山本太郎の『れいわ新選組』がどう見ても「政界あらびき団」にしか見えなくて困る

山本太郎の『れいわ新選組』がどう見ても「政界あらびき団」にしか見えなくて困る

国会で熱弁を振るう山本太郎氏 ©文藝春秋

 結論を言うと、山本太郎さんのような政治家が日本にいていいと思うんですよ。

 もちろん、政治信条は私と違うし、少なくとも福島県民を不当に貶めるような東京電力・第一原発事故に絡んだ中傷は許容しがたい面はありますよ。でもそれが、単なる日本の左翼・革新勢力の劣化と見るのは望ましくないし、山本太郎さんの主義主張を一つずつ見ると山本太郎さんらしいオリジナリティがあり、必ずしも教科書的なリベラルの物言いともまた違うわけです。

■とにかく反自民の人たちが興味を持ちそうなフレーズ

 前々回の参院選(2013年)では、東京にある5つの議席のうち、山本太郎さんが66万票とって堂々4位で議席を確保しました。その後、すったもんだあって小沢一郎さんと合流して「生活の党と山本太郎となかまたち」とかおそろしくやっちまった感の強い名前の政党を作ったもののパッとせず、野党全体の合流と非自民票・政権批判票の受け皿を作るために小沢さんが野党再編に打って出ると、山本太郎さんもこの流れを見限って、また、さらに上を目指して、山本太郎政党が政党要件を満たす5議席をも狙える勢力にしていこうと乾坤一擲の博打を打つ。

 凄いですよね、動きが。これら一連の流れるような動きの果てに、これといって何か成果を挙げたわけでもないのが山本太郎さんであり、そのままじゃいけないということで、根性見せて凄いことをやろうとしているのが山本太郎さんではあるわけです。

 政策面でも、いわゆる現状否定、安倍晋三政権を痛烈に批判する内容の公約をアピールし、現実性が疑われるという批判にかまわず、とにかく反自民の人たちが興味を持ちそうなフレーズを精一杯並べてマーケティングしています。必死なんだと思いますね。だからこそ、山本太郎さんは面白い。うっかり本当に政権をとっても一個も実現できなそうな内容ではあるけど、現状に不満を持つ有権者が「でも、山本太郎なら何かやってくれそうだ」「面白そうだから応援してみようか」と思えるようなキーワードはしっかりくっつけているので、面白いとは思うんですよ。

■「お前ら丸川珠代のどこがいいと思ってるの?」

 ちょうど近所の大学や企業研修で若い人たちと話す時間がたくさんあったので、興味を持ってアンケートをしてみたんですが、ざっくり20代合計440人で山本太郎さんを知っている人は38.5%、今回の投票で山本太郎さんに投票しようと思っている人は9人でした。期日前なので、まあそんなもんかなと思います。

 もちろんサンプルに代表性は欠けるので、あくまで興味本位のアンケートに過ぎなかったのですが、自民丸川さんに投票するつもりだと回答した人47人に「お前ら丸川珠代のどこがいいと思ってるの?」と訊いたら、ほぼ全員が丸川さんはどうでもよいらしく、安倍ちゃん政権や自民党支持を理由に手を挙げていました。でもこの「自民党だから投票している」のであれば、それこそへのへのもへじが書かれたカカシでもうちの猫ちゃんでも被選挙権があればそれでいいわけで、一定の割合でやってくる自民党が逆風に晒される時期は本人の魅力じゃない分だけみんな落選するよなあと思います。

 それでも、まだ丸山珠代さんは救われている方なんですよね。もう一人、自民党から出ている武見敬三さんにいたっては「むしろ武見さんじゃないほうがいい」「武見さんは嫌いだけど、丸川さんは自分が投票しなくても勝手に通ると思うので」と医学部生にあるまじき返答をしていました。まあ医学部生が武見敬三さんをリスペクトしていたら知性を疑われても仕方のない局面ですから、アンケートのラップアップで「武見さんが好きです」と言ったら、翌週から授業で馬鹿にされる覚悟が必要なのかもしれません。

■大人同士の打算の果てに仲良く呉越同舟している

 その割に、大学生や若手社会人ならおのおのだいたい5%ずついるはずの公明党支持、共産党支持がほとんどいなかったのは印象的でした。確かにこちらも人前で三色旗ですレッズですというのは憚られることはあるのかもしれませんが、組織票に強いはずの政党の人たちはみんなどこに隠れているのでしょうか。

