東海道新幹線の英語アナウンスは逆効果? 問われる「英語の質」

東海道新幹線の英語アナウンスは逆効果? 問われる「英語の質」

©iStock.com

「We are stopping at Shin-Osaka station. The doors on the right side will open」

 最近、東海道新幹線でちょっとこなれない英語の車内アナウンスが流れているのを耳にした方も多いだろう。日本語でのアナウンスの後に続く、乗務員による肉声でのアナウンスだ。

 このアナウンス、訪日外国人客の増加を受けてJR東海がサービス向上のために昨年12月から行っている“新サービス”だ。それまでは事前に録音された英語のネイティブ・スピーカーによるアナウンスを流すだけだったが、外国人旅客向けに肉声の案内も加えて対応を強化した。

■早口過ぎて、ドアが開く方向が耳に入ってこない

 車内で必ず案内しているのは、冒頭に紹介した次の停車駅と、開くドアの方向の2つだ。旅客にとって次の停車駅名は必須であるし、開くドアの方向も多くの荷物を持つ旅行客のスムーズな乗降には役立つ情報である。

 肉声による英語アナウンスについて、関係者は「車掌など乗務員には当初、やや戸惑いもあったようだ」と話す。だが、外国人旅客の増加を受けて、他の社員が駅構内や切符売り場など様々な場面で英語対応を迫られるなか、車内でも対応が求められることに対するニーズは自然に受け入れられていったという。担当者は職場の「英語委員会」や「英語力向上委員会」と称する組織で、日々発音などの練習を重ねている。

 筆者も英語アナウンスの始まった頃の様子を覚えている。当初は原稿の「棒読み感」が否めず、不慣れな印象も強かった。「慣れないから手元の文章を早く読んでしまいたい」という心理が働くのか、早口過ぎて、ドアが開く方向が右なのか左なのか基本的な情報が耳に入ってこない時もあった。さらに、別のタイミングでは、ボソボソという声で発せられた言葉が英語なのかどうかもはっきりせず、メッセージが全体的に何を言っているのかわからない時もあった。

 それでも、導入から半年以上が経過したいま、練習の成果が出てきたのか、だんだん慣れてきた様子も見て取れる。

■専門家からは「英語は質も大切」との指摘も

 もちろん、中にはうまいなと感じるアナウンスも増えている。停車駅やドア方向の情報に加えて、忘れ物がないよう確認を呼びかけるリマインドや、ホームとの隙間が空いている場所での足下注意の呼びかけ、外国人向けのジャパン・レール・パスでのぞみ号には乗車できない――といった多彩な英語表現をしっかり説明できる乗務員のアナウンスを聞くと頼もしく感じる。だが、そこまでできる人はまだ多くないようだ。

 英語の専門家からは「英語は質も大切」との指摘も上がる。実用英語のラジオ講座を長く担当しているある講師は、「突発事故が起こり、例えば、『皆様、3両目の車両に日本刀を持った男がいます。現在けが人がいるようですが、警察官が対応しています。発砲するかもしれませんので、4両目以降にお座りの方はできれば後方に移動を……』といったような状況に応じたアナウンスができるかどうか。乗り合わせた外国人にも何らかのアクションを要請するような事態が発生した際に、しっかりした英語でないと混乱が増してしまう」と話す。

 それは逆の立場に立って考えてみればわかりやすい。海外に行って、何かトラブルが起きた時、日本語らしき言葉で何か説明されているにもかかわらず、何を言っているのかわからない状態では、逆に不安に襲われてしまうだろう。

■グローバル化が末端レベルまで浸透しつつある

 英語アナウンスの真価が問われるのは、やはり前述のような予期せぬトラブルなどが起きた時だろう。もちろん、そうした事態はないに越したことはないが、起きる可能性は常にある。乗務員の持つスマホのアプリに想定したパターンはいくつか用意されているものの、緊急時に的確な英語で対応できるように、多くのケースを意識した技量向上も今後の課題になるだろう。

 とはいえ、公共交通機関などの現場でこうした英語サービスの動きが広がってきているのは歓迎すべきことだ。徐々にグローバル化が末端レベルまで広範に浸透しつつある動きともいえるだろう。JR西日本でも同様の英語アナウンスを今年1月から始めており、山陽新幹線でもサービス向上に取り組んでいる。

 新幹線に限らず様々な業種でこうした動きが広がれば、日本は外国人客に優しく、周遊しやすい一段と魅力ある国になるだろう。多くの外国人が世界から日本に集結する来年の東京オリンピック・パラリンピックまであと400日を切り、いよいよ目前に迫っている。

(嶋田 宏実)

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