「14カ月間」長期化する就活でヘトヘトの人事と学生 インターン青田買いの実態

「14カ月間」長期化する就活でヘトヘトの人事と学生 インターン青田買いの実態

こちらは今年3月1日、就活解禁された日の新4年生向け合同説明会。実質的にはこの日よりもずっと前に就活はスタートしているのだ ©AFLO

 就職活動に関するクイズです。答えをお考えください。

Q.  昨年10月に経団連が発表した「就活ルール廃止」。現大学4年生、あるいは大学3年生、どちらから適用されている?

(注:「就活ルール」とは、経団連が主導した、大学3年の3月1日採用活動解禁→大学4年の6月1日内定出しの採用スケジュールのこと)

■「インターン合説」におしかける大学3年生

 正解を記す前に、最新の就活事情を紹介させてほしい。私、福島直樹は就職コンサルタントとして、長年、学生の就職支援に携わってきたが、今年の大学3年生は、例年以上に積極的に就活に取り組んでいる印象だ。

 現在、全国で3年生向けインターンシップ合同企業説明会(インターン合説)が実施されており、多くの学生が詰めかけているのだ。

「たくさんの学生が来てくれて助かってます。昨年以上に盛況ですね。就活ルール廃止で危機感を抱いたのかもしれませんね」

 先日会った、ある業界関係者は笑顔でこのように語っていた。他社の合説でも同様の話を聞く。

 ちなみにインターン合説とは、夏にインターンを実施する企業と、主に3年生が参加し、それぞれの企業ブースでインターン概要などを説明するイベントだ。就職情報誌などの企業が主催し、大学3年の6月1日が解禁日とされている。

 ここからわかることは、現在の就活は、実質的に卒業のほぼ2年前に始まるということだ。

■「東京五輪があるから、私たちの就活は早期化しますよね?」

 就活は学生優位の売り手市場と言われて久しいが、実は現3年生から風向きが変わった印象がある。

「就活ルールが廃止されると、どうなるかわからず、不安です」
「東京オリンピックがあるから、私たちの就活はより早期化しますよね」
「インターンから青田買いされるためには、どうすればいいのですか?」

 私は何人もの学生から、このような質問をされている。つまり昨年までの学生(現4年生)に多かった「危機感のない楽勝な雰囲気」が3年生からは感じられないのだ。

 また大学内で実施される3年生向け就職ガイダンスも、例年以上に出席率が良いという話を複数の大学から聞く。

 このように学生の意識は徐々に変わりつつある。要因の一つは、もちろん就活ルール廃止だ。経団連の廃止決定後は、政府が従来のスケジュール遵守を企業、団体に要請しているが罰則はない。また私の感触では、多くの3年生はこの政府の動き自体を知らないようだ。

 ではクイズの答え合せをしたい。

■「現4年生から青田買いをしても大丈夫だ」

Q. 「就活ルール廃止」は、現大学4年生と大学3年生、どちらから適用されている?

A. 形式的には現3年生から適用されるはずだったが、実質的には現4年生から適用され、一部で大幅な早期化、つまり青田買いが行われた。

 なぜこのような現象が起きたのだろうか? 知人のA社の人事はこう言う。

「もちろん現3年生から適用ということは知っていました。でも経団連の廃止宣言を聞いた時に、『もうこれで何でもアリだな。現4年生から青田買いをしても大丈夫だ』と感じたのも事実です。他の企業の人事の方も、そう思ったのではないでしょうか」

 以前から、外資系やメガベンチャーは早期から堂々と(あるいは多くの日本企業は水面下で遠慮しながら)、インターン学生と接触していた(もちろん厳密にルールを守り一切学生と接触しない企業もある)。

 そこにルール廃止が伝わり、日本企業の人事も現4年生から自由にやらせてもらう、という判断をしたのだ。現に私の元に次のような相談が現4年生(理系男子)から寄せられた。

