日常に潜む非常事態「アニサキス」戦記と「足抜けコール」

日常に潜む非常事態「アニサキス」戦記と「足抜けコール」

(c)iStock.com

「週刊文春」最新号(5月25日号)には、非常時にまつわる記事がある。「転落死も…『痴漢』と言われたら逃げるは恥か?」と「わがアニサキス戦記」だ。前者は痴漢の疑いをかけられた者が線路に飛びおりて逃走するリスクと、疑われた際の対処についてである。後者は……

■「戦場取材」や「ガン闘病記」とは違うルポの面白さ

「わがアニサキス戦記」は、アニサキスにやられてしまった医療ジャーナリスト・長田昭二が、自分の身に何がおき、どう対処したのかをまとめたルポである。ルポといえども、戦場の取材やガンなどの生き死にに関わる闘病記というような、大きな問題を題材にしていないのが、かえって面白い。

 長田は居酒屋で一杯やった後、得体の知れぬ激痛に見舞われる。おまけに、医療ジャーナリストということもあって、あれこれ詮索しては不安になり、余計に苦しむこととなる。痛みの正体はアニサキスなのだが、この寄生虫は魚介類にひそみ寿司や刺し身などを介して体内に入り込んで食中毒を引き起こすことが多い。おまけにやたらめったら痛いと評判である。

 そんな具合にたった一人で痛みと不安に苛まれ続けた長田を救うのは、「#7119」であった。東京消防庁が開設している「救急相談センター」につながる電話番号である。

 ここに電話すると、「医師や看護師などが、症状から考えられる病気を類推し、適切な対応をアドバイスしてくれる」そうだ。ぶっちゃけ「119」に電話するのは難易度が高い。死にそうなわけでもないけれど、かと言ってこのまま病院が開くまで耐えるのもしんどいし……といった中途半端な症状だったり、あるいは住宅地のため夜中にピーポーピーポーと救急車に来られて、近所のひとに集まられでもしたら、たまらんな……などと余計な心配をしてしまい、「119」に電話するのをためらう人も多かろう。そんな場面で便利な電話番号なのである。

 でもって、ひととおりの話をした後、「タクシーで行けるので、今から受診可能な病院を教えて下さい」と乞うて、タクシーで緊急外来のある病院に到着するのであった。

■「足抜けコール」語呂合わせの充実 「サムイ・ハナレヨ」

 それにしても「#7119」というのは、なかなか覚えられそうもないのが難点である。

 そこそこの年齢ならば、いまだにツカサのウィークリーマンションの電話番号を覚えているに違いない。テレビCMで流れる「♪さんの よんよんまるまるわんわんわん ツカサのウィークリーマンション」のおかげである。やはり電話番号は語呂合わせくらいしてくれないと、いくら桁数が少なかろうとも、ちょっとやそっとじゃ覚えられやしないものだ。

 その点、語呂合わせの電話番号が充実しているので有名なのが「足抜けコール」(注)だ。各都道府県の警察の、暴力団組員の離脱の相談電話サービスである。何年か前のドラマ「ヤメゴク」の題材になったあれだ。

「ヤメゴク」では「オーイニイサン・ヤクザ・ヤメロヨ(00123-893-864)」で、実際のものでは「ニイサン・サーハナレヨ(233-8704)」(岡山県警)や「シノゴノイワズ・クミサレ(451-9330)」(京都府警)など、「シノギは最近しんどいし、組の上納金もきついし、歳も歳だし、懲役いくの、ヤダなあ」などと悩める暴力団組員たちへ、カタギになる決断を呼びかける電話番号となっている。

 ところが、だ。山口組総本部などをかかえる肝心の兵庫県警は、「サムイ・ハナレヨ(361-8704)」である。「寒い! 離れよ!」。これでは、シャブを打ってまずいことになっている者が、包丁を振りまわし、本人にしか見えない何かと戦っている際にくちばしった言葉としか思えないではないか。しかし一度目にすると忘れられないのは確かである。その点では見事である。
 
 さて、長田はその後、2泊3日の入院をし、「生魚を食べる際に気を付けることと医療保険の大切さ」を知るのであった。それらが何であるかは本誌を手に取っていただきたい。記事には検査のために飲み込んだ内視鏡が、アニサキスの痛みを忘れるほどの苦しみとあって、内視鏡未経験の筆者はそっちにびびってしまったが。

(注)こちらを参考にした。https://twitter.com/guwk/status/403787661506129920

(urbansea)

関連記事(外部サイト)