「ベストはしれっと行くことだったんです」 幻冬舎・箕輪氏「見城社長NewsPicks激怒事件」を語る【後編】

「ベストはしれっと行くことだったんです」 幻冬舎・箕輪氏「見城社長NewsPicks激怒事件」を語る【後編】

インタビューに応える幻冬舎・箕輪厚介氏 ©文藝春秋

「週刊文春」創刊60周年記念大放出!
週刊文春デジタル が報じた有料会員限定のオリジナル記事を蔵出しで特別公開します。(公開日:2019年3月2日)

 今年2月、幻冬舎の見城徹社長(68)のツイッターを発端に、ネット上で大きな話題を呼んだ「NewsPicks激怒事件」。真相を語った幻冬舎のキーマン・箕輪厚介氏(33)のインタビュー全文後編を公開する。( 前編はこちら )

◆ ◆ ◆

――ビジネスマンとして見たら、(幻冬舎とNewsPicks)どちらが正しいですか?

「難しい、超難しい(笑)。ビジネスマンとして見たら……」

――最近箕輪さんは、一流のビジネスマンと編集者として接していて、先駆的な、経済合理性に触れている。かたや、仁義とかスジとかっていう……。

「これは面白い(笑)。本1冊になりますね。ただ、やっぱり、少なくともこの国では、国関係ないのかな、やっぱりこういう仁義とか義理人情、恩返しとかスジとかっていうのを飛ばすと、そのスピードをどんなスピードで駆け上がっても、取り返しのつかないストップがかかることはあるし、僕は逆に起業家の人を何人も見てきて、みんなそこで躓いているんで。それは大事だと思うし。

 僕がある種、こんな調子乗っていろいろやっても、いつかわからないですけど、ドカンって誰かに潰されることがないのは、やっぱり見城さんに教わった、本当に『人間対人間』の部分を大事にするというか、まず第一に考える。全部できているとは思わないですけど、そこを外すと大きなしっぺ返しがくることがあるっていうのは間違えないですよね。

 やっぱり本当に、特にこのご時世、人間なんで、社内の人とか、内部の人とか、あと取引先の人、その人が名刺を交換したことを忘れてしまうような人であっても、ある種、大事にしないとやっぱりどこかで応援してくれなくなるし。逆風が吹いたときに、一気にガッて何も言わずに、勝っているから従っていた人たちはその人が弱くなった瞬間に応援じゃなく反発になって、多くの起業家とかはそこで絶対躓くときがあるんですけど、躓いたときにみんなに応援されるか、躓いたときにみんなに叩かれるかで、けっこう分かれていて。(SHOWROOM代表の)前田裕二とかは、ちょっと悪魔だなって思うくらい上手ですよ、そのへん。1人1人の目を見て、『ウソだろ』っていうくらい丁寧に、心を奪っていく。そういう人が強いなって思いますけどね」

■NewsPics佐々木氏の様子は?

――佐々木さんはどうでしたか。佐々木さんは見城さんの目を見て……。

「最後はそうでしたね。『もう本当に心に染みます』って言っていたんで。佐々木さんは本当にドライな人に思われがちなんですけど、2人で飲んだりすると、本当に人間らしいし、心がある人で、なんなら僕の健康状態とか一番気を遣って、たまにランチ行きましょうとか言ってくれる人なんですけど。

 何よりもビジネスマンとして見上げているところが高すぎて、ここをこんなスピードじゃダメだっていうので駆け上がるんで、足腰が弱い人はなかなかついていけなかったり、その経済合理性が正しくても、それってあまりにも順序が違くない?って思う人がいたりっていうのは、確かにある人だと思うんですけど。僕は本当にあの人はすごいし、このまま駆け上がって欲しいなと思いますね」

――見城さんにそれは伝わっていましたか?

