マンゴー狂いの日本人4人が、台湾・玉井の農家で“わんこマンゴー”した話

マンゴー狂いの日本人4人が、台湾・玉井の農家で“わんこマンゴー”した話

マンゴーの中でも甘みが強い愛文マンゴー。完熟したマンゴーは口の中で一気にとろけて至福!

 マンゴー農園でマンゴー狩りして、腹いっぱいマンゴー食べたいんじゃー!

 マンゴー好きなら一度は夢見ることだろう。台湾南部、台南駅からバスで70分ほど東に移動したところに、台湾マンゴーを代表する愛文マンゴー(アップルマンゴー)の産地として有名な玉井という村がある。

 その村の農園でマンゴー狩りができないかと計画し始めたのが4年前の2015年。それから1年後、日本人が世界で一番苦労せずに海外旅行ができるはずの台湾で、面倒な思いをしてマンゴーにありついた話である。

■マンゴー狩りが見つからない

 当然ながら外国の農家にツテなどあるはずもないので、まずはネット検索から始める。日本語で「マンゴー狩り 玉井」とネット検索してみると数件ヒットするが、どうやら1回だけ開催した実験的なツアーであって定常モノではないようだ。

 英語や北京語で検索しても、いまいち決め手になる検索結果は出てこない。一般的に海外では日本のような観光農園はあまり見られないが、台湾では桃や葡萄などのフルーツ狩りが楽しめる。それにも関わらず、台湾で一番人気のマンゴーだけが見つからない理由は、後日農園で知ることになる。

 東京の台湾観光協会や台湾の観光案内所で聞いて回っては知らぬ存ぜぬの回答しか得られず心をボキボキ折られたが、台南の観光案内所で入手した台南旅行社リスト10社に片っ端から連絡したところ、1社だけ反応があった。

 だが話を聞くと日本人が想像するフルーツ狩りのようなツアー商品があるわけではなく、「マンゴー農園には連れて行くけど、マンゴーを買うだけ。マンゴー狩りができるかは分からない。」と微妙な回答。農園に行ってしまえば何とかなるだろうと、藁にもすがる思いでその旅行社にお願いし、マンゴー狂いの友人3名を誘って台湾行きを決断した。

 しかし旅行社が決まってホッとしたのもつかの間、マンゴー不作のニュースが飛び込んできた。異常気象により生産量が昨年の2〜3割になるらしい。日本のニュースでも取沙汰されるくらいだから、よほどの規模だろう。マンゴーの里・玉井に行ってマンゴーが全く見当たらない可能性もあるのでは?と不安がよぎる。

 更にフライト当日、台湾に台風が直撃してしまった。私が搭乗した成田〜高雄便は1時間の遅延で済んだが、友人2名が乗るはずだった羽田〜台北便の欠航が決定。ここにきて2名脱落か……と落胆していたところ、欠航を食らった友人達が「何がなんでもマンゴー狩ってやるわ!」と叫びながら、直前で値上がった8時間後の成田〜台北便を勢いで購入。台風で運休した高鐵(新幹線)に代わり深夜バスを乗り継いで集合場所の台南駅にゲッソリした顔で現れた。マンゴー食べたさに旅行を企画した私がドン引きするほどのマンゴー愛である。

■赤い愛文マンゴー、黄色い金煌マンゴー

 玉井は「マンゴーの故郷」と言われるマンゴーの一大産地だ。一番人気の愛文マンゴー、実は台湾の在来種ではなく、台湾マンゴーの父と呼ばれる玉井の農家・鄭罕池さんが1962年にアメリカのフロリダ州からアップルマンゴーの苗木100本を持ち込んで、台湾での栽培方法を確立し普及させたものである。

 玉井に到着後、まずは台湾最大のマンゴー市場である玉井青果市場へと向かった。不作とは思えないほど右も左もマンゴーだらけ。赤い愛文マンゴー、黄色い金煌マンゴー、緑色の烏香マンゴーなど、様々な種類のマンゴーが並び、近郊から車で来た客が籠ごと購入してゆく。籠一つで60円〜2,000円と品質や種類によりピンキリだが、日本の販売価格と比較するとどれも爆安だ。

 ちなみに玉井には2018年に世界最大のマンゴーかき氷にチャレンジし見事成功したギネス世界記録がある。3,333個の愛文マンゴーを使い、高さ1.45メートル、重さ1,554キロの超巨大かき氷が制作された。

■マンゴー農園で無限マンゴー

 いよいよ待ちに待ったマンゴー農園へ向かう。ガイドが運転する車でのどかな農村を進むこと20分、着いたのは観光農園ではないごく一般の農園だった。外国人がいきなり訪れても大丈夫なのかな?と思った瞬間、倉庫からマンゴー農家さんが満面の笑みで迎えてくれた。

 こちらのマンゴー農園では全てお母さんが栽培している。お父さんと息子さん2名は会社勤めのサラリーマンをしており、土日にお母さんの農園を手伝っているとのこと。長男のホウキン君は日本での留学経験があり日本語が話せるため、私たちとお母さんの間に立って通訳をしてくれた。

 以前は農園で主にグアバを育てていたが、8年前にマンゴーにシフトした。「どうして?」と聞くと「食べたかったから!」。食べたいから作ると気軽に言えるほどマンゴー栽培は容易ではないはずだ。気温も湿度も耐えがたいほど高い玉井で、毎日休むことなく早朝4時から手間暇かけて大事に育て上げる。それをサラリとこなすお母さんがカッコいい。

 農家さんと一通り挨拶が済むと、お母さんは冷蔵庫からキンキンに冷えた完熟巨大愛文マンゴーを山ほど出して、手慣れた手つきでカットしたマンゴーを私たちに渡してきた。美味しそうなマンゴーを前にニヤついてしまう。早速マンゴーにむしゃぶりついたその瞬間、皆の動きが止まった。

 う……美味すぎるっ!!

