削らない、神経抜かない……「歯」に悩む人必読の“3大新常識”とは?

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 万人を悩ます歯のトラブル。どこの歯医者に行けばいいか迷うし、おカネもかかるし、何より痛い……。しかし医療は日進月歩、歯の常識も日々変わりつつある。削らない治療法に理想の歯磨き法、いい歯科医の見つけ方まで、5人の専門家があなたの疑問に答える!

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■「削らない虫歯治療」がある

 歯医者に行くのが大嫌い、という人は多い。キーンという高い音が響く診察台で、恐怖と痛みに耐えながら、ドリルで歯を削られた辛い記憶だけが残る。

 だが、それも昔の話。(1)最新の虫歯(う蝕)治療は、「できるだけ歯を削らない」「できるだけ神経も抜かない」という考え方に変わっているのだ。

「自前の歯を少しでも多く残すことは、高齢になったとき、健康的な生活の維持に大きく寄与します。『削らないこと』が『歯を残すこと』につながるのです」

 こう語るのは、神奈川歯科大学大学院歯学研究科の山本龍生教授だ。

「これまでは、どんなに小さな虫歯であってもその部分を削って除去し、詰め物をするという治療が行われてきました。進行した虫歯であれば、より大きな詰め物をしたり、歯全体にクラウンという被せ物をする治療が行われる。ですが、こうした虫歯治療こそが、歯を失う大きな要因になっているのです」

 人間の歯は、外側が硬いエナメル質に覆われているが、ここを一度でも削ると元に戻らない。しかも、削ることで周囲のエナメル質に目に見えないクラック(ひび)が入り、そこから虫歯菌が侵入する可能性が高まってしまうという。

「さらに、詰め物は接着剤で歯に接合されていますが、経年により接着剤が少しずつ溶け出し、わずかな隙間ができてしまう。そこには歯ブラシが届かないので、細菌の塊であるプラーク(歯垢)が溜まり、虫歯菌が侵入して再び虫歯になるのです」(同前)

 再発した虫歯の治療のために詰め物を外し、さらに大きく削って大きな詰め物をしなければならない。まさに悪循環だ。

■なぜ「神経を抜く」のは避けたほうがよいのか

 2回目、3回目の虫歯は、神経に達してしまうことも多い。その場合「神経を抜く」つまり歯から神経を取り除く治療が必要となる。

「神経を取り除いた歯は栄養が供給されず、枯れ木のような状態。非常に割れやすくなります。破折を防ぐためにクラウンを被せますが、その下がまた虫歯になったり、歯の根っこの部分が炎症を起こして痛みが出たり膿が溜まる『根尖病変』が発生します。最終的には抜歯が避けられない状態になってしまうのです」(同前)

 つまり、神経を抜くことで歯にトドメをさしてしまう。神経を抜くのは極力避けるべき事態だ。

 ささいな虫歯から始まる悪循環を防ぐために、今注目を浴びている「削らない虫歯治療」。天野歯科医院(東京都)の天野聖志院長が解説する。

「虫歯の進行度はC1からC4まで4段階に分かれています。初期段階のC1は虫歯がまだエナメル質にとどまっている状態。これにヒールオゾンと呼ばれる気体を60秒程度吹き付けて虫歯を殺菌します。塩素の7倍ともいわれる高い殺菌作用があり、これだけで虫歯は除去され、詰め物も必要ありません」

 C2の場合、虫歯の部分だけが軟らかくなるカリソルブという薬剤を塗布し、専用の器具を使って除去する。どちらも治療は1日で終了するという。

 ネックになるのが費用だ。保険適用はされず、自費診療となる。歯科医院にもよるが、ヒールオゾンは歯1本あたり1万円程度。カリソルブは、詰め物の費用は別にして1本1万円〜3万円程度だ。

 確かに費用はかかるが、なにより歯を削らずに済み、虫歯再発のリスクも格段に下がるという。

 すでに削る治療を行い、銀歯などの詰め物が入っている場合はどうするか。

「歯科医院で詰め物の下に虫歯ができていないか検査してください。もし虫歯があれば早めの対処が必要です。詰め物やクラウンを外す際、どうしても歯を削ることになりますが、拡大率が30倍程度の高性能マイクロスコープを使えば、ほとんど削らずに外すことも可能です」(同前)

 山本教授が指摘する。

「(2)歯の本数が少ないほど認知症になるリスクが高くなることもわかっています。そのためにもできるだけ歯を削らないこと。神経も残せる可能性があれば、できるだけ残すべきです。1本歯を失うと、周囲の歯も影響を受けます。いかに最初の1本を失うのを先送りできるかが重要なのです」

 実は、虫歯以上に歯を失う原因となるのが歯周病だ。抜歯原因調査によれば、虫歯の29%に対し、歯周病は37%にのぼる。

 最近は、歯周病と認知症や糖尿病、脳血管障害、心筋梗塞、動脈硬化など全身の病気との関連も指摘されている。口の中の歯周病菌が血流に乗り、何らかの原因となっている可能性があるという。

 そもそも歯周病とはどのような疾患か。

 歯周病は歯肉炎と歯周炎の総称。最初になるのが歯肉炎だ。歯と歯茎の間には1、2ミリ程度の隙間があるが、これが4ミリ以上に深くなった歯周ポケットにプラークが溜まって炎症が起き、歯茎が赤く腫れる。歯を磨いた際に出血も見られる。

「腫れが広がり、炎症が進むことで、歯槽骨と呼ばれる歯を支える骨が溶け始めます。それによって歯茎が痩せて下がり、歯根が見えてくる。この状態が歯周炎です。さらに進行すると歯槽骨がどんどん失われ、歯が根元からグラグラになり、やがて抜けてしまう」(山本教授)

■歯周病をブラッシングで撃退

 歯周病の兆候は、セルフチェックリストを参照していただきたい。慢性的に痛みなく進行するが、(3)歯肉炎の状態であれば、歯茎ブラッシングで出血も止まり、歯茎の腫れも改善するという。

「歯茎をブラッシングすると、マッサージのような効果で歯茎の中の細胞が刺激されます。それによって新しい細胞にどんどん入れ替わっていき、炎症を抑えるようになります。ですからブラッシング時に歯茎から出血しても、そこでやめてはいけません。最初はより出血しますが、根気よくブラッシングを続けていけば、1、2週間程度で改善するはずです」(同前)

 具体的には歯茎1カ所につき10秒程度ブラッシング。電動歯ブラシなら5秒程度。歯磨き粉なしで行い、その後、歯磨き粉をつけて普通に歯磨きをする。

 強く力を入れたり、横方向に歯ブラシを大きく動かすとかえって歯茎を痛めるので、歯間を意識して小刻みに動かすこと。これを1日1回。歯周炎の状態になっていても歯茎の炎症には効果があり、その場合は1日2回行う。

 ただ、歯ブラシだけでは歯間に溜まったプラークは落とせない。歯間ブラシやデンタルフロスを使っての掃除も併せて行おう。

 歯周病予防の液体歯磨きを使う人も増えているが、抗菌物質による掃除より、物理的な掃除の方がはるかに効果があるという。

 歯周病菌は口臭の原因にもなる。日々のケアがなにより大切だ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年6月27日号)

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