【参院選直前】自民党VS立憲民主党「老後2000万円不足問題」徹底論争

【参院選直前】自民党VS立憲民主党「老後2000万円不足問題」徹底論争

麻生太郎金融担当大臣は報告書の受け取りを拒否した ©共同通信社

 参院選の公示日である7月4日、安倍晋三首相は福島市で演説を行い、こう熱弁をふるった。

「年金は皆さんの大切な老後の生活の柱です。しかし、この年金の財源は現役世代の保険料負担と税金です。この負担を増やさないで年金を増やすことはできません。“打ち出の小槌”はないのです」

 今回の参院選の大きな争点の1つが年金問題だ。発端は6月3日に金融庁が公表した報告書だった。

「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」

 このような内容に批判が集中し、麻生太郎金融担当大臣は報告書の受け取りを拒否。安倍首相も「不正確で誤解を与えるものだった」と釈明し、金融庁は謝罪に追い込まれた。

「老後資金2000万円問題」が参院選のカギであるならば、与党と野党の一体どちらが納得できる説明をしてくれるのだろうか。

 そこで、自民党の橋本岳衆院議員と立憲民主党の長妻昭代表代行に徹底討論を行ってもらった。“与党代表”の橋本氏は、祖父の橋本龍伍氏と父の橋本龍太郎元首相が共に厚生大臣を務め、自身も厚労副大臣や党部会長を務めるなど厚労族の出世街道をひた走ってきた。一方、“野党代表”の長妻氏は、「ミスター年金」とも呼ばれ、第一次安倍政権下で起こった「消えた年金問題」の追及で名を上げた野党きっての論客である。

 まず、長妻氏が口火を切った。

■長妻氏「麻生さんの振る舞いには呆れました」

長妻 (金融庁の報告書について)世論の批判を受けると、安倍総理は「不正確で誤解を与えるものだった」と釈明しましたが、そもそも「老後に2000万円不足する」という試算は、総務省の家計調査を元に出されたもの。これまで何度も国会で議論されてきた数字で、これを否定するのは無理があります。橋本先生もそれはわかっているでしょう?

橋本 確かに、2000万円という数字自体は議論の材料の一つだと思います。ただ、年金以外の収入源や資産は人によってまったく違う。それを一緒くたにして「2000万円の不足」と表現してしまったことで誤解を招いてしまいました。

 さらに、長妻氏は麻生大臣の“報告書受け取り拒否”もバッサリ切り捨てた。

長妻 麻生さんの振る舞いには呆れました。担当大臣として報告書の作成を依頼しておきながら、批判を浴びるや「政府のスタンスと違う」と受け取りを拒否した。前代未聞の子どもじみた行動です。

橋本 私も個人的には麻生先生の対応は残念に思います。報告書の提言を見て見ぬふりしたかのように思われてしまいましたから。

■“厚労族のプリンス”はいかに反論するか?

 一方、安倍首相は参院選の演説で「野党は財源に裏打ちをされた具体的な提案は何もせずに不安ばかりを煽っている」と主張している。野党に対しても、「票を集めるために報告書を政争の具にしている」と批判の声が上がっているのは事実だが、長妻氏はどう答えるのか?

長妻 無論、政争の具にするつもりはありません。ただ、今回の報告書によって、年金に対する世間の関心が非常に高まりました。将来に向けた年金制度改革を目指して建設的な議論を行うためには、絶好の機会であることは確かです。ところが、政府には前向きな議論をするつもりがない。

 長妻氏が“前向きな議論”を政府が拒んでいると問題視しているのは、年金の「財政検証」を公開していない点だ。「財政検証」とは、5年に1度、社会・経済情勢を元に厚生労働省が行う「年金の健康診断」で、給付水準の見直しなどが示される。前回にあたる2014年の財政検証は6月に公表されているが、今回はまだ公表されていない。これについて、野党議員を中心に「参院選の争点隠しだ」との批判の声が上がっているのだ。

長妻 これまでの「財政検証」は前提となる各種データが揃った3カ月後にオプション試算も含めて公表されています。今年でいえば6月上旬には公表されていないとおかしい。選挙前に公表して問題意識を共有するべきですよ。

 だが、橋本氏はこう反論する。

橋本 参院選前だから議論すべきとする考えは違うと思います。年金制度改革という重要議題は、選挙前に焦って議論するものではなく、長期的に継続して行われるべきです。

 はたして年金は大丈夫なのか――。 「文藝春秋」8月号 の「年金崩壊 すべての疑問に答える」では、ここまで紹介した橋本氏と長妻氏の論争に、金融庁の報告書を作成したワーキング・グループ委員である駒村康平・慶應義塾大学教授と社会保険労務士の諸星裕美氏も参加し、現在の年金をめぐる諸問題について、徹底討論を行っている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年8月号)

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