稲田朋美と松居一代とコンプレックスと

稲田朋美と松居一代とコンプレックスと

(c)時事通信社

 週刊誌の中吊りの、右端にどーんと載る記事を右トップ、左端のそれを左トップと呼ぶ。いわばその号の目玉である。今週の週刊文春では、右トップを網タイツの女王・稲田朋美、左トップを黒Tシャツの女王・松居一代が飾っている。

 右トップのタイトルは「稲田朋美防衛相の本性」。安倍首相の寵愛もあって、異例のスピード出世を果たし、次期首相の呼び声さえもあったのが、ここにきて失点が続き、そのありさまから「産経まで見放した“えこひいきの女王”」とのコピーがつく。

 急失速の要因のひとつに、南スーダンでのPKO活動の日報問題がある。陸上自衛隊内で破棄されたはずの日報データが見つかりながらも非公表とされた経緯について、防衛省幹部からその報告を受けていたという疑惑だ。「報告を受け、隠蔽を了承することはない」と否定するも、文春発売翌日の28日になって、辞任にいたる。

 そもそも稲田朋美が防衛大臣になったのは、「今のうちに経験を」との首相の意向によるところであった。一方で記事には、自民党幹部のコメントで「門外漢の稲田氏を重要ポストである防衛相に任命したことが大きな間違いだったのです」とある。

■「防衛官僚覆面座談会」で語られたこと

 ここで注目なのがこの記事に続く「防衛官僚覆面座談会」にある、昨年、戦没者追悼式の欠席を辻元清美に追及されて涙ぐんだ件についての暴露話である。

「実は、あの話は自民党の元防衛大臣が民進党に持ち込んだそうです。自民党の防衛族は稲田さんに厳しい」

 舅の死に「やっとくたばったか、クソじじい」と言い放ち、位牌を紙袋に入れて放置してしまう松居一代とは反対に、なんだか、小姑たちにいじわるされるお嫁さんみたいである。

 そう思えば、稲田朋美がいたいけに見えてきやしないか。

■ポケットウイスキーを買うなんて、好感が持てるじゃないか

 左トップの「松居一代『汚れたカネ』を暴く」によれば、総資産は三十億円前後。「化粧品を買う余裕もない」などブログで窮状を訴える松居一代であるが、実際のところは大金持ちだ。いっぽうの稲田朋美の総資産は夫婦で約十億円にのぼるという。とはいえ、松居一代にくらべれば慎ましやかである。

 また、「汚れたカネ」には松居一代の元スタッフによる、領収書の偽造・改竄の告発もある。なんでも「冠婚葬祭の連絡が来れば、実際には行っていないのに香典や祝儀を経費として計上したこともあったようです」。事実ならば脱税である。

 いっぽう、「稲田朋美防衛相の本性」はどうか。こちらにも冠婚葬祭にまつわる話が載っている。なんでも<宮崎・金子両議員結婚祝儀>を政治資金として計上。しかも「割り切れて、縁起が悪い」とされる二万円を支出したとある。その後の宮崎謙介・金子恵美夫妻を思えば、ちょっと笑ってしまう。

「黒いTシャツをコンビニで八百六十円で買った」という松居一代に対して、稲田朋美はどうか。文春の情報公開請求により、大阪市内のコンビニで「サントリー角瓶ポケット瓶180ml」や「セブンプレミアムくんさき30g」などを組織活動費名で購入したことが明らかになっている。ポケットウイスキーを買うなんて、昭和のおじさんぽくて、好感がもてるじゃないか。フランス書院文庫も買っていれば満点だ。

 おまけに松居一代は夫と不和であるが、稲田朋美はといえば、あれやこれやの問題追及に「なんでこんなに怒られるんやろ。まぁ旦那が慰めてくれるわ」とこぼしたと記事にある。ひと前でこんなことを言うのは、少し気持ち悪い気もするが、夫婦仲がいいのはいいことだ。

■松居一代記事に掲載された広告に注目してみる

 などという褒め殺しはさておき、稲田朋美は防衛大臣を辞任する。前述の覆面座談会によれば、省内には「トップは抑制的な考えを持った人の方が良い」という考え方があるという。タカ派だから防衛大臣、そんな安直さがまかり通った、愛国バブルの終わりを告げるかのような辞任劇である。

 ところで「松居一代『汚れたカネ』を暴く」の記事の広告欄には武田砂鉄の新刊『コンプレックス文化論』の書籍広告が載る。天然パーマ、背が低い、下戸、ハゲなどのコンプレックスを突き詰め、それらと向き合う人々を書いた本だ。夫・船越英一郎を「ハゲ」「ヅラ」「インポ」などとITを駆使して罵る松居一代の記事にこの広告をマッチングさせるとはいいセンスである。

 なお、稲田朋美のメガネは伊達メガネ。自らが広告塔として地元・福井県の特産品であるメガネを宣伝するためだという。ひょっとしたら、なんらかのコンプレックスからなのかもしれないが。

(urbansea)

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