「伝わっていたと思います。要は、私利私欲とかでやっている人じゃないんですよ。本当にビジョンがすごい。福澤諭吉とか普通に読んでいるような人ですから、『日本は全然ダメだ!』みたいなことをピュアに言う人なんで、本当に高いものを目指して、ある種、責任感でダーッとやってきたというのが伝わっているし、見城さんも『NewsPicksの人たちはみんないい人だね』って言っていたので、そこは本当にいい人なんですよね」

■NewsPicksはなぜ出版をやりたがるのか

――そもそもなんでNewsPicksは流通などをやりたいと言い始めたんですか?

「そこは、昨日の段階でまた悩み始めていたんで、本当にグラグラしていたんですけど、一個にはNewsPicksのやり方として、すべて内製化していくというのがあると思うんですよ。動画の会社と組んで、いろいろわかったら自分たちでやっていこうと。そうやって組織を大きくして成長スピードを高めると。なので出版もある種、不義理とかではなく、自然なビジネスの論理として、できるものは自分たちで回していって、利益率を高めて、儲かったときは儲かったでうまくいくというのをやりたいというのは、幻冬舎に対してというよりも、純粋にビジネスの哲学としてあったと思うんですけど。

 でも本て、昨日も言ったんですけど、ぶっちゃけ黒字になる方が難しいじゃないですか。NewsPicksが今まで体験したことがない在庫とか、要は、利益率高めるために内製化するのに、在庫を抱えてどうしようみたいな、重版しすぎて失敗みたいな、超アナログなリスクを抱えることになるよ、っていう話をしたら、『それはどうしようか』みたいな。

 うちは月1冊出すと言っても膨大な数を出しているから、その月1冊のいろんなリスクを、『NewsPicksBook』を物凄い勝負をかけても、全体の中でリスク分散できているけど、月1冊しか出さない出版社って結構危ういじゃないですか。何冊か連続でミスったらそれだけで大赤字っていう。そういう話をして、たしかに辛いと。

 だからNewsPicksがいきなり4月からとか、出版社で、という体制が整ってないことが重々承知していて、その中で腹を割って話している状態ですね」

■「ベストはしれっと行くことだったんです。しれっと(笑)」

――見城さんが制圧しているのが目に浮かぶような。

「『できねえだろ』みたいな(笑)。『うちはいいんだけど、できんのかよ?』みたいな部分はあるし、NewsPicksもフェアで素直に『本当に難しいと思っています』と。『ただ、会社として、いずれはやっていかなきゃいけない課題なのかなとも思っていて。そこを考えている中で、順序を間違えたり、不義理になったことは真摯にお詫びしたいです』みたいな感じで。だからなんか、決裂みたいな感じでは全然なく、今本当にゼロベースで、ぶっちゃけどうしますかという感じです」

――見城さんのところに先に行っておくべきだったと。

「そうです。ただ、僕らが止めていたんで。NewsPicksのせいっていうわけでもないです。NewsPicksも『早く見城さんに言いたい』って言っていたんですけど、それはこっちの判断で、ベストはしれっと行くことだったんです。しれっと(笑)。ただ、そのベストの選択肢が、イケそうだったんですけど、イケなかったという(笑)」

――箕輪さんはこれまで結構うまくイケていた。

「そうです。僕の中での“見城対策”と、いろんなことで各社でやっている中で、今回は来ない方がいいと。佐々木さんの人間性とかでいうと、丸裸になってなんとかっていうタイプじゃないから、結構ビジネスライクな話をしそうだなと思って。パワポとか出しそうだなと思って。そうなると超怒りそうだなと思って。会わせない方がいいと(笑)。俺が止めとこうと。『パソコンをしまいなさい』とか言いそうだから(笑)。だから僕で止めとこうとなったんですけど、それが結果、仁義がないってなったんで、NewsPicksの責任だけじゃないし、僕が止めていた事実がありますね」

――箕輪さんからある程度、見城さんに話したんですか?

「話しました。だから、『箕輪が言うと全部納得しちゃうんだけどな』とかいって終わったんですけど。でも納得しなかったという(笑)。でも、僕はやっぱNewsPicksが好きなんで、いい形で収まればいいし、最悪収まらなくても、まぁ敵対しないでやっていければと思いますけどね」

■最近ラップも歌っていらっしゃいますね。「すいません」

――箕輪さんの役割を幻冬舎の別の方が担当するというのは、NewsPicks側が飲まなかった?

