NHK「ネット常時同時配信」へ 問われる“約40秒のキスシーン”と“政権との距離”

NHK「ネット常時同時配信」へ 問われる“約40秒のキスシーン”と“政権との距離”

©iStock.com

 このところNHKに関する記事が目立つ。まずは不祥事から。

 AI(人工知能)やビッグデータを駆使した番組で、自身も解説に出演していたプロデューサーが強制わいせつの疑いで逮捕された。

「夕刊フジ」の見出しは、

「NHK敏腕プロデューサー AIも下半身制御できず」(6月19日付)

 見事である。

 タブロイドらしい意地悪で下世話な視点もそうだが、「AI」と聞けば「いつか暴走して制御できなくなる」というオヤジのぼんやりとした不安に応えている。AIとオジさんは宿命のライバル。

■“濃厚キスシーン”に隠されたNHKの目論み

 続いては「読売新聞」が解説した「NHK肥大化 懸念拡大」(6月15日)という記事。

 NHKが放送と同時にインターネットにテレビ番組を流す「常時同時配信」を認める改正放送法が、先月国会で成立した。

 若者のテレビ離れや、人口減に伴う収入減の危機感からだという。これにより将来スマホだけでNHKの番組を視聴する世帯に受信料を求める可能性も出てきた。

 さらに民放が恐れるのはNHKの潤沢な資金力。受信料収入はすでに7000億円を超えている。

 これを上限無くネット事業に注ぎ込まれたら民放はたまったものではない。そんな警戒感も解説した「NHKの肥大化」という読売の記事。

 タブロイド紙はどう解説したか。

「日刊ゲンダイ」(6月16日付デジタル版)はNHKの“あるドラマ”について言及していた。

「大政絢&篠田麻里子“濃厚キスシーン”に隠されたNHKの目論み」

 え、これがNHKネット配信の解説? そう思う方もいるはず。

■「若者から受信料を徴収する戦略の一環ではないでしょうか」

 ゲンダイ師匠が何を言っているのかといえば、5月3日に放送されたドラマ「ミストレス〜女たちの秘密〜」(金曜夜10時〜)のこと。

 大政絢と篠田麻里子の「約40秒のキスシーン」があったことを書き、記事では放送ジャーナリストの小田桐誠氏がこう指摘する。

「大政さんと篠田さんのキスシーンは若者から受信料を徴収する戦略の一環ではないでしょうか。」

 考えすぎて馬鹿になっちゃった感ある。

 失礼。

 しかし大政絢と篠田麻里子のキスシーンが百歩譲って「NHKの戦略」だったとしても、その対象は若者ではなくオヤジではないだろうか。「NHKの戦略に見事にはまりました」と興奮漂うこのコメントを見てそう思った。

 夕方に発行されるタブロイド紙は朝刊一般紙と同じ解説をしても誰も読まない。切り口で勝負するしかない。この「大政絢と篠田麻里子ラブシーン有料化」解説はたしかに目を引いた。

NHK元専務理事の返り咲きは「首相官邸の意向」?

 さて、そんなNHKだが4月のある記事が話題になった。元専務理事・板野裕爾氏の復帰。

「NHK、板野氏返り咲きを正式発表 関係者『首相官邸の意向』」(毎日新聞電子版4月9日)

《複数のNHK関係者は、政権に太いパイプを持つとされる板野氏の復帰は「首相官邸の意向」と明かし、NHKと政権との距離を危惧する声が上がっている。》

 この記事の何がすごいって「首相官邸の意向」とハッキリ書かれていることだ。日々「おぼろげに見えてくる」のが読み比べの醍醐味だけど、「首相官邸の意向」と“答え”があっさり書いてあるので野次馬の仕様がない。

■籾井勝人前会長のコメントを報じた朝日にギョッ

 さらに板野氏の「実績」として、

《関係者によると、政権の意向を背景に「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターの降板を主導するなど、放送番組への介入を繰り返したとされる。》(毎日・同)

 これまたハッキリ書いてある。

 このあとに出た朝日の記事もギョッとした。

《板野氏をかつて放送総局長に登用したのは籾井勝人前会長だ。だが、その籾井氏までもが、板野氏と政権の関係が強すぎるとして、1期2年で総局長を退任させ「彼を絶対に戻してはいけない。NHKの独立性が失われてしまう」と当時の朝日新聞の取材に対しても口にするようになった。》(5月23日)

 政権と公共放送。先ほどのネット「常時同時配信」を認める改正放送法はもちろん、そもそもNHKの予算が国会で決まる。

《国会、なかんずく与党・自民党と首相の影響力を受けやすい仕組みの中にあるため、政治から圧力がかかりやすい立場にある。政治との関わりを避けては通れない公共放送として、これまで政府や与党との距離を何度も問われてきた。》(川本裕司『 変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場 』花伝社)

■そんな気持ちをすくい取った「N国」

 こうなるとNHKへの批判の声も当然大きくなる。そんな気持ちをすくい取ったような政党の躍進が先の統一地方選で話題になった。「NHKから国民を守る党」だ。

「N国」のキャッチフレーズは「NHKをぶっ壊す」という一つの訴えだけ。目指すは、契約者だけがNHKを視聴できる仕組み「スクランブル放送」の実現(東京新聞・TOKYO Web6月21日)。

 しかし《党員に右派が多いとされ、過去にツイッターで「アイヌ民族はもういない」と書き込み、自民党を除名された議員もいる。》(東京新聞・同)

 フリーライターの畠山理仁氏は「日刊ゲンダイ」で「『NHKから国民を守る党』の内幕」という短期連載(12回)をした。

「研究し尽くし到達した『すべての選挙は売名目的』の境地」
「聞けば腰を抜かす 当選果たした公認候補たちのヘイト発言」
「現職が任期残しアッサリ辞職 ジバン軽視の『現金』な理由」

 これら各回のルポが大反響。新聞ウオッチャーから言わせてもらえば今年の新聞界でも必読の連載だったと思う。

 それもこれもすべては「NHK」が原因というか、出発点なのである。

 NHKをみんなで見守らないといけません。

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(プチ鹿島)

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