「ATM婚」と蔑まれて「お小遣い2万円倶楽部」入りする残念な男性の結婚事情

「ATM婚」と蔑まれて「お小遣い2万円倶楽部」入りする残念な男性の結婚事情

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 婚活で悩む人、夫婦生活で困る人、さまざまいるのが社会であり人生だと思うんですよね。

 都市部を中心に「専業主婦になりたい女性」が結婚を機に寿退社するという事案が減ったよねえという話を企業研修の場でよくするんですが、男女同権社会と言われてもそもそもの男性と女性との性別による機能差はあるので「目の前にある問題をどういう優先順位で解決しようとするのか」はとても大事なことです。

■老害の言い草が通用しない時代

 何より、企業の人事からすると少子高齢化になり働き手不足で売り手市場になってしまったのが大きい。昔のようにうっかり「マイホームを建てた30代男性は銀行で住宅ローン組んでるだろうから、会社を辞めないだろう」と見込んで地方都市に転勤を命じるとあっさり同業種に転職していってしまったり、結婚したから身が固まって良かったねと思ったら男性でも育休を取る流れになって堂々と育休申請されて企業の側も困ったりという愚痴はよく出ます。

 でも、それはいままでみんな働く側が我慢していたからであって、会社のある種の見込み通り社員が動かなくなったからといって「最近の若い者は」と言われても、「それはお前が老害なだけだろ」と申し上げざるを得ないケースがまた多くなっております。

 実際、大手企業で社員たちの結婚や出産をどう扱うかというのはセクハラ・パワハラに次いで管理職の面々の困惑を呼び起こす事象になっておりまして、昔は上司は上司ヅラして結婚式に出てスピーチをやり、子どもが生まれたら何万円か出産祝いを送りつけ数日の休暇申請にハンコを捺すだけで良かった時代でありました。ところが、残業はやめろ、生産性は上げろという社会の要請が強くなると、いままでのような組織対応ではダメになってしまいました。

■高収入なのにお小遣い2万円のATM婚

 結婚する側も大変で、夫婦生活をこれから送るための品定め期間としての恋愛、みたいな構造がより顕著になり、収入はどうか、価値観は合うか、優しくて暴力を振るわないかといったチェックポイントをこなせる人しか「恋愛の対象にならない」うえに稼いでいれば稼いでいるで奥さんに家庭内のおさいふ決裁権を取られ、ATM婚の果てにお小遣い2万円倶楽部に陥っている高収入野郎が後を絶たないのも実態としてあります。

 高収入なのにお小遣い2万円というのはもちろん対外的に「ウチは奥さんを愛してますよ」というポーズなのであって、実際にはパパ活に精を出したり趣味に没頭したりする人はたくさんおられるわけですけれども、中には本当に猛妻を娶ってしまい、日常的に行動が監視下に置かれ文字通りお小遣い月2万円で細々と生きることを余儀なくされている戦友もいます。大変なことだと思うよ。

 別に結婚相手の財布だけをアテにして結婚したわけではないけれど、結婚してみたら甲斐性がなくて「こんなはずはなかった」とパートに出ざるを得なくなるママ友の愚痴を聞くと「結婚前にしっかりと話をしておけば」と思います。ただ、家計が厳しいから奥さんが亭主の小遣いを厳しく制限して、亭主がやりたいこともできなくてしょぼくれているのを見ると、逆にお前も「結婚前にしっかり話をしておけば」と思うわけですね。

■世帯年収500万のボーダーライン

 何年かに一度内閣府で公表される「結婚・家族形成に関する意識調査」では、いまどきの恋愛・結婚事情に関する調査報告書が面白くて、時折思い出してはしげしげと拝読するんですけれども、その中で「結婚生活に必要な夫婦の年収」とかいう項目があり、まあみんなだいたい世帯年収で500万ぐらいあれば良いよねという回答をしています。

 逆に言えば、夫の収入が低ければ妻も働きに出て2馬力に、旦那の収入が概ね500万を大きく超えていけば妻は家庭に入って子育てや介護に、という流れが出来上がっている感じでしょうか。

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h26/zentai-pdf/index.html

15.結婚生活に必要な夫婦の年収(税込)Q32
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h26/zentai-pdf/pdf/2-2-2-3.pdf

 実際、収入が多ければ結婚できる確率は上がり、生める子どもの数も増えるという統計も出ているので、単純に結婚できないのも子どもを儲けられないのも貧困が悪いという結論に達します。貧乏人は結婚もできないのかという話はよく出ますが、実際本当に所得が低ければ結婚できないんですよね。

