石破茂が明かす「安倍総理の後は誰かがやらなきゃ。その覚悟はある」

石破茂氏『ポスト安倍』への覚悟言及 『ポスト安倍にふさわしい』2位は小泉進次郎氏

記事まとめ

  • 安倍晋三首相は2021年に自民党総裁任期満了となるが、『4選』を求める声もある
  • 『次期首相になってほしいのは誰か』のアンケートでは、石破茂氏が堂々の1位だった
  • 石破氏は『ポスト安倍』を、場合によっては逃げずに背負う覚悟があると述べている

石破茂が明かす「安倍総理の後は誰かがやらなきゃ。その覚悟はある」

石破茂が明かす「安倍総理の後は誰かがやらなきゃ。その覚悟はある」

石破茂元幹事長

 安倍晋三首相は2021年9月に自民党総裁任期満了を迎えるが、自民党内からは早くも「4選」を求める声も出ている。

 そこで文春オンラインでは「次期首相になってほしいのは誰ですか?」という アンケートを実施 。安倍首相(4選)、小泉進次郎厚労部会長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長らを抑え、堂々の1位になったのが、石破茂元幹事長だった。

 昨年秋の総裁選で安倍首相に敗れている石破氏は、この結果をどう受け止めるのか。そして「ポスト安倍レース」への覚悟はあるのか。その戦略はどうなのか。週刊文春編集局長の新谷学が石破氏に切り込んだ。(全2回の1回目/ #2 へ続く)

◆ ◆ ◆

■「安倍総理の後は誰かがやらなきゃいけない」

――「ポスト安倍に誰がふさわしいか」というアンケートをやりまして、応募総数が802。そのなかで1位が石破さん、191票。2位が小泉進次郎さん、177票……。

石破 肉薄。

――3位が安倍さん(4選)、126票。4位が菅さん、89票。5位が岸田さんと河野太郎さん、50票で並ぶ。まず率直なご感想をお聞きできますか。

石破 それだけ期待してくださっている方が多いというのはありがたいことです。「いや、私のような浅学非才が」、ということは許されないのだろうと思っています。私は「(総理総裁に)なりたい、なりたい」と言ったことは実は一度もない。ただ、総理総裁でなければできないと思う仕事がある時に逃げちゃいけないっていうことなんですね。

 小泉総理、福田総理、麻生総理、安倍総理、4人の総理に閣僚としてお仕えしました。あるいは竹下総理、小渕総理、羽田総理……間近で見た総理もいました。それはもう本当に激務、命を削る仕事です。ご存知の通り、プライバシーなどはどこにもなく、ご批判を浴びることばかり。お金が儲かるわけでもない。私、大臣は何度もやりましたけど、「総理、どうしましょうか」「総理、ご判断を」と言いますもんね。総理は誰にも言えない。

 だけど、未来永劫続く政権はないし、安倍総理の後は誰かがやらなきゃいけない。これだけ長く続いた政権の次に、「財政どうする?」「金融政策どうする?」「社会保障どうする?」「安全保障どうする?」「憲法をどうする?」、それらを一つ一つ国民に説明しながら、みんながパチパチ手をたたくような解決なんかできるはずがない。だけど、誰かがやらなきゃいかんことだろうと思っている。

 このアンケートのようなご支持があって、もう33年も国会議員の議席を与えていただき、閣僚も6年やって、幹事長も政調会長もやって……「いいえ、私はやりません」「そんなつもりありません」とか、そんなことは言ったらいかんだろう、ということです。

■「安倍政権の支持率が高いのはいいことです。だけど……」

――安倍総理の任期に伴って、遅くとも2021年には総裁選があります。出馬されるご意向は現時点ではどうでしょうか。

石破 そんな先のことはわかりませんが、いま例として申し上げたような課題がその時にも課題として残されているとすれば、誰かがそれを手掛けなければならない。財政、金融、社会保障、安全保障、憲法――解決策が見えていて、国民も「そうだそうだ」と言えればいいんですけど、そうなっていない場合にはもう一度考えなければいかんということです。

――一方で、アンケートでは「安倍総理の驕りが出ている」など政権に対しての批判的な声が石破さんに集まったという印象もあります。石破さんは憲政史上最長にもなろうとしている安倍政権について、現時点でどういう評価をされていますか。

