片山杜秀「日本を代表する思想家から、いま学ぶべきこと」

片山杜秀「日本を代表する思想家から、いま学ぶべきこと」

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 雑誌や新聞で、音楽や映画、演劇に文学と、幅広いジャンルの批評活動を行っている片山杜秀さんが、9月から“大人の夜間授業”を開講する。全11回にわたる講義のテーマは「日本の近・現代史100年を彩った11人の思想家」。慶應義塾大学の教授としても「近代日本の思想と文化」を専門に研究してきた片山さんのナマ講義を受けることができる貴重な機会だ。

「まず、思想家とはどういった人をいうのか。あえて定義づけるならば『時代や世界を動かそうとして価値観を提示する人』ではないでしょうか。その時代を生きるなかで何かに行き詰まっている、あるいは足りないと感じている。そんなときに、その先へ行くための知恵や価値観を示した人です。予言的示唆でもあったと思うのですが、それが『受け容れられる』、『られない』は様々で、時間の経過によってはじめて評価されたものもあるでしょう」

 吉田松陰、福沢諭吉、美濃部達吉、小林秀雄、丸山眞男――。講義で取り上げるのは、誰もが一度はその名前を耳にしたことのある人物ばかりだ。彼らの思想は、現代の我々が顧みたとき、国家はもちろん大衆にまで大きな影響を与えた人物ということができるだろう。

「歴史的な視点から思想家に目を向けたとき、共通した意識があるとすれば、それは近代西洋から押し寄せる何らかの現象に直面した彼らが、ポジティブ、あるいはネガティブに対峙した思考のバラエティーなんだと思います。古代・中世でも、最澄や空海、親鸞や日蓮といった人たちは、中国大陸からの政治的、文化的なインパクトに鋭く反応したわけでしょう。つまり日本の思想家を特徴づけるのは、海の外へのリアクションなんです。思想家たちは肌感覚で敏感に時代の変化を捉えていくのですが、そこで彼らの触れえた知識・情報は、当たり前ですが現代人がマスメディアやインターネットから得る情報よりもはるかに少なく、手に入れられる書物も限られていました。例えば吉田松陰は、肌で感じた時代の動きに対決するため、遊学しながら懸命に文献や書物の筆写をするわけですよね。その作業のなかからも考え、悩み、錬磨して自分の言葉に置き換えた。思想をはぐくむためのスケールが現代とは全然違っていたんです。単に“情報の量”ということでは、昔の大思想家よりも私たちの方が知っているのです。ところが限定された知識を徹底して血肉にして鍛えた昔の人の方がアウトプットは本質的で深い。考えさせられます」

 幕末から明治、大正、昭和と100年の思想家を見ると、天皇とは何かという問いかけも必ず含まれてくる。それは、近代化を図るために天皇制をうちたてた日本に生まれた彼らの、もうひとつの特徴と言えるだろう。そういった時代の背景も踏まえながら、片山さんの豊富な知識とともに、1人の思想家につき90分間の講義が行われる予定だ。

「取り上げる11人は日本の代表的な思想家たちです。講義では各人物の偉業を解説したり評伝を追うのではなく、思想家が何を考え、そのうちの何が実現し、何は実現しなかったのかを見ていきます。そして彼らの行動や著作が後世にどう影響を与えて時代精神にしみ込んでいったのか。それらを、時に評価を交えて考えていきます。大きな河を皆さんと一緒に上流から下っていきながら、最後に我々現代人が立つ岸まで泳ぎついたとき、思想家たちの考え方や感じ方が、未来へのヒントになるような講義になるとよいのですが」

INFORMATION

片山杜秀 夜間授業「日本の近・現代史100年を彩った 11人の思想家」
※有料の講義となります。受講料や講義日程はホームページでご確認の上お申込みください
http://www.bunshun.co.jp/info/talklive/index02.html

(「週刊文春」編集部)

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