 私自身は、昔、通りかかった街頭演説で浜四津敏子さんが車のうえで大音響で絶叫しているのを聴いて耳がおかしくなり、それ以来あまり公明党は好きではなかったのですが、最近になって、公明党がいないと日本は駄目なんじゃないかと思うぐらいに感じるようになりました。どちらかというと独善的に暴走しがちな安倍政権にあって、自公連立の構造のお陰でうまく公明党がブレーキ役を果たして自民党をうまく牽制しているように思います。軽減税率以外は。

 むしろ、自民一色の政治になったら窒息しそうになるところを、公明党との連立であるという本来なら不倶戴天の敵であるはずの両党が大人同士の打算の果てに仲良く呉越同舟しておるあたりに平成後半の日本政治の奇妙な安定ぶりを感じずにはいられません。

 安倍ちゃんはその取り巻きも含めて安倍ちゃんなので、安保法制からカジノ法案まで、どこを切っても安倍ちゃんなわけでして、そのたびに公明党が振り回されて、支援組織の説得が大変そうなものばかり押し付けられている状態で困惑しているのがとてもよく分かります。この世で「アベ政治を許さない」と本気で思っているのは、野党の皆さんよりむしろ公明党支持者なんじゃないかと思うんですよね。

 また、自民党は自民党で何かをやろうとすると困った顔で難色を示す公明党が邪魔でしょうがなくて、でも公明党と喧嘩をすると包み紙のないエロ本状態になるこの政権がヤバいし、選挙でも激戦区は全敗することが分かっているから公明党を袖にできないわけですよね。

■誰の利害関係を代弁してくれる組織なのか

 逆に言えば、公明党が野党にいないので野党側がオール左翼と維新ぐらいしかまともなのがおらず、玉木雄一郎さんがこの前「国民民主党を支持してください」と駅前で絶叫してましたけど、そもそもお前らは誰を代表しているのかすらよく分からないんです。玉木さんがガンダムのパイロット、アムロ・レイのコスプレをしてジオンを倒すと息巻いてましたけど、あなたの面構えのほうがよほどギレン・ザビじゃないですか。泉健太さんあたりに「戦いは数だよ兄貴」とか言わせればいいんです。

 そもそも、政党というものは政策的な一致をしている集団であるだけでなく、誰かの代表であり、どこかの利害関係をきちんと国会にもっていきそこで堂々と権利権限の主張や法律とそれを支える予算、さらにはこの国のグランドデザインかくあるべしという議論をするべき場だと思うんですよ。

 立憲民主党といい国民民主党といい、彼らが具体的に誰の利害関係を代弁してくれる公党・組織なのかがよく分からないし、日本人に6割近くいる浮動票頼みと言ってもそいつらの7割は投票所に行かないから、日本の国政選挙ですら投票率5割ぐらいしかいかないんですよ(2013年参院選の投票率は52.6%)。

 よく「組織票が強い」と言われますけど、政党は誰かの利害や政策、思想を代弁しているから、それを支持している人たちが高い割合で投票所に行ってくれるという仕組みなわけです。

■「反安倍なら何でもいいのか」という話になってしまう

 それなのに、いまの政権を批判する勢力を糾合して統一戦線を張ろうにも、共産党と立憲民主党の共通の利害なんて「反自民」「反政権」「反安倍」ぐらいしかないから、選挙演説を聴いていても「安倍バーカ」ぐらいしか主張しないんです。「年金が」といったって、確かに年金の将来は不安だけれども、共産党が議席一杯取って政権狙うほうがよっぽど不安なので、共産党支持者かゴリゴリの反安倍の皆さんぐらいしか共産党には投票しなくなってしまうという。

 みんな、何となく安倍ちゃんじゃ不安だなと思うけど、野党の顔つき観てたら「野党のほうが不安だから、まあ安倍ちゃんでいいや」と思えてしまう。いや、不安だからこそ夢のあることを宣伝し、与党をひっくり返しに行くべきなんだけれども、じゃあいまの共産党・志位和夫さんを見て「おお、彼らなら私たち日本人を輝かしい未来へ導いてくれるのか」「私もそういう元首になら未来を託したい」と思えるのかどうか。