石破 支持率が高いというのはいいことです。だけど、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」というご発言があったり、国会答弁における挑発的なおっしゃり方があったり、違和感を感じている国民がいるとすれば、より丁寧に当たらなければならない。

■「党内からの批判は毎日受けてますよ(苦笑)」

――そういう安倍さんの政治手法に対する違和感を石破さんが表現されると、「党内野党のようなことを言うな」「党内の融和を乱すな」というような批判を受けることもありますよね。

石破 いや、毎日といっていいぐらい受けてますよ(苦笑)。

――先ほど「ポスト安倍」について、場合によっては逃げずに背負われる覚悟があることは伺いました。そして誰もが認める「政策通」の石破さんですけれど、現実、総裁選に打って出ようとなったときに、どれだけ人が集まるのか。いま安倍さんが石破さんをいじめているという言い方がいいかどうかわかりませんが、「派閥のパーティーに来ない」「派閥の領袖を集めて石破さんは呼ばない」ということがある。安倍一強と言われる状況で、石破さんは孤立しているようにも見えます。

石破 そこは私の足りないところなんだと思います。総裁選の前あたりから、斎藤隆夫代議士について少し調べるようになりました。

■党員票45%なのに、国会議員票が伸びない理由とは

――昭和15年、太平洋戦争を控えた帝国議会で「反軍演説」を行った政治家です。

石破 その斎藤隆夫代議士です。彼は保守政治家そのもので、愛国者でした。だからこそ収拾がつかない日中戦争へ疑問を呈する演説をする。あれは決して「反軍」ではありません。議場では万雷の拍手だったのにもかかわらず、1カ月後に彼の除名決議が行われて、それに反対した者は7名しかいなかった。でも、いまでも燦然と斎藤隆夫という名前は残っている。

 つまり、「あの時代でも、本当のことを言った人が少なくともいたよな」と後世に評価されることも一つの生き方なのではないかと思ったわけです。一方で、それは自己満足と言うんだよ、政治家なんだから世の中を変えなきゃ意味がないでしょ、という批判も当然にあります。

 そんなことも意識しながら、去年秋の総裁選に臨みました。震災対応による3日間の短縮、後半になってしまったテレビ討論、少なかった街頭演説……制約はありましたが、できるだけ丁寧に、自らの思っていること、訴えるべきことを真摯に訴えようと努力したつもりです。結果として党員票の45%をいただくことができました。

――確かに、前回総裁選での党員票45%というのは非常に重い。それだけの支持を得ているにもかかわらず、国会議員票が伸びなかった(※安倍総理329票、石破氏73票)。2012年の総裁選もそうでした。党員票では石破さんは勝っていたのに、議員票で逆転された。この現象をどう受け取っていますか。

石破 なにしろ現職の総理と一騎打ちという構図ですからね。私も33年議席をお預かりしてきて、国会議員の動機の一端は分かるつもりです。私自身、若い頃は政務次官というものになってみたかったし、副大臣も、一度でいいから大臣というものもやってみたいと思ったことがありました。そういう気持ちがある人は、やはり現職に投じるものだと思いますね。それでも72人もの方が支持してくれたことを心から感謝しています。

 私は昔、政治改革の頃、小泉(純一郎)先生に逆らいまくって、それなのに小泉内閣で防衛庁長官を拝命しました。小泉総理は「いま誰を使えば政策が実現できるか」を第一に考えられたのだと思います。だけど安倍総理の周辺には、第一次安倍政権の教訓で「そんなこと言ってたら政権は維持できない」という思いがあるのかもしれません。とにかく政権を維持するためには何が必要か、という発想もあるのかもしれない。

 それでも、世論が大きく動く時には、国会議員も抗えないものです。これまた鮮明に覚えていますが、小泉先生対橋本龍太郎先生という総裁選がありました。

■「小泉先生が総裁になったら日本も終わりだ」

――2001年の総裁選ですね。

石破 当時、私も鳥取県じゅうで「小泉先生が総裁になったら日本も終わりだ」などと言ってました。でも結果、橋本先生が党員票で勝ったのは、野中先生の京都、青木先生の島根、ご自身の岡山、それから普天間返還をクリントン大統領との間で合意した沖縄、それと鳥取だけでした。ほとんどの国会議員は橋本支持だったのに、圧倒的に小泉先生が勝っちゃった。

