「人前で手をつながない」天皇と雅子さまが“初めて”カメラの前で手を触れ合わせた日――2019上半期BEST5

「人前で手をつながない」天皇と雅子さまが“初めて”カメラの前で手を触れ合わせた日――2019上半期BEST5

1994年、サウジアラビアの「赤い砂漠」で ©河崎文雄

2019年上半期(1月〜6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。皇室部門の第1位は、こちら!(初公開日 2019年6月9日)。

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 天皇皇后両陛下は令和で最初の結婚記念日を迎えられました。「女性自身」の皇室カメラマンとして、昭和の時代から35年に渡り皇室の方々を撮影してきた河崎文雄さん(74)に、おふたりの秘蔵写真やファインダー越しに見た「素顔」を特別に紹介してもらいました。

※写真は 「文春オンライン」 で限定公開しています。

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■“新婚旅行”とも言われたご成婚後初の海外訪問

 両陛下のご成婚後初の海外訪問で、“新婚旅行”とも呼ばれたのは、1994年11月の中東4カ国ご訪問です。サウジアラビア、オマーン、カタール、バーレーンを公式訪問され、私は日本から政府専用機に同乗して約2週間をご一緒しました。上皇ご夫妻が訪れたことがあるサウジアラビアを除く3カ国での、皇族の公式訪問は初めてのことでした。

 印象深い撮影は、サウジアラビアの「赤い砂漠」でお願いしたツーショットです。周囲はごつごつした岩が混じった土漠なのですが、このエリアだけ、見渡すかぎり赤い砂が広がっていて、とても美しいのです。

 おふたりの周りには、たいてい政府関係者や取材陣がぞろぞろついて歩きます。せっかくいい景色が広がっているのに、シャッターを切ると後ろのおじさん連中が写り込んでしまう。イスラム圏では女性は肌を露出してはいけないので、女性カメラマンはアバーヤと呼ばれる衣装を身にまとっていたのですが、着慣れていないからまるで忍者のよう(笑)。

 これでは台無しだと思って、「周りに人が写らないように、おふたりだけでむこうのほうに歩いていただけますか」と侍従に注文すると、おふたりは快諾してくださりました。赤い砂におふたりの足跡だけが続き、振り返ったところを撮影しました。

「赤い砂漠」に、雅子さまがお召しになっていた深緑の服がよく映えています。気温は30度以上あったと思いますが、おふたりとも涼しげな表情をむけてくださいました。

■登山中、手を合わせ祈るようなしぐさを見せた雅子さま

 上皇ご夫妻には、一緒にテニスを楽しまれている写真をたくさん撮らせていただきました。両陛下の場合は、天皇陛下が一番の趣味と話されていた登山です。

 実は私が皇室担当になったのも登山がきっかけでした。天皇陛下がお若い頃に登山の取材があると、山歩きが得意な私がよく雑誌の代表カメラマンを任されました。式典などの取材と違って、山では皇室の方々も自然と言葉をかけてくださいますし、山頂に着くと陛下を取材陣が囲んで記念写真を撮りました。

 両陛下の新婚時代にも、たびたび山登りに同行しました。夏に那須の御用邸へ行かれると、周囲の山をよく歩かれました。

 ただ、健脚の天皇陛下と一緒に歩かれる雅子さまは大変だったでしょう。山頂まであと数十メートルという場所に着くと10分間ほど休憩され、呼吸を整えてから私たちの前に歩いてこられました。そのまま山頂に着いて取材陣に囲まれたら、呼吸がゼイゼイしている姿が写真や動画で撮影されてしまうからでしょう。そういうお気づかいも含めて大変だったろうと思います。

 雅子さまが手を合わせている一枚は、94年8 月31日に栃木県の茶臼岳を登られたときのものです。山頂へむかう途中で急に視界がひらける場所に出て、その景色の美しさに思わず手を合わせたところだと思います。まだ愛子さまがお生まれになる前の新婚時代ですから、おふたりの幸福な結婚生活を祈っていたのかもしれません。

