韓国レーダー照射事件、中国の海洋進出……数多の危機を乗り越えた前自衛隊トップの「リーダー論」

韓国レーダー照射事件、中国の海洋進出……数多の危機を乗り越えた前自衛隊トップの「リーダー論」

アメリカのダンフォード統合参謀本部長と握手する河野克俊氏 ©共同通信社

「自衛隊のトップとして、私が肝に銘じていたことがあります。それは一度ミッションが動き出したら、中央にいる私が細かい干渉を極力しないようにすること。現場のニーズは現場がわかっている。もちろん方向が違っていれば指導しますが、現地部隊を信頼し任せられるものは任せる。私は、これがリーダーの条件ではないかと思っています」

 2014年10月から2019年4月1日まで、自衛隊制服組のトップである統合幕僚長を務めた河野克俊氏(64)。安倍晋三首相の信頼は厚く、3度の定年延長を経て、今春退官した。

 そんな河野氏が、 「文藝春秋」8月号 で、40年以上にわたる自衛官としての歩みと今後の自衛隊について語った。北朝鮮などの近隣諸国の動向を含め常に緊張感を持った対応を迫られる中、自衛隊22万人の先頭に立ってきた指揮官は、「人の上に立つべき者の資質」について次のように語る。

■役職があがったら、細部に拘泥してはいけない

「階級が低いうちは1つの仕事を徹底的に極めることが求められますが、徐々に役職があがり、任される範囲が広くなってくると、細部に拘泥してはいけない。『ここは』という場面は自分で判断するが、それ以外は任せる。細部まですべてを見ようとすると、細部に足を引っ張られて大事を見失う可能性があるからです。リーダーは何が本質かを見極めることが求められます」

 では、その本質を見極めるにはどうすればいいのか。

■『坂の上の雲』から学んだこと

 河野氏は、日ごろの読書体験が重要だと説く。

「いろんな種類の本を読むことが大事だと、私は部下にもよく伝えていました。私自身は週刊誌、月刊誌、小説、ノンフィクション、本ならなんでも読んでいました。特に昔から近現代史が好きで『坂の上の雲』が愛読書です。初めて読んだのは防衛大学校時代で、明治人の生き方に共感を覚え、自衛官の目標を見つけた気がしました。

 階級があがればあがるほど高度な判断を求められるようになります。その時に、本を読んでいれば立派な判断が必ずできる、とはいいません。しかし、本を読んだ積み重ねがあれば、健全な判断ができる可能性は高くなる、とは思うのです。要は本を通じて常識を身につけることが大切だと思います」

 元自衛隊トップによる“多読”のすすめ。「忙しいからこそじっくりと本を読んで常識を身につけよ」という河野氏の言葉には、自衛隊に限らず組織運営の要諦が詰まっているのではないか。

 その他、在任時に最も緊迫した2017年の北朝鮮を巡る情勢、昨年末に発生した韓国の自衛隊機に対するレーダー照射問題、中国の海洋進出に対する自衛隊の立場など、河野氏のインタビュー「『米朝危機』自衛隊が最も緊迫した瞬間」は、 「文藝春秋」8月号 に全文掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年8月号)

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