歯の激痛!「虫歯ではありません」検査しても原因不明の歯痛を見極める”8つのポイント”

「歯痛」見極める8つのポイントを解説 「心の悩みの有無を確認する」など

記事まとめ

  • 歯が痛むけれど虫歯ではなく、X線検査をしても異常は見当たらないケースがあるという
  • ストレスから歯の痛みを感じている人には、抗うつ剤が効果を示す場合もあるとか
  • 「歯痛」を見極める8つのポイントについて、クリニックの院長が解説している

歯の激痛!「虫歯ではありません」検査しても原因不明の歯痛を見極める”8つのポイント”

歯の激痛!「虫歯ではありません」検査しても原因不明の歯痛を見極める”8つのポイント”

©iStock.com

 以前小欄で、「 歯痛だと思っていたら心筋梗塞だった 」という記事を書きました。歯の痛みを感じる神経と心臓の痛みを感じる神経が、脊髄のところで合流するため、まれに脳が勘違いをして、心臓の異常を歯の痛みとして表現してしまうことがある――という内容の記事です。

 今回も似た話ですが、でもちょっと違います。「歯にも心臓にも原因はないけれど、やっぱり歯が痛む」という症状。原因は分からなくても、ちゃんと診断名はあります。「非定型歯痛」というこの病気、やはり精神的なストレスが関与しているようです。

■「歯が痛いのに異常なし」X線検査をしても見つからない原因

 今回取り上げる「非定型歯痛」という病気には、「特発性歯痛」という別名がある。

 この「特発性」という言葉、あまり一般的ではないし、日常生活で使われることはまずない。

 しかし、医療の世界ではしばしば用いられる。「特発性高血圧」「特発性浮腫」「特発性肺線維症」などなど……。

 特発性(とくはつせい)とは「原因が分からない」という意味。今回のテーマである非定型歯痛は、まさに原因不明の歯の痛みだ。

 この病気になると、最初は「虫歯だ!」と考える。実際に歯が痛むのだから当然だ。

 そこで歯医者さんに行って調べてもらうのだが、虫歯が見つからない。念のためX線検査をしても異常は見当たらない。でも歯は痛い。

 そんな時に下される診断名が「非定型歯痛」なのだ。

■悪化すると痛む範囲が歯から顔面に広がることも

 東京都渋谷区にある片平歯科クリニックの片平治人院長に解説してもらう。

「歯に何らかの原因があって起きる痛みを“歯原性歯痛”と呼びますが、非定型歯痛はその反対。歯には原因がないのに歯が痛む“非歯原性歯痛”の代表的な病態です。特定の歯や部位に痛みを感じることもありますが、悪化すると痛む範囲が歯から顔面に広がることもあります」

 痛みの強さは人それぞれ。鈍い痛みが続く人もいれば、耐えがたい激痛を訴える人もいる。中には数年単位の長きにわたって痛みと闘っているベテラン患者も少なくない。

 非定型歯痛が引き起こされるメカニズムは、残念ながら不明な点が多い。それでも片平院長が、二つの有力な説を挙げてくれた。末梢性の神経障害性疼痛説と中枢神経の変調説だ。

「末梢の神経が障害された痛みとは、過去に経験した事故やケガ、帯状疱疹などが原因となる痛み。この時に傷付いた末梢の神経は、元のケガや病気が治った後も慢性痛が続いたり、“異痛症”といって、軽い刺激にも痛みを感じてしまう感覚異常になることがあり、それが歯痛となって現れるのです」

■男性よりも不眠や過労に悩む女性に多い

 一方の中枢神経の変調による痛みとはどんなメカニズムなのか。片平院長が続ける。

「例えば大きなストレスを感じると、脳ではカテコールアミンという神経伝達物質が増えていき、これが歯の周囲の血管に悪さを働いて痛みを起こすこともある。また、脳の神経回路にも異常をきたすので、痛みへの感受性が高まり、本来は痛みではないものを痛みとして感じたり、大した痛みでもないのに激痛として認識してしまうことにもなるようです」

