新聞オヤジ「うまいこと言ってやった感」の研究

新聞オヤジ「うまいこと言ってやった感」の研究

(c)杉山拓也/文藝春秋

 今回は“新聞文脈”について書いてみたい。「それってオヤジが発信してオヤジに響いているだけでは?」と思える言葉のつかい方が新聞にはよく登場するからだ。

 たとえば森友学園と加計学園をまとめて「“もり”“かけ”」とふつうに呼ばれていることがある。朝日新聞の短文コラム「素粒子」を見てほしい(5月29日)。

《安倍政権が戦後3位に。「もり」「かけ」にもめげず。だが慢心は支持を「ざる」に。「きつね」も「たぬき」もいる政界で。》

 うまいこと満開。最後は「きつね」と「たぬき」も出てトドメ。とりあえずこれをオヤジジャーナルの「うまいこと言ってやった語法」と呼びたいのだ。

■THIS IS 新聞オヤジ・ハイテンション

 さらに新聞がハイテンションになる時期がある。選挙と政局である。

 先日の都議選の翌日に、思わず「うわっ!」となった記事を紹介しよう。

「首相の求心力 低下 疑惑や不祥事『自滅』?豊田氏・萩生田氏・稲田氏・下村氏 」(朝日新聞・7月3日)

 注目は次の部分。

《閣僚経験者の一人は、不祥事や疑惑を引き起こした閣僚や政権幹部の名前を挙げながら都議選惨敗の要因を総括してみせた。「THIS IS?敗因。Tは豊田、Hは萩生田(はぎうだ)、Iは稲田、Sは下村」》

 出た、うまいこと言ってやった語法。

「THIS IS 敗因」は元閣僚の言葉だが、新聞も当然のように載せているのが読みどころ。まさにオヤジが発信し、オヤジが受信している構図。

■「三角大福」「ワンワンライス」「金竹小(コンチクショー)」

 この手の「ヒット作」をあげると、金丸信、竹下登、小沢一郎の頭文字をとって「金竹小(コンチクショー)」と呼んだ言葉か。もっと昔なら「三角大福」(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫)があった。やっぱり永田町発信。

 小沢一郎は細川政権時には、公明党書記長の市川雄一との仲を「一・一ライン」と呼ばれ、さらに民社党書記長の米沢隆をあわせて「ワンワンライス」とも呼ばれていた。目まいがする語法であるが、新聞側も「世の中にも響いている」という前提で報じているのがおかしかった。

 さて、先ほどの「THIS IS?敗因」という言葉遊び。よほど気に入ったのか、そのあと各紙に登場した。

「細田派 風当たり強く」(読売新聞・7月7日)

 豊田、萩生田、稲田、下村氏はいずれも細田派の所属なので、党内では都議選惨敗の責任を細田派に問う声が多いと報じる。そして、

《中谷元・前防衛相(谷垣グループ)は4氏のイニシャル(T、H、I、S)をもじって「THIS IS 大打撃」と表現した。》

 どうしてもその言葉を伝えたいっぽい。

■元防衛相の中谷元、渾身の「かきくけこ作文」

 中谷氏は「THIS IS 〜」がウケたのが気分良かったのか、今度はこんなことを言い始めた。

「中谷氏、政治家が聞くべき「かきくけこ」 政権に苦言」(朝日新聞DIGITAL・7月7日)

《耳を傾けるべき「かきくけこ」とは――。自民党の中谷元・前防衛相が7日、たとえ話で政治家の心得を披露した。家内の言うこと▽厳しい意見▽苦情▽見解を異にする人と続けた上で、安倍晋三首相が東京都議選の街頭演説で「やめろ」コールした聴衆を指さして言い放った「こんな人たち」で結んだ。》

「かきくけこ」の「こ」とは、安倍首相が言った「こんな人たち」。

「加計ありき」ならぬオチありき!

 そういえば、今村雅弘前復興相が失言で更迭されたあと、自民党の伊吹文明氏もこんなことを言っていた。

「政治家の発言、6つの『た』には注意せよ」(朝日新聞・4月28日)

《伊吹氏は、立場▽正しいこと▽多人数(たにんずう)▽旅先▽他人の批判▽たとえ話――の六つの「た」について気をつけるよう呼びかけた。伊吹氏は人によって正しさが異なることや、地方での応援演説で笑いをとりたくなることなどを指摘。「この六つをひと呼吸入れて考えれば、そうおかしなことは起こらない」と語った。》

 こんなおじさんがゴロゴロいる永田町。そしてその言葉を報じる新聞(熱心なのは朝日新聞のイメージがある)。

 うまい言葉合戦はいいから、政治に集中してください。

(プチ鹿島)

関連記事(外部サイト)