「幻冬舎としては本来はそれが筋じゃないかと。箕輪さんができないからとか、箕輪さんが2年でやめるからとか、疲れているからっていう理由で、契約ごと変えるんじゃなくて、それだったら新しい編集者を両者で採用するとかでも、幻冬舎の人を編集長にするでもなんでもいいじゃないかというのも当然あるし、幻冬舎は優秀な編集者がいっぱいいるんでそれも方法としてはあったと思うんです。僕もアシスタントとして何人か幻冬舎の人にやってもらってたりする中で、ただNewsPicksの仕事って、ある種、すごい特殊で、本を作るっていうのは全体の3割くらいで、『NewsPicksBook』の編集長としては、あとはやっぱり本当に僕もイベントのモデレーションをやったり、ある種、タレント活動みたいなところがあるんで……」

――最近ラップも歌っていらっしゃいますね。

「すいません(笑)」

――YouTuberもやったり。

「YouTuberもやっています(笑)。そういうところを、要は佐々木さんとかNewsPicksとして、幻冬舎でバリバリ出来上がってスタイルがある優秀な人を編集長として据えて、ガンガン『これやれあれやれ』ってできんのか? みたいな思いがあって、それだったらNewsPicksに入りたいと思っている優秀な編集者を持ってきて、そこから一緒にビジョンを共有して走っていった方がやりやすいって思ったんだと思います」

――それは確かにそうでしょうね。

「その通りなんです。まったく僕もそうだなと思いました。本を作るのはうまくても多分難しいと思うんですよね、そのいわゆる本の編集以外のことをなんでやんなきゃいけないのって思うと思う。でもそういうことにある種、箕輪さんみたいに全部やって、編集者としてブランド化したいって思っているやつを育てた方がいいっていう」

――NewsPicksの文化だから、NewsPicksから出てくる人がやった方がいいという判断だったと?

「NewsPicksからというよりも、今回の場合、他社からですね。本当に僕と佐々木さんで、幻冬舎内も含め、他の出版社も含め、いろいろな編集者と話したり、他社に関しては優秀だと聞く人に大体に会ってきて、なかなか特殊な場所だから耐えられないと。仕事量的にも幅的にも。だから誰がいいかというのは相当2人で考えましたね」

■「盃を交わすかはわからないですけど」

――2人で考えられた(新編集長の)Xさんはいつ発表されるんですか?

「もう発表しても……でも今の会社のことがあるから多分綺麗にあっちの仕事を終わらせてからだと思うんですけど。地ならししてからですね。今その人が悪いとなると可哀想なんで」

――秋口くらい?

「そうだと思います」

――Xさんが誰かというのは見城さんはご存じ?

「見城さんは知らないし、見城さんは他社の若い編集者なんて知らないんで。でも、今後一緒にやっていくとなったら、そこの関係性なしにはうまく回らないので」

――そのXさんはNewsPicksには入るけど、幻冬舎と一緒にやる?

「盃を交わすかはわからないですけど、そのカルチャーを分かった上で両極端の血を飲まなきゃいけないというところなので。ちゃんと地ならしが終わったら、一個のチームになるようにはしようとは思います」

――幻冬舎としてはNewsPicksの仕事は今後なくなっちゃうわけですよね?

「いや、その提示してきた案は年4冊は今まで通りやってほしいというので。最低でそのラインだったので、それで嫌だとなって昨日のそのあとの話し合いではどうやれば、共同編集部を作るかとか、どちらかというと一緒にタッグを組む方で考えています。それはNewsPicksがいきなり出版社を立ち上げれられるのかというリスクなど、現実的なことも当然あり、お互いに仲がいいので、一緒にやりたいよね、成長したいよねというのがあるので、今の状況ではもっと関わりを深めて、NewsPicksがビジネスとして回るところがどこかと一度話して、もう一度、話し合いの場を持とうというところです」

■「そんなに甘いものじゃないんだよ、出版は」

――見城さんからしたら(後任が)誰かというのはあるんですか?

