記事(外部サイト)