 そして、そういうレッズと一緒になって選挙を立憲民主党がやろうという話になれば、本来ならレッズに流れる票が立憲候補にくるわけですから多少は下駄を履くにしても、肝心の立憲民主党が好きな人は「共産党と一緒にならなければまともに選挙もできない政党に戻っちゃったのか」と醒めてしまって、政党支持率が上がらず追い風はビタイチ吹かないことになります。

 一人区であれば野党統一候補で取り組めば善戦するかも知れないけど、トータルで見れば「反安倍なら何でもいいのか」という話になってしまう。そういうマーケティングの弱さ、支持を強固にしてくれるはずの人たちの気持ちを敢えて踏みにじりながら進軍する立憲スタイルには驚きを禁じ得ません。

■本当の意味で革新的な手法と立場で漬物石を投じている

 山本太郎さんのれいわ新選組は、野党に本来求められているものをうまく吸い上げて、弱い人たちや、いまの社会で割を食って、両手いっぱいに不安と不満を抱えて暮らしている日本人をかき集めるマーケティングをしっかりとやっている。メディアでウケる候補者を選び出し、それらしいことを言い、何か新しいことをやってくれそうな気配はあったんです。普通の政党ではできない、しがらみがあって何も動かすことのできない仕組みに対して、本当の意味で革新的な手法と立場で漬物石を投じているのが山本太郎さんだと思うんですよ。

 ただ、惜しむらくは、一足飛びに上を狙い過ぎました。2億円を集めたとされる政党への寄付も、薄く広く候補者を立ててしまったばっかりにほとんどのれいわ新選組候補者は泡沫候補以上の善戦をするのは困難じゃないかと思います。

 逆に言えば、金だけなら幸福実現党のほうがよほど潤沢なわけでして、政党要件を狙う5人に辿り着くためには山本太郎さん筆頭に確実に勝てる候補者による得票を積み上げ、自民党には合流できないけど野党共闘とも距離を置かざるを得ない人たちと当選後ご一緒し、さらに上を目指していくほうが合理的だったろうと思います。

■自分が前に出る、という気持ちが強すぎる

 そして、山本太郎さんは頭を下げることのできない人だと思うんですよね。小沢一郎さんとの合流で懲りたのかもしれませんが、自分の政党、自分が前に出る、という気持ちが強すぎて、結局たいして知名度のある候補者を立てることができませんでした。まともな人ほど、山本太郎さんの下で働いたり、パーツになるのは嫌だと思うんですよね。そういう弱点もあるものだから、一足飛びに5人を当選させ国政に送り込んで政党要件を満たそうと、自らも比例3位に回るという賭けに出た。

 そういう博打、私は好きですよ。でもそれ、ある程度互角にいける確証があって初めて、支持者や組織が引き締まるものであって、このままいくと山本太郎さんも落選してしまいかねません。定数がひとつ増えた東京選挙区で山本太郎さん一人当選しても世の中は変えられない、だからお金を集め候補者を多く立て博打に挑むのは分かる。でもその命題への答えは、薄い戦力を分散させて全部寡兵で討ち死にさせることじゃなかったと思うんですよね。

■呂布が出てきて大暴れしているけど戦争は負け

 山本太郎さんには、次につながる選挙にしてほしいと願っています。何よりも、いまの日本の政治では野党が野党としてなかなか機能しない、彼らは誰のために戦い、誰を代表して、どういう政治を実現しようとしているのかを見失ってしまっているのもまた事実です。それを救えるぐらいに、政治的な面白さと強さを持ち合わせることのできる人物であることは確かですし、山本太郎さんを批判する人は全否定し、山本太郎さんを支持する人はすべてを受け入れるような、本当の意味で白黒つきやすい特性もまた、革新を担う革命家気質であることは間違いないと思うんですよ。

 ただなんつーか、ブレーンが悪いのか本人が気負い過ぎて前に出過ぎちゃってるのか、城から呂布が出てきて大暴れしているけど戦争は負け、みたいなところが何とももったいない。候補者にしても、誰が誰なんだかよく分からないあらびき団みたいな人たち率いてどうにかなるはずないじゃないですか。なんかこう、うまいこと彼が引き続き面白野党政治家として活躍できる日本であってほしいと思いつつ、さて選挙結果はどうなりますかね……。

(山本 一郎)

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