 片平院長の外来にも、非定型歯痛の患者は一定数訪れる。傾向を分析すると、男性よりは女性に多く、ストレスの原因としては不眠や過労を訴える人が多いという。

■ストレスが原因であれば”意外な薬”が効果を発揮することも

 歯に原因がない痛みなので、歯の治療をしても痛みは引かない。そもそも歯に異常がないのだから治療のしようもないのだが……。

 ならば痛み止めの薬を使うとどうかというと、これもほとんど効果は期待できない。ただ、鎮痛薬ではない薬に、意外な効き目が現れることがあるという。

「ストレスから歯の痛みを感じている人にはうつ症状が出ていることが多いので、抗うつ剤や抗不安薬、あるいは興奮した気持ちを落ち着かせる漢方薬などが効果を示すことがあります。ただ、根本的なストレスの原因を取り除かないことには根治は難しい」(片平院長)

 さらに運が悪い人もいる。精神的なストレスを抱えている患者が歯科医院に行ったら、本当に虫歯が見つかってしまったようなケースだ。この場合は当然虫歯の治療を行うのだが、虫歯と一緒に非定型歯痛を併発していると、治療で虫歯は治せても、痛みはそのまま残ってしまうのだ。しかも、虫歯治療の刺激がトリガーになって、過去に経験した痛みを再現することがある。

「まだ痛む」「もう治っている」「そんなはずはない」「いやきれいに治っている」という押し問答が続き、治療は長期化。患者は難民化し、歯医者さんのほうがそのストレスで歯痛になる――という負の連鎖まで生みかねないのだ。

■体や心の悩みも一緒に考えてくれる歯科医師に相談

 ならば、どんな歯科医師にかかればいいのだろう。

「歯科医師の中にも、『ストレス性のものだから……』と、きちんと説明もせずに簡単に心療内科やペインクリニックに送ってしまう者もいる。また痛みを取ることへの焦りから、きちんとした診断をせずに歯の治療を進めてしまうケースもある。反対に、患者の悩みに耳を傾け、ストレスを消していくためのアドバイスができる歯科医師なら、患者の不安も次第に小さくなっていくので、結果として症状は安定しやすい。必要に応じて非定型歯痛治療に力を入れている歯科医師や、メンタルの面から歯科領域を診る “心療歯科”のような専門性の高い医療機関に紹介してくれる歯科医師なら信頼感も湧くでしょう。歯科診療は医科の診療と比べて患者と接している時間が長いので、歯科医師がその気になれば患者との信頼関係は築きやすい。口の中だけの問題に限らず、体のことや心の悩みなどについても一緒に考えてくれる歯科医師なら安心感は高まるはず。歯科医師との信頼や相性が、意外に治療効果を左右するものなのです」(片平院長)

■歯の健康診断を大事に 自分でも知っておきたい”8つのポイント”

 精神的なストレスに起因する症状というのは、付き合いの長いかかりつけ医のほうが気付きやすい。患者の性格もわかっている分、対応もとりやすい。
 同じことは歯科医師にも言える。今回取り上げた非定型歯痛のように「心の問題」から起きることの多い症状には、初対面の歯科医師よりは通いなれた歯医者さんのほうが有利だ。
 そのためにも、「歯の定期健診」が重要になってくる。
 3カ月に一度でも半年に一度でもいいから、同じ歯医者さんに長く通うことで、ちょっとした変化にも気付いてもらいやすくなるし、患者としても相談しやすくなる。
「異常なし」と診断されてもなお「痛いんです」と言える間柄になっておくためにも、「歯の定期健診」は大事なのです。
 ついでに歯垢も取ってもらえるし……。

「歯痛」を見極める8つのポイント

 ・歯が痛むのに“目に見える原因”が見つからない時は非定型歯痛の可能性あり
 ・ただし、心筋梗塞や狭心症などの危険性もあるので自己診断は禁物
 ・根本的な解決のためには、元にあるストレスを解消することが不可欠
 ・痛みを引き起こすような心の悩みの有無を確認する
 ・安易に鎮痛薬を服用するよりもストレス発散や睡眠の確保を心がける
 ・歯ぎしりをしているようなら、その対策(マウスピースなど)も行う
 ・相性のいい歯科医師を見つけて、定期的に歯科検診に通って信頼関係を醸成しておく
 ・長期にわたって改善しない時には「心療歯科」の受診も視野に入れる

※【編集部注】7月28日22:50に一部修正しました。

(長田 昭二)

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