修猷館、興譲館、佐倉、修道……「藩校」教育にAI時代を勝ち抜くヒントがある

修猷館、興譲館、佐倉、修道……「藩校」教育にAI時代を勝ち抜くヒントがある

佐倉高校の「記念館」

 2020年度には大学入試が大きく変わる。それに合わせて小中高の学習指導要領の改革も進んでいるが、加速する一連の教育改革の背景には、大きな社会構造の変化がある。

 たとえばAIなどの進化により、10〜20 年後には「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」(野村総合研究所・英オックスフォード大学とのマイケル・A・オズボーン准教授の推計、2015年)なるとの予測がある。そうした変化に対応するため、単に知識を得るだけでなく、「自ら学び自ら考え行動する力を育成する」ことが教育改革の主眼となっているのだ。

 教育の方法も従来の一方通行型から、生徒がより能動的に学ぶ「アクティブラーニング」へと変わっていくことになるが、一方で、AI社会においては「日本の伝統校の教育こそ参考にすべき」との指摘がある。

 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏(45)は、 「文藝春秋」6月号 に寄稿した「教育の本質は『藩校』にあり」で、江戸時代に各藩で設立された「藩校」の教育に注目している。

■とにかく「生徒の自主性を重んじる」

 現在、日本には「藩校」以来のユニークな教育を伝統として受け継ぎ、実践している地方の超伝統校がいくつか存在する。たとえば、福岡県立修猷館高校は、1784(天明4)年に黒田藩が設置した藩校に由来し、200年以上の歴史を有する名門校だ。

 主な卒業生には、内閣総理大臣・廣田弘毅、朝日新聞主筆から副総理になった緒方竹虎ら政治家や、警視総監、内閣危機管理監を歴任した伊藤哲朗氏などがいる。

 この高校の教育の特長は、とにかく「生徒の自主性を重んじる」ということだ。

■生徒の自主性が重んじられるゆえに、校則さえない

 伝統校には、今となってはなぜ行われているのかよくわからない“謎の儀式”が存在することが多いが、修猷館もご多分に漏れず、生徒たちが自主的に運営する“儀式”をもつ。

「授業が終わったら、太鼓が打ち鳴らされている講堂に1年生全員がダッシュで集合。そこで、館歌(校歌)や応援歌をひたすら叫ぶ。歌うのではなく、全力で叫びます。それでも必ず、『お前ら、ナメとうとか!』などと応援団員に怒鳴られる。最終日に応援団長から『これで本物の修猷生たい!』と言われて、泣く女子もいました」(40代の修猷館OB)

 同校ラグビー部出身の岡本圭吾副校長(肩書は取材時)も、こう証言する。

「この『応援歌指導』には教師は原則ノータッチなのですが、その後の精神的なケアはやっています。『もう(学校を)やめたい』と言い出す子もいますから」

 こうした儀式に限らず、2大行事とされる運動会と文化祭は、運営も含めてすべて生徒たちが仕切る。生徒の自主性が重んじられるゆえに、校則さえない。

■「一歩引いて、教えすぎない」授業

授業にもこだわりがある。

「修猷独特の授業のやり方として、『一歩引いて、教えすぎない』など、いくつか指針があるので、(他校から来た)自分の指導法に自信がある先生ほど、葛藤を感じることがあります」(岡本副校長)

 それでいて、毎年東京大学に10名以上、地元の九州大学には100名以上の合格者を出すなど、進学面でも結果を出しているのだから、驚くほかない。

「文藝春秋」6月号 掲載のおおた氏の論考「教育の本質は『藩校』にあり」では、修猷館高校のほか、山形県立米沢興譲館高校、千葉県立佐倉高校、私立修道中学校・高等学校(広島)の教育が詳しく紹介されている。

 教育においても、「温故知新」の精神は大事なのだろう。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年6月号)

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