熱中症にならないために……運動したら30分以内に「コップ1杯の牛乳」を飲もう

熱中症にならないために……運動したら30分以内に「コップ1杯の牛乳」を飲もう

熱中症対策「運動後に牛乳」

熱中症にならないために……運動したら30分以内に「コップ1杯の牛乳」を飲もう

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 今年7月、大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」で、アルバイトスタッフが亡くなるというショッキングなニュースがあった。原因は熱中症だった。

 他にも連日の猛暑の中、相次ぐ熱中症による体調不良で倒れる人が続出。総務省消防庁によると、今年7月29日〜8月4日までに熱中症で緊急搬送されたのは1万8347人、死亡数は57人に上っている。

 予防策は、決して他人ごとではない「熱中症」をまずは知ること。週刊文春で様々な視点から取り上げてきた、真夏の猛威「熱中症」企画をここに紹介する。

※「週刊文春」2017年8月10日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

■そもそも熱中症は一番何が怖い?

 熱中症で倒れた人のニュースが連日のように飛び込んでくる。

 消防庁によれば、今年5月以降に熱中症の疑いで救急搬送された人は、全国で2万6441人。そのうち22人が亡くなっている(7月23日現在)。搬送された人の49.5%が高齢者だ。

 帝京大学医学部附属病院・高度救命救急センターの三宅康史センター長の話。

「今年の夏は熱波到来ではないので、いまのところ重症者は少ないという感触です。それでも、昨年の同じ時期に比べて救急搬送者の数は6000人以上も増加。特に本州の梅雨明け前の7月10日から16日の週は7680人と、前週の4241人の約2倍近くの人数に跳ね上がっています。天候が不規則なので、今夏は何が起こるのか予想できない怖さがあります」

 油断していると、誰もが危険にさらされるのが熱中症の恐いところだ。

 熱中症とは、次に挙げた4つの障害の総称である。

1.熱失神(軽度)
めまい、顔面蒼白、立ちくらみ・一時的な失神。

2.熱痙攣(軽度)
大量の発汗、手足がつったり、筋肉が痙攣を起こす。

3.熱疲労(中等度)
大量の発汗、頭痛、吐き気、体の倦怠感、口から水が飲めなくなる。

4.熱射病(重症)
呼びかけに反応しない等の意識障害、立てない、体温が高い。

 いずれも激しい運動や、気温が高い場所に長時間いることなどが原因となり発症する。

■熱中症になりにくいカラダ作りを

 いまや誰もが知っているように、熱中症予防でまずやるべきことは、こまめな水分補給と部屋の温度を下げること。特に高齢者の多くは屋内で発症しており、日中だけでなく睡眠時もエアコンを使って室温を下げるなどの対策が必要だ。

 加えて重要なのが今回のテーマ「熱中症になりにくいカラダ作り」だ。

「水分補給だけではなく、肉類などのタンパク質食品を毎日しっかり摂る。実はこれが熱中症予防につながるのです」

 こう語るのは前人間総合科学大学教授の熊谷修氏だ。

「われわれは、体内に溜まった熱を全身を循環する血液によって体外に放出しています。ですから身体から熱を逃がすには、体格に見合った血液量の保持が欠かせません。血流量が充分であれば、それだけ体温の調節機能が効率よく働くことになります。

 血液の量を調節しているのは、血中のアルブミン。この数値はタンパク質を充分摂っているかどうかで大きく変わってくる。特に高齢者は普段の食事から摂るタンパク質が不足していることが多く、その結果、血清アルブミンが減少しがち。これを増加させるためには、肉類を意識的に食べることが必要です」(同前)

 ところでヒトは血液循環で、どのように体の熱を下げているのだろうか。

■熱を下げるには血液量がカギに

 信州大学大学院医学系研究科の能勢博教授が次のように解説する。

「人の体温は36〜37度ですが、皮膚の表面温度は33度程度と少し低め。そこで皮膚への血流を増やして皮膚の温度を高めるのです。皮膚の表面温度が高くなると、気温との温度差が生まれ、熱が放出されていきます。例えば、机の表面に腕を乗せると冷たくて気持ちいいですが、それは熱が逃げているから。皮膚が血液を冷やすラジエーターのような役割を果たしているのです」

 ところが血液量が少ないと、ラジエーターの機能が落ちるという。

「まず血液量が少なくなると、それだけ皮膚を温めることが難しくなる。さらにもっと問題なのは、血液量が少ないぶんだけ体内の各臓器で必要な血流量を維持しにくくなるということです。とりわけ一番大切な脳や、心臓などの重要な臓器に酸素がいかなくなると非常に危険です。