 最高の状態まで真っ赤に熟れたマンゴーの強烈な甘さ、繊維を感じさせず一瞬でとろりと溶けてしまう果肉、舌の上に広がる甘美で芳醇な香り、かぶりつくと泉のように溢れて止まらない果汁。これぞ産地で味わう醍醐味。スーパーで売ってるマンゴーとはまるで別物である。もはや芸術品の域に達していると言っても過言ではない。

『ミスター味っ子』の味皇ばりに口から怪光線を出して大絶賛したいのは山々だが、我々からは「ぼぇー」「ふげぇー」「あ゛ー」と、ものすごい頭悪そうな音しか出ない。たぶん上等なマンゴーには言語野を一時的に破壊する謎成分が混ざっているに違いない。美味しいお肉やお寿司もきっとそれ。

 放心状態になった我々に、お母さんはわんこそばのようにわんこマンゴーを渡してくる。「腹いっぱいマンゴー食べたいんじゃー!」と思ってはいたが、本当にマンゴーで腹を満たせるとは思ってもみなかった。しかも台湾最高峰の愛文マンゴーで。

 マンゴーを満腹になるまで食べると、腹がぷわーっと変な膨らみ方をする。膨らみ切った腹をお母さんに「2人妊娠してるわよー!」と笑われながら、更に3人目のマンゴーを与え続けられる。なんて贅沢な苦しみだろう。「お母さ……ちょま! これ以上は無理!」と全員がギブアップすると、やっとマンゴーを差し出す手が止まった。マンゴー農家の迎撃ぱねぇ。

■“マンゴー狩り”が存在しない真相

 無限マンゴーが落ち着いたところで、次はマンゴー農園を案内してくれた。そこで私たちは、なぜ台湾でマンゴー狩りが見つからなかったのか一目で理解する。

 畑に出ると、マンゴーが紙で包まれた風景が広がっていた。台湾マンゴーの父・鄭罕池さんが台湾でアップルマンゴーの栽培を成功させた秘訣は、この紙袋で包む手法である。紙袋越しにどのマンゴーが熟しているのかなんて素人目には分からない。そりゃあ観光農園としてのマンゴー狩りが成立しないわけだ。

 しかしプロの目には一目瞭然。お母さんは紙袋越しに薄っすら見える色で熟れ具合を判断し、紙袋をつけたままサクサク?(も)いでいく。

 別れ際、お母さんとお父さん、ホウキン君、お姉ちゃん、弟君の一家総出で見送ってくれた。突然訪れた見ず知らずの外国人に「また来てね!」と言ってくれる。なんて懐の広い人たちなんだろう。ここに至るまでの苦労など、皆さんのおかげですっかり打ち消された。連絡先を交換し、マンゴー汁でベッタベタになった顔で「来年も来るねー!」と手を振った。

■今年も玉井を再訪してきた

 マンゴー農家さんに出会ってから今年で3年が経った。「また来てね!」のお言葉に甘えて、あれから毎年日本のお土産を持って玉井を訪れるようになった。善化駅までホウキン君がお迎えに来てくれて、農園に着くとお母さんが両手を広げて「美和ー!」と呼んでくれる。驚いたことにお母さんは年々日本語ボキャブラリーを増やしてくれている。

 昨年からはご自宅に泊まらせてもらうことになり、家族ぐるみで親密な付き合いをさせてもらえている。私たちばかり甘やかしてもらっているので、ぜひ日本にも来てもらって大接待をさせてほしい。

 短期海外旅行を繰り返していると渡航先の住民との関わりが薄くなりがちだが、稀に今回のような長い付き合いになる出会いがあるから、旅はやめられないんだ。

 お母さん、ホウキン君、家族のみんな、また来年の夏に会おう!

<スケジュール>

■初日(金)

会社から成田空港直行

20:25 NRT - 23:30 KHH / バニラエア JW125

高雄泊

■2日目(土)

07:00高雄駅 - 07:31 台南駅 / 台鐵自強号

玉井近郊ツアー(マンゴー狩り含む)

18:33 台南駅 - 20:15?台中駅 / 台鐵自強号

観光:逢甲夜市

台中泊

■3日目(日)

10:25台中駅 → 11:20左営駅 / 高鐡

16:40 KHH - 21:20 NRT / バニラエア JW124

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<費用>

計35,000円

航空券代 LCCセール価格16,000円

ホステル2泊 3,000円

玉井近郊ツアー代(昼食込) 6,000円

その他(飲食・移動・お土産) 10,000円程度

 台湾は上記のような有休要らずのスケジュールでも十分楽しめる。日本〜台湾間はLCC激戦区で、格安航空券を入手しやすく、「ちょっと台湾まで小籠包食べてくるわ」ができてしまう。遊びのための休みなんて取れないよ、と仰るサラリーマンにうってつけの渡航先と言える。土日で済ませられるので、会社に土産を買う気遣いも不要だ。フライト片道5時間以内を目途に、ソウル、釜山、ハルビン、天津、上海、香港、マニラ、セブ、ウラジオストクは格安航空券が入手しやすく週末旅行先にオススメ。

(多田 美和)

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