■日系大手メーカーも「大学3年の10月」に内定出し

「外資系でもないのに、こんなに早く内定が出るものなんですか? まだ大学3年の10月なんですが、内定をもらってもいいのでしょうか?」

 やはりこちらも以前から外資系やメガベンチャーは大学3年の秋、冬から内定を出し始めていた。しかしこの学生が得たのは、有名な日本企業(製造業)の内定だ。

 こんな早期に日本企業が内定を出した話を今まで聞いたことがなかった。また先ほどの人事は私にこんな話をしてくれた。

「例年、3月1日から本選考を始めていましたが、今年、現4年生向けに1カ月前倒しました(2月1日)。就職ナビはグランドオープンしておらず利用できませんが、インターンに来てくれた学生さんが母集団となっているので問題ありませんでした」

 これらの事例から就活ルール廃止は、実質的に現4年生から適用されてしまったと言えるだろう。つまり政府のスケジュール遵守要請は、すでにほぼ形骸化している。

■早期化と長期化で“14カ月間”続く就活

 現状の就活は、大学3年の5月に就職ナビへの事前登録が始まり、夏、秋、冬のインターンを経て、保守的な日本企業では大学4年6月に内定が出て終わる。

 もちろん先の事例のように早期に就活を終える学生もいるが、大学4年の6月まで継続する人も多い。この場合、就活は、なんと実質14カ月間も継続することになる。

 つまり早期化と長期化が起きているのだ。知人のB社人事はこう言う。

「早期化と長期化は何もいいことがありません。4年生の採用をやりながら、3年生のインターン用の面接をするなど、非常に手間とお金がかかっています。競合企業がやる以上はうちもやるしかありませんが、無意味な我慢比べみたいなものですね」

 早期化と長期化は学生生活にも悪影響が指摘されている。実際に今年、私は大学1年生(文系女子)から次のような質問を受けた。

「半年間ほど海外留学を考えていますが、就活ルール廃止で、いつ頃行くべきか悩んでいます。念の為、行かないほうがいいですかね?」

 就活スケジュールの混乱は、このように積極的な学生ほど影響を受けてしまう。もちろん留学以外にも、学業への圧迫なども指摘され、あまりに非合理的である。

 経団連の意図とは別に、「就活ルール廃止」は、早期化と長期化を強化してしまっているように見える。何とも皮肉な現象だ。

■かつての“5カ月間”就活に戻すべき

 そこで私は短期的な解決策として、以前のスケジュールに戻すことを提言したい(長期的な解決策は自著 『学歴フィルター』 小学館新書に記した)。

 2015年卒までのスケジュール「大学3年12月1日採用活動解禁→大学4年4月1日内定出し」に戻せば、就活期間は実質5カ月間となる。企業も学生も負担が減る。

この時代は本当に12月1日から就活を始める学生がほとんどだった。そしてゴールデンウィーク前後で大手企業の内定出しが終わっていた。

 AIなどの高度人材の新卒採用においても、大学で長く研究時間を確保できる5カ月間の就活の方が合理的だ。

「でも企業は結局インターンで青田買いをするから同じことでは?」

 そんな反論もあるだろう。そこでインターンは大学1年生、2年生限定のルールにする。以前、経団連が採用していた「倫理憲章」のように企業名公表などの罰則規定を設けて、実効性を担保する。これにより青田買いを一定程度、防ぐことができる。

 また政府、大学から就職情報誌に要請し、インターンのナビ(リクナビ、マイナビ、キャリタスなど)は1年生、2年生のみ受け付ける(3年、4年生は不可)という制限を加えるのも有効だろう。

 1年、2年生対象となれば採用に直結しにくいので、現在主流の1DAYではなく長期のインターンが増える。学生は早期に仕事を深く理解することができ、大学で学ぶ意味や、入社後のミスマッチを防止することが期待できる。短期的にも長期的にも合理的だ。

 やるべきことは就活ルールの廃止ではない。早期化、長期化した、現状の14カ月間の就活を、かつての5カ月間に戻すべきではないだろうか。

(福島 直樹)

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