 貧乏人を差別するのでもなんでもなく、結婚してから貧乏な暮らしをしたくないと思う女性が多いのは仕方のないことですし、それを「いや、男女同権社会になったんだから、お前も働きに出ろよww」とかいう同調圧力をかけるのも違うと思うんです。貧乏だけど幸せな暮らしができればそれに越したことはないけれど、お金がないのはやっぱりみじめだと思う人ほど、貧乏な伴侶を持ちたくないというのは生き物、せいぶつとしての摂理だとも感じます。

■女性誌のアンケートに興味深い結果が

 また、女性誌「CanCam」でもアンケート企画をやっていました。これがまた記事冒頭から「高収入の男性と結婚したい」とかフルスイングな内容になっていて、おまえの脳みそはクリームバターか何かでできているのか鏡見ろ馬鹿と言いたい気持ちをぐっとこらえて読み進めると、実に興味深いことが書いてあります。

結婚相手に「高収入」を望む女性は約7割!だけど結婚条件の1位は…
https://cancam.jp/archives/582200

「結婚するならどっちを選ぶ?」とかいうカレー味のうんこのような比較があるんですが、ここでは高収入な人よりも価値観の合う人や気遣いのできる人を選ぶ、という女性の回答が比較されています。ああ、金があればそれでいいとかいう話ではなかったのか。鏡見ろとか言ってしまい申し訳ございませんでした。

 さらに「『この人と結婚したいな』と思った男性が高収入ではなかった場合どうしますか?」などと内角高めのボールも当記事に放り込まれていますが、男性目線で申しますと仕事で冴えないイケメンがモテ囃されるのは20代までで、30代を超えると平等に時は流れて、あれだけかっこよかった連中が40代にはただの若作りハゲ色白デブの低収入野郎になることだってあるんだぞ、現実を見ろお前ら。

 将来等しく中年になり、ジジイになる前提であるならば、高給取りと結婚したほうがストレスも少ないと言われればそうなのかもしれません。高給取りは高給取りで望みが高くて、結構みんな浮気してバンバン離婚しているのが気になりますが。

「ATMにされたくない」婚活市場から撤退する男性たち|すもも @sumomodane|note(ノート)
https://note.mu/sumomodane/n/n8b4410951f81

■結局男は働き、女は家庭に

 そう考えると、社会風土が大きく変わらない限り、男性には引き続き家庭内での稼ぎ頭として、大黒柱としての機能を期待されていて、出産や介護、傷病となると収入の少ない女性の側がキャリアを捨てて産休や育休、介護にと時間を遣わなければならなくなっていく構造にはあまり変わりがないように思います。

 女性に企業幹部や取締役が少ないのも、女性が国会議員にならないのも、都市部に住むインテリが一生懸命「女性に社会進出を!」と言ったり安倍晋三さんが「女性はもっと輝けよw」と煽ったりしたところでミリの単位でしか解決しないんじゃないのかなあと思います。

 さらに先日、大正大学の田中俊之准教授が「日本人は家父長制のお父さんがすべてを支配するような家族形態以外のものが正直よく分かっていない」と正論をぶっ放して、非日常である恋愛と、日常生活そのものである結婚とを比べてはならないと解説しておったわけです。

■シングルマザーも実家太けりゃ問題なし

 ということは、非日常の中で「より良い伴侶を選ぶ」ことを考えて、女性は自らの価値観で「自分よりも高い収入をもっている男性と結婚したい」なぜならば「結婚した後でお金に困る生活をしたくないから」という内閣府の調査結果は、皮肉にも古い日本の価値観をストレートに体現することになります。夫のほうが収入が多いことを期待し、それは経済は夫、家庭は妻という従来の日本文化の踏襲以外の生活を想像していないことになるので。

“恋愛結婚というパッケージ”が日本の夫婦をおかしくする<最終回>【#FocusOn】
https://wome.jp/articles/2420

 身の回りのシングルマザーで、どちらかというと経済的に楽な人たちというのは、実家が太い(なぜか不動産を持ってたりする)とかしっかりとした専門を持っていて、高給取りで子ども2人ぐらいなら余裕で育てられるという前提になっている。もちろん、稼ぎ頭の夫がいなければ貧困まっしぐらのシングルマザーも少なくないのですけど、同じシングルでも同じように貧困であり可哀想という枠でくくるのはむつかしい時代になっていると思うんですよね。

 結婚とお金の問題は切っても切れないものですが、似た価値観で幸せに末永く暮らせる人を探すことのむつかしさってのは意外に針の穴を通すぐらいのものなんだろうと漠然と感じます。そのうち、ATM男解放運動でも始まるんじゃないでしょうか。

(山本 一郎)

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