大都会東京の“3大”秘境駅はどこだ? 池袋駅から1駅だけ離れた“別世界”とは

大都会東京の“3大”秘境駅はどこだ? 池袋駅から1駅だけ離れた“別世界”とは

東武東上線の北池袋駅

 このところ「文春オンライン」の取材で“終着駅”ばかりに行っている。国府津、小手指、南栗橋……。関西でも網干や日根野を訪れた。どの駅も線路の果てという意味での“終着”ではなくて、単に終点の電車がたくさん走っているだけではあるのだが、まあいずれにしてものどかな駅ばかりであった。都心から離れた郊外の駅だから当たり前ではあるが、なにか物珍しいものがあるわけでもなく、基本的には“なにもない終着駅”である。

 ではその真逆、都会の真ん中に近い駅にはそんなのどかな駅はないのだろうか。いくらなんでもさすがに山手線のど真ん中にあっていくつもの地下鉄が乗り入れるような駅はのどかさとは無縁だろうが、ギリギリ山手線の外側にちょっと出たくらいの場所ならば、のどかで緩やかな時が流れる駅があるのでは……。

 というわけで、今回は「新・3大都会の秘境駅」と題して、郊外に伸びる私鉄路線の駅のうち、山手線のターミナルから1駅だけ先にある牧歌的な駅を訪ねることにしよう。

■池袋駅北口とは別世界の「北池袋駅」

 最初に訪れたのは、東武東上線の北池袋駅。その名の通り、池袋の北にある駅だ。池袋を出発した東上線の電車はしばらくJR埼京線と並んで走って首都高池袋線をくぐる。その少し先で東上線は埼京線と分かれて西を目指すのだが、その直前に北池袋駅がある。

 北池袋駅、もちろん停まるのは各駅停車だけ。隣に埼京線の線路も通っているので一見騒々しいが、島式ホーム1面2線の小さな駅だ。西側に建っているこぶりな駅舎とは線路の下をくぐる地下通路で結ばれている。その改札口を出ると、そこはもう、“池袋”のイメージとはまったく違う町であった。

 駅前は、昼間にはやっているのかどうか窺い知れない小さなスナックや飲食店が立ち並ぶ商店街(のようなもの)。少し西に足を伸ばせば、近くに高校があるらしく帰宅途中の高校生たち。彼らの賑やかな話し声と時折自転車で行き交う地元の人の姿。池袋駅北口は風俗店やキャバクラが集まる猥雑な街なのに、北池袋駅はうってかわってのどかな町である。

 で、タクシーやバスが客待ちをするようなロータリーの代わりに駅前にあるのが大きな踏切。改札口を出てすぐの場所に線路をまたぐ踏切があって、これがなかなかのくせ者なのだ。東上線だけでなく埼京線も通るおかげで、一度踏切が閉じるといつになっても遮断器が上がらないのである。つまりは“開かずの踏切”というわけだ(歩行者のために地下通路も並行して設けられている)。「長いなあと思うし、事故もあったりするから危ないですけど、まあしょうがないですね」とは小さな子連れのお母さん。こう書くと不便に感じるけれど、改札口を出てすぐに踏切があって高校生や地元の人が行き交う生活道路と直結しているあたりも、“郊外”の雰囲気そのものであった。

■新宿から5分で緑あふれる「下落合駅」

 西武新宿線のターミナルは西武新宿駅である。西武新宿駅は名こそ“新宿”とは言いながらJR新宿駅とは歩いて10分ほどの距離。天下の歌舞伎町の一角にあるから、いっそのこと「歌舞伎町駅」と改名してもいいのではないかとすら思う。そしてその西武新宿駅の次が山手線と乗り換えられる高田馬場駅だ。ご存知早稲田大学の最寄り、学生の駅。歌舞伎町を擁する西武新宿ほどではないけれど、どちらもまあうるさいほど賑やかな街の駅である。