■なかなか手をつながないおふたりが「手を触れ合わせた」瞬間

 平成最後の日に「退位礼正殿の儀」で、台座を降りられた上皇陛下が美智子さまの手を取られたことが話題になりました。おふたりは若い頃から手をつないだ写真がいくつも残っています。

 現在の両陛下が手をつないでいるところは、私は見たことがありません。おふたりの山登りに同行したとき、足場の悪いところで「ここなら手を差し出されるかも」と何度も狙いましたが、あいにく一枚も撮れませんでした。恥かしい、照れくさいというお気持ちがあるのでしょうか。人前で手をつなぐようなことはなされないのでしょう。

 唯一撮れたのは、飛行機のタラップをあがるときに陛下が雅子さまの腕に手を添えられた場面です。これは99年12月にベルギーのフィリップ皇太子の結婚式に参列して帰国されるときのワンシーンでした。帰国後すぐに朝日新聞が「雅子さま 懐妊の兆候」と一面トップで報じたのを見て、私はこの場面を思い出したものです。その後、雅子さまが稽留流産されたことを思うと、忘れられない一枚です。

 仲睦まじいおふたりの様子を捉えたこともあります。同じ99年の2月に北海道でネイチャースキー(歩くスキー)を楽しまれたときのこと。転びそうになった雅子さまを、陛下が後ろから抱きかかえられたのです。周りに誰もいなかったこともあってか、とっさに雅子さまを助けられたのでしょう。ちょうど木々の間からおふたりが見えて、その瞬間に望遠レンズで捉えました。

 おふたりが様々な困難を乗り越え、2001年に愛子さまがお生まれになったのは本当に喜ばしいことでした。愛子さまがまだ1歳になる前の02年8月、那須の沼原湿原で初めてご一家でハイキングをされたご一家は幸せそうな笑顔に包まれています。

■天皇が愛子さまをベビーキャリーでおんぶされて

 このとき、陛下がベビーキャリーで愛子さまをおんぶされたのも話題になりました。実は、私が男性皇族がベビーキャリーを使っているのを見たのは初めてではありません。1度目は「ヒゲの殿下」の愛称で知られるェ仁さまです。軽井沢の別荘で、長女の彬子さまをベビーキャリーでおぶわれていました。陛下がどのようにベビーキャリーを知ったかは分かりませんが、散策に便利だと思われて、お使いになられたのでしょう。

■雅子さまが声を出して飛びきりの笑顔を見せた日

 雅子さまの飛びきりの笑顔を撮影できたのは、2003年4月に全国「みどりの愛護」のつどいで兵庫県の淡路島を訪問されたときでした。メイン会場で式典が開かれている間、私は地元の名産品などを展示する別会場にいました。女性週刊誌のカメラマンはお人柄が伝わるショットを狙うので、式典などは撮らないこともあります。

■おふたりが声を出して大笑いされたワケ

 その会場を歩いていると、目に止まったのがおもちゃの「じゃんけんピーヒャラ」でした。淡路島は、息を吹き込むと細い紙風船が飛び出す「吹き戻し」では日本一の産地です。「じゃんけんピーヒャラ」は手の指みたいに五本の紙風船が飛び出し、吹く勢いの違いでグー、チョキ、パーになってじゃんけんができるというおもちゃです。

 愛子さまが1歳を過ぎた頃で、おふたりは興味をもたれると思いました。そこで展示していた人に「おふたりがこられたら、やってみませんかと勧めてください」と頼みました。相手は「そんなことしていいんですか」と心配するので、「絶対に大丈夫だから」と保証しました。  

 おふたりが来られると、私が話したとおりに勧めてくれて、ピーヒャラでじゃんけんしたら陛下がパー、雅子さまはチョキ。「雅子さまの勝ちです」と言われた瞬間に、おふたりが声をあげて大笑いされたところを写真に収めました。ここまでの笑顔は私も拝見したことがなかったので、「じゃんけんピーヒャラ」は効果絶大でした。

■雅子さまの“嫁入り道具”だったカローラでのドライブデート

 皇室の方々を撮影した35年間に、スクープといわれたものはいくつかあります。その一つが、雅子さまが運転する「カローラ?II?」でのドライブです。これは那須の御用邸へご静養に行かれたときに撮影したものです。

■運転をしていたのは雅子さまだった!

