エリートの息子、大阪拳銃強奪犯は「障害者“襲撃未遂”」を起こしていた

エリートの息子、大阪拳銃強奪犯は「障害者“襲撃未遂”」を起こしていた

襲撃された千里山交番

「Aは『自分のせいで飯森は事件をおこしたのではないか』と責任を感じ塞ぎこんでいます。自宅に帰れず、知人の家を転々としているようです。飯森のせいで犯人扱いされたり、警察の取り調べを受けたわけだから、本当は怒ってもいいのに。野球部のキャプテンを務めただけあって、責任感が強い奴なんです」

 こう話すのは、大阪・吹田市の拳銃強奪事件で逮捕された飯森裕次郎容疑者(33)の中学時代の同級生だ。Aとは、飯森が事件直前に虚偽の110番をした際に名乗った、同級生である。

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 6月17日、箕面市の山中で逮捕された飯森は「私のやったことではありません。病気がひどくなったせい、周りの人がひどくなったせいだ」などと供述し、現在は黙秘を貫いているという。

 小誌の取材で浮かび上がったのは、飯森が強い執着心を見せたAと父親の存在だった。

 当初、飯森が110番通報でAを名乗ったことから、情報が錯綜。Aを容疑者として混同し、「拳銃強奪容疑の男は兵庫県尼崎市在住か」と配信した社もあった。結局、飯森の父で関西テレビ常務だった睦尚氏(63)が「自分の次男に似ている」と警察に通報したことから飯森の存在が浮上する。

「飯森は千里山交番を襲撃する直前、Aの実家住所を伝え空き巣被害に遭ったと110番通報していますが、事件前後でこの住所に二度にわたり立ち寄っていたことが分かっています。また、通報時に『警察官二人くらいで来てほしい』と告げていたことや、14日に母親へ送ったLINEには『まだ大阪で考えたいことがあるので、大阪にいる』と記していたことなど、計画性をうかがわせる事実が判明しています」(社会部記者)

 犯行前、中学の同級生らに〈年賀状出したいのでよかったら、住所教えてくれませんか?〉とSNSでメッセージを送っていた飯森。なかでも、SNSの通話機能で電話をかけるなど、飯森が強い関心を示していたのがAだった。

 前出の同級生が語る。

「Aは中学時代、野球部のキャプテンを務めていただけでなく、ピッチャーで一番打者というまさに中心選手。小学校から一緒の飯森にとっては憧れというか、気になる存在であったとは思います。事件直前、飯森は『Aと飲みにいく』と同級生に嬉しそうに報告していました。しかしAは飯森の誘いに応じたつもりはなく、結局、飲み会は流れた。この一件で、飯森がAに逆上した可能性があります」

 一方でエリートテレビマンの父は順調に出世を重ねていた。

■「飯森に後を尾けられた」

「睦尚氏は仕事熱心で人望も厚く、今回の人事では社長レースの最後まで残っていた。結局、最後の最後で社長の座は逃したものの、次の社長の可能性も十分あるというのが社内の評判でした」(関テレ社員)

 今回の事件は、Aへの執着心やエリートである父への反発によって引き起こされたのか。だが実は、飯森が周囲の人間に強い執着心を示したケースはこれが初めてではなかった。

 大学卒業後、自衛官やテレビの制作会社など、職を転々とした飯森だが、どの職業も一年以上続くことはなかった。

 そして16年4月末、岩手の「めんこいエンタープライズ」を退職し、東京へと舞い戻ってきた飯森。両親との同居を再開させるが、しばらくして都内のある障害者の就労支援施設に通い始めたという。

 この頃の飯森は「ドラクエが画面から出てきた」と自ら警察署に通報するなど、明らかな異変の兆しがみられた時期だった。トラブルの現場となったのがこの施設だ。

 施設関係者が語る。

「精神障害などを抱える障害者が通う施設で、パソコンのタイピングなど、就労に必要なスキルを学ぶことができます。月毎に講座の時間割が決まっており、必修科目もありますが、個人のレベルに合った講座を受けていく方式。講座修了者を対象に、企業とのマッチングや面接同行など、社会復帰のアフターフォローも行っています」

 事件が起きたのは、一年ほど前のことだった。

「施設に通う30代の男性がある講座で、飯森と同席することがよくありました。彼は仲間内の話で飯森の名前は知っていたそうですが、特に親しく言葉を交わすような仲ではなかった。ただ、受講中に飯森が自分のことをじっと見続けていることがあり、少し気になっていたそうです。そんなある日、男性が帰宅しようとすると、なぜか飯森が一定の距離を保ちながら、ずっと付いてきたのです」(同前)

 施設の最寄りの駅まで後を尾けてくる飯森を見て、男性は「このまま真っすぐ帰るのは危険だ」と感じ取った。

「電車に乗り渋谷駅で降りて、駅の周りをぐるぐると歩いてみたものの、やはり飯森は付いてくる。『いよいよマズい』と思った男性は再び電車に乗り、施設に駆け込みました。そして、信頼できるスタッフに、飯森の付きまといを報告。それを聞いたスタッフが外に出てみると、飯森がビルの入り口に潜んでいたそうです」(同前)

 事情を知った施設のスタッフたちが飯森に話を聞いたところ、驚くべき事実が判明する。

■今回と同じ言い訳を口にした

「聴取の過程で、飯森が刃物を所持していたことがわかったのです。その時も、飯森は、今回の事件と同じように『統合失調症の病状が悪化しているからだ』、『病気のせいであり、自分は悪くない』などと言い訳をしたと聞いています」(同前)

 別の関係者も次のように話す。

「飯森に付きまとわれた男性は比較的症状が軽く、コミュニケーション能力もあるため、施設のクラスメイトやスタッフと楽しそうに過ごしていました。飯森はそれに嫉妬したのでしょう。精神障害では、他人とコミュニケーションが円滑にとれるかどうかが、重度か軽度かのボーダーラインになってきます。コミュニケーションがうまくとれれば事務系の職業にもつけますが、そうでないと選択肢が単純労働に限られる実情もあるのです」

 その後、飯森はいつの間にか、施設に通わなくなっていたという。

「事件翌日の17日、男性の元には施設時代の友人から『お前のところは大丈夫か』といった連絡が相次いだそうです。『何のことだろう?』と思いながらテレビのニュースを見てみると、自分が付きまとい行為を受けた飯森の名前と顔写真が出ていた。

 施設のスタッフからも、彼に『ショッキングな出来事があったが、大丈夫か』と連絡があったそうで、施設側もこの件は認識しています」(男性の知人)

 当該施設に飯森のトラブルについて尋ねると、「過去も現在も、利用者様のプライバシーの観点から取材にはお答えしておりません」と回答するのみ。

 今回の拳銃強奪事件を想起させる飯森の行状は何を意味するのか。一刻も早い動機解明が待たれている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年7月4日号)

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