 また、大量に汗をかいた場合、発汗量の約10%の血液量が失われます。たとえば1リットルの汗をかくと100ccの血液が減っている。すると脳や臓器への血流を優先的に高めるため、皮膚に血液が行かなくなり体温調節は二の次になってしまう。これが続くと熱疲労の状態に陥ってしまいます」(同前)

 皮膚への血流量が減れば、それだけ汗をかかなくなり、汗による気化熱で体温を下げることもできなくなる。もう1つの大事な放熱システムも使えなくなってしまうのだ。

■「水分の貯水池」下半身の筋肉量も重要

 さらに血流量の維持には、下肢の筋肉量が関係していることがわかっている。

「心臓は収縮することで血液を身体中に送り出しますが、心臓にはストローのように体の末端から血液を吸い上げる能力はありません。心臓より下に溜まった血液を送り戻すには、下肢部の大きな筋肉が使われる。この筋力が弱いと、心臓にたくさんの血液が戻らず血流量が落ちてしまうのです。

 暑い野外で作業などをしていれば、放熱のため心臓からどんどん血液が送り出されます。ところが筋肉量が少ないと送り出された血液が心臓に戻ってきません。これにより心臓から拍出される血液量が減って血圧が低下する。すると脳への血流が維持できなくなり失神してしまう。これが熱失神のメカニズムです。逆に筋肉が増えて強力なポンプになれば、それだけ心臓に戻される血流量が増え、体温の調節機能が上がることになります」(同前)

 また、筋肉には「水分の貯水池」という役割もある。実は、筋肉の約60%は水分で、体内の水分量のうち約40%が筋肉に蓄えられている。筋肉があればあるほど多くの水分を蓄えておくことが出来るわけだ。

 では、血液量を増やすには、どうしたらいいのだろうか。

■血液量を増やしてくれる食べ物は?

「血清アルブミンは肝臓で合成されます。それに欠かせないのが必須アミノ酸、そして合成のために必要な十分なエネルギーを供給してくれる飽和脂肪酸です。このベストミックスが備わっているのが肉類なのです」(前出・熊谷氏)

 熊谷氏は、秋田県大仙市に住む約1000人の高齢者に協力してもらい、栄養改善を行った。すると毎日肉類を食べる習慣をつけたグループは、そうでないグループに比べて血清アルブミン値が明らかに増加していることがわかったという。肉類は、牛、豚、鶏などどの種類でも効果があるが適度に脂身の入ったものがいい。

 食品成分に詳しい、愛知学院大学の大澤俊彦客員教授にもその点を尋ねてみた。

「ある程度の高齢になれば、赤身肉だけでなく、脂身も一緒に摂ったほうがいいでしょう。豚肉であればビタミンB群が豊富ですし、ニンニクと一緒に摂取することでより効率よく吸収させることができます。鶏肉であれば、胸肉のスープにすることでイミダゾールジペプチドという疲労回復、抗酸化作用の効果がある成分を摂取できます」

 また、乳タンパクである牛乳がタンパク質摂取に極めて効果的だという。

■運動した後にはコップ一杯の牛乳

 前出の能勢教授の話。

「これまでの研究で、『本人がややきついと感じる有酸素運動』をした直後は、肝臓でアルブミンを合成する能力がアップすることがわかりました。

 つまり運動直後に、その材料となる肉などのタンパク質を摂取すればいいわけですが、さすがに運動直後にステーキは無理でしょう(笑)。その代わりとなるのが牛乳です。コップ1杯、200cc程度を30分以内に飲むと、アルブミン合成に極めて効果的だということがわかっています」

 能勢教授がおすすめする運動メニューがある。

「われわれが『インターバル速歩』と名付けた有酸素運動です。これは3分間の早歩きと3分間のゆっくり歩きを1日に5セット行う、計30分の運動です。ただ、『ややきつい』という感覚は人それぞれ。自分でそう感じた歩き方が『速歩』だと思ってもらえばいいです」(同前)

■夏こそお腹を温めよう

 実は漢方の世界では、熱中症が古くから認識されていた。

 慶應義塾大学環境情報学部教授で、慶應病院漢方医学センターの渡辺賢治医師がこう語る。

「漢方では、注夏病という言い方がありますが、これがまさに熱中症に当たります。

 漢方薬としては、夏バテ時に飲む清暑益気湯(せいしょえっきとう)という薬があります。そのほか四君子湯(しくんしとう)や人参湯(にんじんとう)などを処方することもあります。