 そしてそんな高田馬場からひとつ先。山手線のガードをくぐって高架から地上に移った西武新宿線各駅停車が最初に停まるのが、下落合駅だ。東武東上線の北池袋駅は島式ホーム1面だったが、こちらは上下線のホームが向き合う相対式。それぞれのホームに改札口が設けられている。北側(新宿方面行)ホームに接する改札口がメインの駅舎のようで、トイレもそちら側だけにある。そして北池袋駅と共通しているのが、改札口を出るとすぐに踏切があるということだ。

 踏切のある道路も大都会のターミナルから数分の駅前とは思えないほどに小さな商店が並ぶ生活道路。個人経営の書店にマンションの1階部分に入居している花屋にこじんまりした居酒屋。小さな喫茶店もあった。まるで野口五郎の「私鉄沿線」が聞こえてきそうな光景が駅前に広がっている。駅の南には神田川、北には妙正寺川が流れていて、公園もあって緑も豊か。

「静かでしょう。まあ、新目白通りまで出たら車通りも多いし騒々しいんですけど、高田馬場や新宿からすぐとは思えないですよね」

 近くに住んでいるというマダムはちょっと自慢げにこう話してくれた。ちなみに件の踏切、北池袋駅では“開かず”だったが、こちらにはJRが並行しているわけでもないし、西武新宿線は比較的本数が少ないので長時間閉じっぱなしということはないようだ。

■品川の南なのに「北品川駅」の下町感

 池袋・高田馬場という山手線西側のターミナルから少し外れた駅を訪れたあとは、山手線をほぼ半周して品川で京急線に乗り換えた。そして1駅南に行けば、北品川駅である。

 品川駅の南にあるのに北品川駅とはこれいかに。実はそもそも品川駅は品川にはない。本来の品川とは、旧東海道の最初の宿場町・品川宿。それは品川駅よりもだいぶ南に位置していて、品川宿の北にあるから「北品川駅」という。と、いきなりずいぶんとややこしいのだが、北品川駅も各駅停車しか停まらない。西側(品川方面行)のホーム側にしかない改札口を出ると、そこは日本有数の交通量を誇る第一京浜である。

 品川駅で京急線に乗って次の駅が第一京浜に面する……などと言ったら、別にのどかでもなんでもないと思うだろう。ただ、どことなく駅前の雰囲気は大きなターミナル駅とは違うのだ。だいいち、相対式ホームの片方にしか改札口がなくて、出るとロータリーも何もなくていきなり大通りという時点でちょっとおかしい。第一京浜にかかる歩道橋を渡って次々に駅に向かってくるのは、スーツ姿のビジネスマンではなくて、近くの高校に通う学生たちばかりだ。

 そしてすっかりお決まりになっている駅の隣の踏切を渡って少し進むと、そこには旧東海道品川宿の町並み(と言ってもその名残、ではあるけれど)が伸びる。これこそザ・下町の風景。地元の魚屋に飲み屋が軒を連ね、祭りの神輿を直しているオジサンの姿も。品川宿散策に来たと思しき外国人観光客の姿もチラホラと見える。

 自転車を押していた地元のマダムは言う。

「第一京浜のほうとは全然違うでしょう。こっちは昔のまんま。少し歩くと屋形船の船溜まりもあるんですよ」

 そうは言っても駅のホームから品川方面を見ると、大きなビルに囲まれている北品川駅。どうやら、大都会と下町の際にある駅なのだろう。

 と、このように大都会・東京も山手線のターミナルからひとつ外れるだけでずいぶんとのどかな“下町の駅”がある。たいていは地元の人や高校生たちが行き交うだけの牧歌的な駅である。秘境駅、とは言い過ぎかもしれないけれど、1日に数十万人が忙しそうに行き交って夜になれば酔客だらけのお隣ターミナルと比べれば、隔絶の感。いやはや、やっぱりまあるく東京の中心部を囲んでいる山手線は、“結界”のような存在なのかもしれない。

写真=鼠入昌史

(鼠入 昌史)

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