 近くの牧場へ出かけられると聞いて、御用邸の入り口付近で待機していたのですが、宮内庁の方から邪魔だから立ち退くように言われ、同行していた記者も「もう帰りましょう」と諦めかけていました。しかしカメラマンの勘というのでしょうか、私はどうしても立ち去りがたい気持ちでいると、1台のカローラが牧場から出てきました。見ると、ハンドルを握っているのは雅子さま、助手席には陛下が乗っておられます。予想外の光景にシャッターを切りました。このカローラは、ご結婚前に雅子さまが乗っていたもので、いわば「嫁入り道具」。ご静養のため、御所から那須までトラックで運んできたらしいと、あとで聞きました。

 これは私のスクープ写真となりましたが、いったん報じられてからは両陛下も宮内庁もオープンになり、それからは何度かそのお姿をお見かけしました。何ごともオープンにしたほうが、皇室の方々はもっと自由になれるのではないでしょうか。

■写真に映える目にも鮮やかな雅子さまのファッション

 5月4日の御即位一般参賀で、雅子さまは鮮やかな黄色いドレスをお召しになっていました。私がこれまで撮影してきた写真でも、雅子さまは目に鮮やかな極彩色の服を着ておられることが多かったように思います。

 99年のベルギー皇太子の結婚式では、雅子さまが着ていたロイヤルブルーのスーツが、「ショッキングブルー」と海外で報じられて話題になりました。私は教会の外で待っていて、出てこられたところへ「妃殿下!」と声をかけて撮影しました。

 令和の両陛下に期待されることの1つは海外でのご活躍でしょう。私が撮影してきたなかでも、外国を訪問されているときのおふたりは実に生き生きとされていた印象があります。

 中東4カ国訪問では、サウジアラビアの王族や首長の夫人たちが集まる晩餐会に、雅子さまは和服でご出席されました。あちらでは晩餐会も男女別々ですから、会場に入れてもらえない私はわずかに見える隙間から必死で撮影しました。

■通訳なしで中東の女性王族と会話された雅子さま

 あのとき雅子さまは、女性皇族としては初めて中東の女性王族と通訳なしで会話されています。元外交官だけあって英語がご堪能ですし、外国の要人を前にしても堂々としていらっしゃいます。天皇陛下はイギリス留学のご経験がありますし、今後ますます両陛下は、海外でも尊敬を集めることでしょう。

 上皇ご夫妻は、私たちがカメラを向けると、撮影しやすいように自然な感じでポージングしてくださいました。天皇皇后両陛下となられたおふたりにも、国民が親しみを覚えるような素敵な写真をたくさん撮らせていただけるように願っています。

取材・構成=熊谷祐司

インタビューカット=深野未季/文藝春秋

■2019年上半期 皇室部門 BEST5

1位:「人前で手をつながない」天皇と雅子さまが“初めて”カメラの前で手を触れ合わせた日
https://bunshun.jp/articles/-/13231

2位:スカート丈にもこだわりが 眞子さまと佳子さま、それぞれの“ファッション観”
https://bunshun.jp/articles/-/13230

3位:「お相手は?」「お答えするつもりはございません」 佳子さまが「回答拒否」に込められた思い
https://bunshun.jp/articles/-/13228

4位:トランプ来日 「メラニアは大変皇后を尊敬しています」新天皇と雅子さまが受け継ぐ“皇室外交”の本質
https://bunshun.jp/articles/-/13227


5位:「うちのドンマインさん」黒田清子さん 新元号発表の前夜、両陛下はサーヤ宅へ
https://bunshun.jp/articles/-/13226

(河崎 文雄/文藝春秋)

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