きっかけは徴用工判決ではなく、平昌五輪……GSOMIAを破棄した文在寅の思考とは?

文在寅大統領は平昌五輪前の日本のミサイル避難訓練を嫌がらせと考え日本嫌悪か

記事まとめ

  • 現在の日韓関係悪化の引き金は徴用工裁判判決ではなく、平昌五輪だという
  • 文在寅氏は南北融和を考えており、日本のミサイル避難訓練を嫌がらせと捉えたらしい
  • 現在、韓国左派で南北対立から南北朝鮮と日本との闘いへとシフトしようとの主張もある

きっかけは徴用工判決ではなく、平昌五輪……GSOMIAを破棄した文在寅の思考とは?

きっかけは徴用工判決ではなく、平昌五輪……GSOMIAを破棄した文在寅の思考とは?

文在寅・韓国大統領 ©getty

 韓国による日韓軍事情報包括保護協定GSOMIAの破棄決定により、日韓関係は更なる悪化への道を進むことになった。文在寅大統領は、なぜ日韓破局への道を選んだのか。文大統領を突き動かした心理を検証してみた。

■きっかけは平昌五輪だった

 GSOMIA破棄が決定される前の、8月中旬。韓国政府は必死に日本政府の動向を探ろうとする動きを続けていた。

 そうした中で、ある韓国政府関係者は日本に対する不満を打ち明けた。

「文大統領が日本に対して嫌悪感を持つようになったのは平昌オリンピックのときからなんだ」

 一般的には現在の日韓関係悪化の引き金は、昨年韓国大法院で下された徴用工裁判判決だとされている。しかしそれ以前から文大統領は安倍政権へ強い不信感を持っていたというのだ。

 どういうことなのか。

■南北融和を象徴する政治ショーとなるはずが……

 2018年に開催された平昌冬季オリンピックは、前年に大統領に就任した文大統領にとって自身の存在をPRする最初の国際イベントだった。平昌オリンピックには北朝鮮選手団も参加、アイスホッケー南北合同チームも結成された。南北統一を目標に掲げる文政権にとっては、まさに南北融和を象徴する政治ショーとなるはずだった。

「一昨年、北朝鮮労働党幹部はこんなシナリオを打ち明けてきました。金正恩はまずミサイル実験を推し進めてその技術を完成させるだろう。そして、2018年の平昌オリンピックを契機に、米朝を中心に対話路線にシフトするだろう、と」(北朝鮮ウォッチャー)

■弾道ミサイルを想定した避難訓練を「嫌がらせ」と捉えた

 しかし、日本国内では北朝鮮のミサイル実験に対する危機感は高まり続け、Jアラートやミサイル発射放送を流すなどの対策が取られてきた。そして平昌オリンピックが開幕する寸前の2018年1月22日には、東京都内で初となる弾道ミサイルを想定した避難訓練も行われた。場所は文京区東京ドームシティ周辺で行われ、訓練には近隣の住民や在勤者約300人が参加した。

「北朝鮮が発射するミサイルの標的の一つが日本と言われているなかで、政府主導でこの訓練は行われた。北朝鮮でミサイルが発射されてから緊急情報を伝達するJアラートが流れるまで約3分。ミサイルは8〜9分程度で日本に到達することから、避難行動に当てられる時間は5分程度と短い。訓練の必要性はあると、日本政府も考えていたようです」(全国紙社会部記者)

 しかし、この行為が文大統領は気にくわなかったようだ。

「ちょうど平昌オリンピック(2月開幕)前に、安倍政権は北朝鮮を想定したミサイル避難訓練を首都圏エリアで行ったのです。これはオリンピックに対する嫌がらせだ、と韓国政府は考えたのです」(同前)

 文大統領は「頭の中の80%が北朝鮮で占められている」と評されるほど、親北路線を推進している大統領として知られている。彼が推進しようとしている南北融和構想を、ことごとく安倍政権が邪魔をしてきた――。こういった被害感情にも似た考えが、文大統領の思考の根底にあったというのだ。

「また、米韓合同軍事訓練についても、安倍政権は『永続的に続けるよう』米国に進言していた。こうした行為は韓国に対する内政干渉にあたると、韓国政府内では批判的に考えられていた」(同前)

■トランプも『韓国の態度は酷い』と批判

 しかし、北朝鮮は一向に非核化プロセスを実行しようとせず、ミサイル実験も繰り返している。このような危険な国との融和に、日本や周辺国が理解を示せるはずもない。

 文大統領の決定は東アジアの安全保障を大きく揺るがしている。

「北朝鮮はGSOMIA破棄をあざ笑うかのように、24日に短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体2発を発射した。こうした状況に危機感を募らせている米国政府も韓国の決定に遺憾の意を表明しており、トランプも『韓国の態度は酷い』と批判しています」(外信部記者)

 李大根(イ・テグン)・前成均館大学校名誉教授は、文大統領への不信をこう語る。

「かつて金日成は『カックン理論』というものを提唱していたことがあります。“カッ”は朝鮮の伝統的な帽子で、“カックン”は帽子をかぶるための顎紐です。顎紐片方を切れば帽子はかぶれなくなります。

 その原理と同じように、韓国の力を奪うためには、日本、米国のどちらかとの関係を悪化させればいいという理論です。紐の一方だけ切れば韓米日の三国間のバランスは崩れる。この理論を実践するかのように文大統領は日本と対立を深める政策を矢継ぎ早に繰り出しているように見えます」

 日韓が対立を深めるほど米韓の関係も悪くなる。そこで漁夫の利を得るのが北朝鮮なのだ。

 こうした文大統領の危なっかしい外交政策は“新瀬戸際外交”と評されるようになってきている。瀬戸際外交とは緊張を高めることにより交渉相手に譲歩を迫る政治手法だ。ご存知のように北朝鮮の常套手段で、ミサイル実験や恫喝的なメッセージを発信することで、有利な外交条件を引き出そうとしてきた。国際ルールや国際協調を無視した行為を繰り返すのがその特徴である。

■不可解な強硬姿勢と譲歩要求

 文在寅大統領も同様に、2015年の慰安婦合意を無視し、GSOMIA破棄するなど、国際ルールや国際協調を無視した外交政策を続けている。一方で日本が経済措置を取ることを決めると、自らのルール違反への自省もなく文大統領は「状況を悪化させた責任が日本政府にあることが明確になった以上、今後の事態の責任も全面的に日本政府にあることをはっきりと警告する」と批判。

 更に韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相も26日、韓国国会で「(対韓輸出規制強化など)日本の不当な措置が元に戻れば、わが政府もGSOMIAを再検討する」と一方的に日本へ譲歩を迫る言動を繰り返した。その恫喝と譲歩要求を繰り返す様は、北朝鮮のやり口とそっくりになってきた。

■韓国左派からは過激な主張も

「38度線を対馬沖まで南下させよう」

 いま韓国の左派勢力(文在寅大統領の支持層でもある)の間ではこのような言説が流布されている。朝鮮戦争の休戦境界線である38度線を、日本海まで下げようという意見だ。つまり、北朝鮮と韓国の対立から、南北朝鮮と日本との闘いへとシフトして行こうという考えが左派の根底にはあるのだ。

 平昌オリンピック時からため込んでいた不満が安倍政権の経済措置(北朝鮮への不正輸出疑惑も理由の一つとされた)を契機に爆発した。平昌五輪の頃から続く日本への反発と、そして親北朝鮮の姿勢から始まったのが文大統領の反日姿勢なのだ。

 文在寅政権が進める“新瀬戸際”外交で、日韓関係は破局への道をひた走ろうとしている。

(赤石 晋一郎)

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