 生活上の対策としては、胃腸を温めていたわることが重要です。

 暑くなると、なにかと冷たい飲み物、冷たい食べ物が欲しくなりますが、やはり温かいほうが身体にはいい。果物やアイスクリームなどを食べるとしても、あくまで暑い昼間にしてください。夜は、冷たい飲み物は控えるように。胃腸に不安がある方は、飲み物は常温にすること。胃腸が冷えて動かなくなることが夏バテの原因です。

 夏こそ温かい食べ物というのが漢方の考え方です。例えば、参鶏湯(さむげたん)は夏の食べ物。カレーもそうです。血流を増やし発汗することで体の熱を下げます」

■「朝食をきちんとる」整腸活動が熱中症を予防する

 熱中症予防のために、腸内環境を整えることが大切だという考え方は、西洋医学でも同じだ。

 順天堂大学医学部附属順天堂医院総合診療科の小林弘幸教授が語る。

「腸内環境が悪い人は、この時期は腸内で火事が起きているようなものです。吸収が悪くなり、また腸液の分泌も悪くなって、腸がむくんできます。するとまた吸収機能が低下するという、負のスパイラルに入ってしまう。腸内環境を整え、さらに粘膜を綺麗に整える。その上できちんとした食事で腸管を動かしておけば、水分や塩分、ミネラル、栄養素などの吸収効率も自然とよくなります」

 腸内環境改善に有効な食材は、食物繊維と乳酸菌などが含まれる発酵食品だ。

「食事に漬物類を加えるのもいいと思います。発酵食品は塩分があり、食物繊維も豊富。普段塩分を気にされている方も、夏場はあえて摂取したほうがいい。浅漬けよりは、ぬか漬けや野沢菜、キムチなどがいいと思います。また甘酒もおすすめです。米麹から作られた発酵飲料でミネラルも豊富です。昔から、飲む点滴などといわれています」(同前)

 朝食をきちんと摂ることも整腸活動だ。

 小林教授が続ける。

「朝起きた時に一番動かないのが消化管。朝起きたら、まずコップ1杯の水を飲んでください。寝ている間に汗をかいていて、朝が一番脱水状態になっています。

 そのあとにきちんとした朝食を食べることが重要です。簡単なヨーグルトやバナナでもいいですが、パンでもご飯でもかまいません。もっとボリュームのある朝食を摂ったほうがベターです。これだけでも、熱中症の予防効果は大きいと思います」

■「水ばかりではだめ」炭酸水、ルイボス茶、黒豆茶

 熱中症予防と言えば、誰に聞いても勧められるのが水分補給だ。もちろん大切なことだが、水をガブガブ飲むだけでは、血中の水分量は増えない。おやつや食事と一緒に水分を摂るなど、こまめに飲むことが重要だ。

「水ばかりだと体内のミネラル分が薄まり、尿などで排泄されてしまうため脱水回復にならず、熱痙攣の原因にもなります。いくら水を飲んでも喉が渇く、ちょっとふらつく、なんとなくだるい、といった初期の脱水症状があるときは、ナトリウム分が速やかに吸収される経口補水液などを早めに飲むのがおすすめです」(前出・能勢教授)

 漢方の世界でも水の飲みすぎを戒める教えがある。

 前出の渡辺教授の話。

「夏にめまいや立ちくらみ、頭が重くなるといった症状を訴える人が結構います。

 これは『水毒』といい、体内での水のバランスが悪くなっている状態です。水分補給として水を飲むことはいいのですが、必要以上な分は排出しなければならない。ところが冷房の影響で汗をかきにくくなっており、体内に余分な水分をため過ぎてしまうのです。

 そういう時には、多少利尿作用のあるルイボス茶や黒豆茶がいいでしょう。漢方薬であれば、五苓散(ごれいさん)を処方します」

 消化管を刺激する炭酸水もオススメだという。食前にビールやシャンパンを飲むと食欲が湧くのと同じメカニズムだ。

■チョコレートは血流を良くする

 朝食にスムージーを加えることを勧めるのは、前出の大澤客員教授。

「高カカオチョコレートを1日25g、4週間食べ続けると、血流が改善するという結果が出ています。このチョコレートと、発汗で失われるカリウムなどのミネラルを豊富に含んだベリー類、果物、野菜をスムージーにすれば、効率よくいろいろな成分が摂取できます」

 日本薬科大学学長の丁宗鐵氏は、アルコールならこんな飲み方もいいと言う。

「漢方では、生薬の五味子(ごみし)が夏バテにいい。清涼作用があり、疲れた肝臓を保護してくれます。これをホワイトリカーに漬けておいて、サワーにして飲めば、いい暑気払いになりますよ」

