飲んでもムダな薬リスト #2

コレステロール低下薬のスタチンは高齢者に害のある薬か 睡眠薬服用には死亡リスクも

記事まとめ

  • コレステロール低下薬(スタチン)について米国慢性期医療学会が高齢者の服用で指摘
  • 高齢者ではコレステロールが高いと心臓病や死を招くという明確なエビデンスはないそう
  • 高齢者に多い睡眠薬の服用に対しても注意喚起がなされており、死亡リスクもある

飲んでもムダな薬リスト #2

飲んでもムダな薬リスト #2

©iStock.com

過剰な検査や治療を検証し、本当に必要な医療を提供しようというアメリカ発の「チュージング・ワイズリー(賢い選択)」運動。#1では、その運動で明らかになった日本でも行われている「過剰な医療」リストを公開した。その中で、いくつもの学会が指摘するのが、風邪の治療を目的とした「抗生物質」。効果がないばかりか、多用することで抗生物質が効かない耐性菌が家族や友人にも広がってしまう危険性も指摘されている。
(出典:文藝春秋2017年5月号・全3回)

■高齢者に害のある

 日本でも、抗生物質の多用によって多剤耐性菌(MRSAなど)が発生し、大学病院など医療機関で集団感染が起こり、死亡者が出たケースが複数報道されている。

 そうした状況への危機感から厚生労働省は3月6日に、軽い風邪や下痢の患者に対して、抗生物質の投与を控えるよう呼びかける手引書をまとめた。耐性菌への対策を取らなければ、2050年には、世界で年1000万人が亡くなるとも試算されている(厚生科学審議会資料「抗微生物薬適正使用の手引き」第一版(案))。医師も患者も、安易な抗生物質の使用は厳に戒めるべきだ。

 他にも、多くの人が飲んでいる薬があげられている。たとえば、「コレステロール低下薬(スタチン)」だ。動脈硬化にともなう心血管疾患を予防する目的で処方されるが、これに対して米国慢性期医療学会が、「75歳以上の人にとっては、心臓病の症状がない限り、スタチンの服用はよくないかもしれない」と指摘している。その理由は次の通りだ。

〈コレステロール値の高い高齢者はたくさんいます。彼らの主治医は心臓病を予防するために、しばしばスタチンを処方します。しかし、高齢者では、コレステロールが高いと心臓病や死を招くという明確なエビデンスはありません。実際、いくつかの研究は逆の事実を示しています。コレステロール値が最も低い高齢者のほうが、現に最も死亡リスクが高いのです〉

 若い人たちに比べると、高齢者のほうがスタチンによる深刻な副作用を被りやすいとも指摘している。筆頭にあげられているのが筋肉への副作用で、筋肉痛や筋肉衰弱、まれに重い筋肉障害が起こることがある。さらに高齢者では、転倒、記憶障害、混乱、吐き気、便秘、下痢などを引き起こすこともある。

 日本でも高齢になるほど「コレステロールを下げる薬」の服用率があがり、70歳以上ではおよそ4人に1人(24.8%)が服用している(平成26年「国民健康・栄養調査」厚生労働省)。しかし、心臓病の多い米国人でさえ、心筋梗塞や脳卒中などを起こしたことのない75歳以上の人には、スタチンは不要とされているのだ。日本人の場合、不要な人はもっと多いと考えられる。

■高齢者の睡眠薬服用には死亡リスクも

 また、高齢者に多い睡眠薬の服用に対しても、注意喚起がなされている。

 チュージング・ワイズリーの「高齢者の不眠や不安に対する睡眠薬」の項目によると、米国でも3分の1近くの高齢者が睡眠薬を服用しているという。高齢になるほど眠れる時間が短くなり、不眠に悩む人が増えるので、日本でも睡眠薬を飲んでいる高齢者は多い。しかし、米国老年医学会は、「通常、高齢者は最初に睡眠薬以外の方法を試すべきだ」と警鐘を鳴らす。その理由として、次のように書かれている。

〈多くの睡眠薬の広告が、睡眠薬は完全で安らかな夜の眠りに役立つと宣伝しています。しかし、様々な研究によると、これは現実の生活では真実とは言えません。平均的に見て、これらの薬のうち一つを服用している人は、薬を飲んでいない人に比べて、わずかに長くよく眠れているだけです〉

 効果が小さいだけでなく、睡眠薬には深刻な、死ぬことさえある副作用もある。若い人より高齢者のほうが、成分が長く体内に留まりやすく、薬の影響を受けやすいからだ。睡眠薬は錯乱や記憶の問題を引き起こすことがあり、それによって転倒や大腿骨骨折のリスクが2倍以上になる。それがきっかけで入院したり、死亡したりすることもよくあり、交通事故のリスクも高くなる。

 この項目では、「よりよい睡眠のためのヒント」も添えられている。よく眠るには、活動的な生活が大切だが、就寝前の数時間は活発な動きは避けること。習慣を守って週末でも毎日同じ時間に起床し、就寝すること、就寝前には食べないようにして、食後3時間以上空けてから眠ること。午後3時以降はカフェインを避け、アルコールを控えること、などのアドバイスだ。

■健康診断は益より害をなすことが多い

 こうした過剰な投薬を受けるきっかけになる大きな要因の一つが、過剰な検査だ。チュージング・ワイズリーでは、検査の受けすぎについてもリストで警鐘を鳴らしている。

 たとえば、「健康診断(Health Checkups)」だ。日本では、学校や職場で義務化されており、多くの人が年に1回は健康診断を受けたほうがいいと思い込んでいる。しかし、米国総合内科学会によると、「健康な人に毎年の身体検査はたいてい不必要で、益よりも害をなすことが多い」というのだ。

〈あなたの体のために、主治医は血液や尿、心電図といった検査をオーダーするかもしれません。時折、これらの検査が、リスクを持たない健康な人に行われることがあります。しかし、毎年の健康診断の有効性を調べた研究がたくさんありますが、概して、健康維持や長生きにはつながらないようです。また、入院の回避や、がん、心臓病による死亡の予防にはほとんど役立ちません〉

(「飲んでもムダな薬リスト #3」に続く)

(鳥集 徹)

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