「いや、それはわからないですけど、それは見城さんが決めるというよりも現場でいいと思う人物、それがNewsPicksの社員でも幻冬舎の社員でもいいし、新しく採用してもいいという感じですね。

 ただ、最初に言ったみたいに、僕が目立っているだけで、『NewsPicksBook』の躍進というのは僕が3割くらいのもので、あとの7割は営業や書店との関係、そこで棚を作るとか、あとは流通、幻冬舎が今までちゃんと本を売ってきたから取次との関係があるとか。あとは見城のプロモーション力とかですよね。そういうのが一体となってこうなっていることを忘れているのかと。そんなに甘いものじゃないんだよ、出版は、というのがこの話なんです」

――なるほど。見城さんからすると真っ先に相談があって然るべきだろうと。

「そうかもしれないですね。ただ難しいですよね。でも本当にその通りで、書店さんとの関係とかっていうのは、僕も散々全国の書店を回っていますけど、それも含めて、幻冬舎が出来てから、ちゃんと売れる本を作り続けて、幻冬舎の本なら並べたいっていうことがあってのことだと思うので。それは営業の人も一番嬉しかったと言ってましたけど、このツイッターでワーッってなったとき、書店さんから『幻冬舎さんが出すならって思って頑張っていたんですけど』という声がいっぱい届いたと言っていて。僕がポツッと上に乗っかっていますけど、ここの部分でどれだけ貢献しているんだと、どれだけ『NewsPicksBook』というのがブランド化したのか幻冬舎の資産を使って、というのを忘れるんじゃないよ、という話を思っていると。僕はそれは正しいと思います」

――これって他の企業とかでも、若い企業と古い企業が……。

「あると思います。けど、本当に奇跡だったと思います。僕もいろいろなところと提携していますけど、NewsPicksと幻冬舎みたいに明らかにカルチャーがデジタルとアナログとか、仁義とビジネスとか、全部両極端なのに、ここまでタッグを組んで上手くいったのは本当に奇跡だと思って。全然カルチャーが違うから進みもしないというパターンと、早々に分裂するというパターンのどちらかだったので。今回の騒動って起こるべくして起こったと。当然、最初から矛盾を抱えていた関係なので、今来たかというだけで、これをもう一回ねじ伏せて、またやっていくというだけだと思います。だから面白いんだという気がしますよね」

■「やっぱり“見城徹の傘”があるから撃たれない」

――ねじ伏せるとおっしゃいましたけど、最近疲れたという発言が多いかなと。

「疲れた(笑)」

――箕輪さんは独立という話があったりとか。

「いや、全くないですね。見城さんが死ぬまでは(笑)。僕は本当にこんなことをこんなところで言ったら問題だと思うんですけど、やっぱり前田裕二の恋愛の件だとかなんだとか、テレビで好き放題やって、本当に関係各所が怒っているというのを聞いていますが、やっぱり“見城徹の傘”があるから撃たれないというのがある気がするので(笑)。

 まぁ、それは冗談ですけど、ここまで自由にさせてもらって、辞める理由が一個もないですね。やっぱり僕はいろんな出版社を独立した人を見ていますけど、その人がどんなに優秀であっても出版社と組むときに、出入り業者みたいになっているわけですよ、どんなに優秀でも。数字も共有できなければ、本当の意味で同じ船に乗っていないような感じがして、それでスピード感も遅いし。僕はやっぱりベストセラーを出すとか、本を出すという意味でどこかの出版社、特に幻冬舎にいないと、その力が弱まるので。僕は本当に幻冬舎に居続けようと。嘘じゃなく」

――死ぬまで。

「言われていますもん。お前が辞めるとき、撃つからなって、ピストルで(笑)」

(「 週刊文春デジタル 」オリジナル記事)

(「週刊文春」編集部/週刊文春)

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