「皇后雅子にスポットライトが当たった」海外メディアが不思議がる“令和皇室”2つのポイント

「皇后雅子にスポットライトが当たった」海外メディアが不思議がる“令和皇室”2つのポイント

雅子さま ©ロイター/AFLO

 2019年5月27日の『ニューヨーク・タイムズ』は、トランプ・アメリカ大統領夫妻の訪日を報じるなかで、「 皇后雅子にスポットライトが当たった 」(“With Trump’s Visit to Japan, Empress Masako Finds a Spotlight”)とのタイトルを掲げた記事を掲載した。

■通訳なしでトランプ夫妻と積極的に会話したことを評価

 そのなかでは、皇后が英語を難なく扱い、通訳なしでトランプ夫妻と積極的に会話を展開したことを評価している。雅子皇后の存在が、伝統的で、どこか家父長的な意味合いを有している天皇制を新たなステージへと向かわせるのではないか、そう示唆しているようにも読める。これまで皇太子妃時代に長く病気に苦しんでいた雅子皇后が、令和になって皇后となり、外国に在住し外務省に勤務をしたキャリアを活かすことができるようになった、そのように報じたのである。

 この『ニューヨーク・タイムズ』の記事に代表されるように、令和の天皇制は諸外国のメディアにおいても相当に注目されている。新天皇・新皇后のキャリアや人柄、その行動などが報じられている。では、その諸外国における報道はどのようなものなのだろうか。平成から令和にいたるなかで、象徴天皇制の歴史を研究する私も、多くの海外メディアからの取材を受けた。そこには2つの特徴があったように思う。

■1点目は、天皇と安倍政権の関係について

 まず1点目として、天皇と安倍政権の関係である。いわゆる「平成流」と呼ばれる天皇制の特徴は、被災地訪問とともに、慰霊の旅があるだろう。社会全体が右傾化していると言われるようになって久しい。2015年に成立した、いわゆる「安全保障関連法」によって日本でも集団的自衛権が行使可能となったように、それまで以上に国際社会のなかでの日本の国際貢献、自衛隊の活動範囲は広がっている。こうした傾向に反比例するかのように、平成の明仁天皇と美智子皇后は慰霊の旅を積極的に行い、戦争の記憶を掘り起こし、その定着を図ってきたと言える。

 2015年8月14日には安倍首相が「戦後70年」の首相談話を発表するが、そのなかで「反省」を間接的にしか言及しなかったのに対し、翌日の全国戦没者追悼式の天皇の「おことば」では「さきの大戦に対する深い反省」を表明し、その対比を見せた。そうした明仁天皇の姿勢は、安倍政権に批判的なリベラル勢力からも評価されている。

 また、天皇の退位の意向は、私たちがNHKのスクープによって知ることになる以前より、安倍政権に伝えられていたと言われている。しかし、それを正面から受け止めなかった。だからこそ、政府から伝えられるのではなく、報道によって天皇の退位の意思を国民は知ることになる。天皇と安倍政権のギクシャクさは何となく伝わってきていた。

 一方、退位と即位が近づくにつれ、安倍首相は徳仁皇太子に対して、元号や儀式などについて説明をしたことが伝えられる。まるで、新しく天皇となる皇太子との蜜月をアピールするかのようでもある。

 そうした状況を海外メディアは注目していた。なぜ明仁天皇と安倍政権はギクシャクしているのか。その考え方の根本的な違いは何なのか。またその点を踏まえて、新しい天皇を取り込もうとしているのではないか。そうした質問をされることが数多くあった。

 ところが日本のメディアからは、政権と天皇の関係性を直接的に問う質問はそれほど多くなかった。日本の報道機関の安倍政権への「忖度」が懸念されているが、天皇との関係でもそのように感じざるを得ない。一方、そうした配慮をする必要のない海外メディアは、なぜ「伝統」を声高に叫び「保守」を自称する安倍政権が、天皇と対立するのかを尋ねてくる。

■なぜ女性天皇や女系天皇を認めないのか

 海外メディアが注目していた2点目は、女性天皇・女系天皇についてである。そもそも女性天皇・女系天皇とは何なのか、なぜ日本においてはそれが認められないのか、これまで男系天皇が続いてきたとされる歴史とは何なのか、質問されることが多かった。ヨーロッパにおいては近年、女性の国王が認められるケースが多い(君塚直隆『 立憲君主制の現在 』新潮選書に詳しい)。しかし日本ではなぜ今も変わらないのか。それを女性差別ではないかと指摘するメディアもあった。

 現代社会において、性差を解消する方向へと進んでいるなかで、なぜ日本の天皇制は女性天皇や女系天皇を認めないのか。こうした質問は、1点目の安倍政権の問題とも関連させて質問されることも多かった。安倍政権はなぜそこまで女性天皇・女系天皇に消極的なのか。男系を支持する人々が、政権を支えているグループであることは理解しても、なぜ彼らが男系継承にこだわるのかまでは海外でもあまり知られていないようである。愛子内親王、秋篠宮家の眞子内親王・佳子内親王に対する日本国内の注目度を見たとき、彼女らを天皇にする必要があるのではないかとの意見もあった。

 日本のメディアにおいても、女性天皇・女系天皇に関する質問は多かった。しかしより多かったのは、今後の公務負担をどうするのかといった問題を解決するための女性宮家に関する質問だったように思う。海外メディアはより根本的に、男女の差別の構造を天皇制が体現しているのではないかという根源的な問題を問うている。

■ある種のフィーバーを作り出したのではなく

 平成から令和にかけての海外報道を見ると、天皇制の抱える本質・構造を伝えようとしているようにも感じる。日本のメディアが、元号の制定過程や儀式の内容などの技術論を多く伝えていて、ある種のフィーバーを作り出したのとはやや異なり、ジャーナリズムとして制度の問題を報道しようとしたのではないか。冒頭の雅子皇后の活動も、根源的にはキャリアを持った女性が家の構造でこれまで活躍できなかったこと、ひいてはそれは女性への差別であったこと、それが現在少しずつ変化していることを伝えるもののように思われるのである。

(河西 秀哉)

関連記事(外部サイト)