――あのときは小泉さんが田中真紀子さんと一緒に「自民党をぶっこわす」と言って、大きな風を国民レベルで吹かせ、国会議員が抗えなくなった。そういう意味で、今回のアンケートでは石破さんが1位、僅差の2位が小泉進次郎さん。たとえば石破さんと小泉進次郎さんが組んで旗を掲げれば、ものすごく大きなうねりが生まれるかもしれません。

石破 そうかもしれません。

■「小泉進次郎さんはいずれ総理をやる人」

――その小泉進次郎さんへの評価は? いま石破さんとの関係性はどうなんでしょうか?

石破 私は、小泉進次郎さんはいずれ総理をやる人だろうと思っています。小泉さんとは当選以来、いろんな場面で一緒に仕事をしてきました。そういう中で、ほんとにすごいなと思ったことが何度もあるんです。だから、私の個人的な経験に照らしても、いつか総理になる人なんだと思うし、そのために私ができることはしていきたいと思っています。

 とても知名度の高い議員だから、今でも「大臣になりたい」と言えばなれるのでしょうけど、ポストに関しては慎重で、まだ副大臣もやっていない。ご自身が一番わかっておられる様子ではありますが、やはり総理大臣になるには閣僚や党役を務めないと見えないものもあるし、いきなりポンと総理になると、それは日本国にとってもご本人にとっても十分な結果とならない危険性がある。いろんな経験を積みながら、周りをきちんと固めて、来たる「小泉進次郎政権」は盤石なものとして、この国のために働いていただきたいと思う。

 それまでの間、先ほどから申し述べているような数々の課題に取り組まなければならない。たとえ石もて追われても、一つでも二つでも片づけて、少しでも将来の課題を減らしていかなきゃいけないと思っています。

■「安倍総理の後、小泉進次郎さんの前」が極めて重要

――安倍さんの後、小泉進次郎さんの前を務める方が極めて重要な役割を担うと。

石破 そう思います。その間は、誰がやっても何人やっても大変でしょうが、必要なことだと思っています。

 小泉さんは2012年の総裁選でも、私を支持してくれたそうです。投票した後に「実は私は石破さんに入れたんだ」と言ってくれました。

――口止めを厳重にされたというふうに聞いています。

石破 それは分かりませんが、昨年は投票直前に「石破さんに入れる」と言ってくれました。つまり、「一緒に酒を飲んだから」とか、「自分のところに頻繁に挨拶に来たから」とか、そういうことで判断する人ではないということでしょうね。

 小泉さんに限りませんが、この国をこれから担う議員たちがどう判断していくかというのも大切ですね。将来、自分が総理にならなければできないことがある、という判断をするのか。なにが国のためだと思うか。

■「何を読んだらいいですか」進次郎さんのひと言

――定期的にお会いになって意見交換は今もされているんですか。

石破 個人的に誰にどう会って、というお話は差し控えさせていただきまして(笑)。

 ただ、鮮烈に覚えているエピソードをご紹介します。自民党が野党時代、私が政調会長だったとき、移動する列車の中で2人だけになったことがありました。その時に小泉さんに「政調会長、税制について勉強したいんですけど、何を読んだらいいですか」と訊かれました。実は、国会議員からそんなふうに訊かれたのは初めてで、強く印象に残りました。むしろ、こちらからお薦めしてもあまり読んでもらえないことの方が多かったからです。たとえば防衛庁長官を拝命していた頃に、防衛関係の議員にいくつか推薦の本をお渡ししたことがありましたが、その後「読みましたよ」と言ってくれる人はいませんでした。けれども、小泉さんは自分で勉強する人なんですね。それもすごいことだと思います。

 もちろん今後、政策について意見交換とか、そういうこともあるでしょうが、基本的にはまず自分でお考えになる人なんじゃないでしょうか。政策だけじゃなく、政局的なことについても、これから日本の国はどうあるべきか、ということを考えながら判断をするんだろうな、と思っています。

(#2へ続く)

写真=松本輝一/文藝春秋

石破茂に聞く「なぜ若手議員と料亭に飲みに行かないんですか?」 へ続く

(「文春オンライン」編集部)

関連記事(外部サイト)