■3つのスペシャルレシピを紹介

 肉類、豆腐類、乳製品などのタンパク質、血流を改善するスパイス類、ミネラルが豊富な野菜、キノコ類などをおいしく上手に摂るにはどうしたらいいか。

 管理栄養士の安中千絵氏に、夏場でも美味しくいただけるスペシャルレシピを3つ考案してもらった。こうしたメニューを参考に、熱中症になりにくいカラダ作りをして、猛暑を乗り切ろう。

■◆フライパンで簡単 ルーいらずカレー

材料(2人分)
・鶏もも肉 1枚
・トマト 中2個
・たまねぎ 1/3個
・エリンギ 2本
・長芋 50gすりおろし
・おろししょうが 小さじ1
・にんにく ひとかけ分みじん切り
・ガラムマサラ 大さじ1
・カレー粉 大さじ1
・オリーブオイル 大さじ1/2
・濃口しょうゆ 大さじ1/2
・あら塩 小さじ1

作り方
(1)テフロンのフライパンにオリーブオイルを引き、にんにくを炒め、香りが出てきたらひと口大に切ってあら塩をまぶした鶏肉と、くし切りにしたたまねぎを加え炒める。

(2)半分くらい火が通ったら、カレー粉と、種を取ってざく切りにしたトマトを加えて炒め、乱切りにしたエリンギを加えてフタをして、弱火で5〜6分煮る。

(3)フタを取り、おろした長芋を加え、2〜3分煮てとろみがついたら、仕上げにガラムマサラとおろししょうが、しょうゆで味をととのえる。

ポイント:フライパンひとつで調理時間15分程度で出来るお手軽カレーです。トマトは種を抜かないと酸味が強くなってしまうので、種を取るのがポイントです。合わせるごはんは、糖質の代謝や疲労回復に欠かせないビタミンB1を豊富に含む胚芽米がおすすめです。

1人分栄養価(胚芽米150gと食べる場合):エネルギー 643kcal、たんぱく質 30g

■ぶっかけ豆腐麺

材料(1人分)
・豆腐麺 1パック
・納豆 1パック
・温泉卵 1個
・オクラ 3本
・キムチ 30g
・なめこ 水煮1/2パック
・シソ 3枚
・麺つゆ

作り方
(1)オクラは熱湯で茹で、茹で上がる前になめこも加えて湯通しして、水にとりザルに上げてよく水を切っておく。

(2)オクラは輪切り、キムチはみじん切り、シソは千切りにする。

(3)水切りした豆腐麺に、タレやしょうゆで味付けした納豆、温泉卵、オクラ、キムチ、なめこ、シソを盛り付け、麺つゆをかける。

ポイント:お湯も使いたくないほど暑い日なら、オクラとなめこは電子レンジで2分ほど加熱してOK! 簡単に買い置きの材料で作れるぶっもかけ麺です。具材は、ツナ缶や、鶏肉、豚しゃぶ肉、かまぼこなどもたんぱく質豊富でおすすめです。

栄養価:エネルギー 317kcal、たんぱく質 24g

■豚と豆もやしの梅にんにく和え

材料(2人分)
・豚肉肩ロースしゃぶしゃぶ用 200g
・豆もやし 100g
・豆苗 100g
・にんにく 1かけ
・梅干し 1個
・塩麹 大さじ1
・みりん 大さじ1

作り方
(1)鍋に2リットルの湯を沸かし、大さじ1の塩を加える(分量外)。

(2)(1)の沸騰した鍋に豆もやしを加え、3分茹で、半分に切った豆苗を加え、更に2分茹で、最後にしゃぶしゃぶ肉を加え、赤みが無くなるまで茹でる。茹で上がったら水にとり粗熱を取って、よく水を切る。

(3)にんにくをラップに包み、電子レンジで30秒ほど加熱し、潰せるくらいのやわらかさにする。

(4)にんにくをボウルに入れ、潰してペースト状にし、ここに種を抜いた梅干し、塩麹、みりんを加え、よく練り混ぜる。

(5)(2)の豚肉と野菜と(4)の梅にんにくソースを混ぜ合わせる。

ポイント:にんにくはレンジで加熱することで臭いや辛味が抑えられます。豆もやしは普通のもやしに比べ豆の部分に火が通りにくいので、加熱時間は長めにします。

1人分栄養価:エネルギー 305kcal、たんぱく質 20g

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2017年8月10日号)

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