ブラック部活動 保護者は敵か味方か

ブラック部活動 保護者は敵か味方か

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■職場、生徒、親に責められる教師

 連日のように、部活動改革関連の記事が発表されている。

 とりわけ教員(顧問)に課せられる負担をはじめ、その過酷な状況は「ブラック部活動」と総称されている。

 先日公開されたウェブニュース記事にも「『ブラック化』した部活の実態」が掲載されていた。「ブラック」を経験したある先生の言葉は、次のようにまとめられていた。

《「なぜ部活動を熱心にやらないのか」と言う職場の同調圧力、「もっと練習を入れて欲しい」と希望する生徒、負ければ「練習量が足りないからだ」と言う保護者からのクレーム…。気づけば部活動に多大な時間と労力が割かれて、しわ寄せは家庭にいった。》

弁護士ドットコム「『なぜ部活を熱心にやらないのか』教員への強烈な同調圧力…土日潰れ、家庭は崩壊」

 じつはここに、部活動改革においていまだ注目されていない、けれども改革を推進するうえで欠くことのできない重要なファクターへの言及がある。「保護者」の存在である。

■保護者からのクレーム、過剰な介入

 私が7月末に上梓する『ブラック部活動』(東洋館出版社)においても、保護者の存在をクローズアップした。

 部活動が「ブラック」である理由は、けっして先生と生徒という学校の構成員だけを見ていても語り尽くせない。

 教員が部活動指導のあり方に疑問を抱く典型的なきっかけの一つに、保護者との関わりがある。保護者からのクレームや過剰な介入が、指導への嫌悪感や指導における自信喪失を引き起こすのである。

 大学への進学率が低い時代には、学校の先生といえばその地域ではごく限られた高学歴者であった。高学歴を後ろ盾にして、保護者よりも教員のほうが、はるかに権威があった。ところがいまは、大学への進学率は50%を超える時代である。教員の権威は相対的に低下し、保護者からのクレームが学校に届きやすい状況が生み出されている。

■ど素人顧問に容赦ない保護者

 ましてや部活動ともなると、素人の教員が多い。さすがに授業については教員の専門性が高いから口出しできないとしても、部活動となると容易に口出しできてしまう。3月の拙稿「ど素人でも顧問。『部活がつらい』先生の体験談」で紹介した先生も、その一例である。

 その先生は、異動をきっかけに未経験のバスケットボール部を担当することになり、そこで保護者からの厳しいクレームが届くようになった。

 試合で負けたときに、子どもを迎えにきた保護者が自分に近づいてきて、普段の練習メニューについて忠告をしてきた。そしていつの間にか、練習や試合時には、生徒に対して「そこはパスだろうが!」「そんなこともわからんのか!」と、直接声を発するようになった。

 保護者との関係がギクシャクするようになり、その保護者に同調する保護者も増えていき、「部活動をやめさせて、ジュニアチームに入れてもいい」と、脅しともとれる言葉を受けるようになった。ついには体調を崩すようになり、教員人生ではじめて、「部活がつらい」と感じた。

■理解されない負担感

 上記の例は、素人顧問の指導方法に対する、容赦ないクレームである。

 だがクレームは、指導方法に対するものだけではない。練習量に関するクレームも多い。とりわけ土日の練習をやめようとしたときの保護者からの反発は、定番である。「なぜちゃんと指導してくれないんですか」「子どものことを大事に思わないんですか」「前の先生は、土日に関係なく指導してくれたのに」と、厳しい言葉を投げかけられる。冒頭で紹介した先生も、負けたときには「練習量が足りないからだ」と保護者からのクレームが入ると述べている。

 神奈川県教育委員会が2013年に実施した運動部活動に関する調査(「中学校・高等学校生徒のスポーツ活動に関する調査報告書」)では、保護者が思っているよりはるかに、教員は部活動指導を大きな負担と感じている。教員の負担感は、なかなか保護者には伝わっていないようである。

■先生の味方に付いてくれる保護者はいるのか?

 しかしながら、クレームを投げかける保護者がいる一方で、教員の味方に付いてくれる保護者もいることを忘れてはならない。

 現職教員らによる「部活問題 対策プロジェクト」が実施したネット署名(change.org)の「教師編」(goo.gl/5Xu4P6)のページに進むと、ページ下部のコメント欄には、生徒の保護者からの声も多く届いている。

《中学校に通う息子がいます。息子をオリンピック選手にしたいなどとは思いません。「部活は、楽しく、元気にやってくれたらそれでいい」と願っていても、実態はそれからはるかに遠く、明けても暮れても練習です。

 そしてこの過酷な実態の裏には、指導にたずさわる先生がいます。明らかに、異常な勤務状況です。授業やその準備、生徒指導だけでもたいへんでしょう。それに連日の部活。もはや一人の人間がこなせる業務量ではありません。先生はみな、授業に取り組むことが本来の仕事のはずです。

 私たち保護者は、子どもを有名選手にしたいのであれば、そして先生に勤務時間を超えての部活指導を望むのならば、お金を出して子どもを外に習いに行かせるべきです。先生も子どもも、笑顔で過ごせる学校現場に戻してください。》

※匿名性を確保するために、内容を一部編集した

 保護者は自分の子どもが明けても暮れても練習している様子から、先生の部活動負担を心配している。そして、部活動はほどほどにして、「先生も子どもも、笑顔で過ごせる学校現場」を切望している。

 上記の保護者の声は、顧問教員の負担を懸念するものであったが、一般に保護者がより直接的に不安視しているのは、自身の子どもの負担である。

 まさに、「職員室のタブー」をつくりだしているような教員が、部活動に熱心なあまりに、連日にわたって子どもに多大な負荷を与えている。保護者は子どもの疲れ切った姿を見て、顧問の部活動運営に大きな疑問を抱いている。

 部活動改革では、「教員」や「保護者」を一枚岩にとらえてはならない。「教員」にも「保護者」にも、過熱気味の部活動に肯定的な人がいる一方で、それに消極的な人もいる。

「教員」「保護者」というカテゴリで敵/味方を決めつける必要はない。いま求められるのは、「よきもの」として拡大・過熱してきた部活動のもとでかき消されてきた苦悩の声に、一つひとつ耳を傾けていくことだ。

(内田 良)

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