30年で2倍以上!? 増え続けるアトピー性皮膚炎を「治したければフライパンを使うな」

アトピー性皮膚炎の患者が年々増加 堂園晴彦院長「治したければフライパンを使うな」

記事まとめ

  • 厚生労働省の調査によるとアトピー性皮膚炎患者数は51万3000人にも上り、年々増加する
  • 食事と抗酸化ビタミンでアトピーを治療できることを発表した堂園晴彦院長に話を聞いた
  • 大豆油などn-6系の油を使わないようにキッチンからフライパンをなくすことを推奨した

30年で2倍以上!? 増え続けるアトピー性皮膚炎を「治したければフライパンを使うな」

30年で2倍以上!? 増え続けるアトピー性皮膚炎を「治したければフライパンを使うな」

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厚生労働省が発表した「平成29年度 患者調査」によると、全国におけるアトピー性皮膚炎患者数は51万3000人にも上り、その数は年々増え続けている。

そんな中、アトピー性皮膚炎の悪化が心配される季節は「夏」と「冬」。汗が皮膚を刺激し、発症の原因ともなる細菌の繁殖を促してしまう。一方で過度な乾燥も症状を悪化させてしまうことがある。

患者の36%が0〜19歳、44%が20〜44歳を占めているデータからも年代に関係なく、誰にでも発症しうるアトピー性皮膚炎への対策を患者であった筆者自らが取材した。

※「週刊文春」2011年12月22日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

 日本でアトピー性皮膚炎(以下、アトピー)の患者がどれくらいいるかというと、実ははっきりとわかっていない。ただ『アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008』に掲載された有症率を総務省統計局の年齢別人口にあてはめてみると、およそ700万人にもなる。このうち重症の患者は推定24万人である。

 アトピーになって皮膚科に行くとほぼステロイド外用薬を処方されるが、これはステロイドを標準治療と定めているからだ。ステロイドが登場したのは半世紀も前だが、当時は一瞬にしてかゆみが止まるために魔法の薬といわれた。それなのに70年代以降は患者が増える一方である。かつて「成人するまでには治る」といわれたが、いまや子供より大人のほうが患者数が多い。

■煮物、焼き物中心の生活で「1口100回噛むこと」

 ところで私はここ数年、ステロイドを使わないで、重症のアトピーが治癒する例を何度も見てきた。その1人が06年当時、中学2年生だった沖縄の知念辰則君である。「全身が真っ白でサメ肌のようにカサカサになり、掻き破ったところから黄色い汁がじくじくと滲み出ていた」という。なにしろ海水に浸かると悲鳴をあげたほどだった。

 そこで彼は食事療法をすすめられた。基本は《油》《砂糖》《添加物》を摂らないことだった。油はシソ油だけを、甘味は砂糖をやめて酵素でとった。むろん缶ジュース類はタブーだ。結果的に筑前煮のような煮物や焼き物、蒸し物、麺類が中心になる。そのうえ一口100回噛んだという。

「最初はかゆみがひどくなったのですが、2カ月ほどして眠れるようになり、半年後にはかゆみもなくなりました」と辰則君。皮膚が元に戻るにはさらに1年かかったが、中学を卒業する頃には熟睡できたという。

 なぜ彼の症状はよくなったのか。95年に日本で初めて食事と抗酸化ビタミンでアトピーを治療できることを発表した鹿児島の堂園メディカルハウスの堂園晴彦院長によればこうだ。

■リノール酸と砂糖がかゆみの原因に

「日本人は1960年と比較すると油脂類の消費が3.4倍、畜産物が4.3倍にもなっています。実は油には大別して大豆油などのn-6系とシソ油などのn-3系があって、私たちはn-6系を摂りすぎています。n-6系にはリノール酸がたくさん含まれていて、体内に入るとアラキドン酸になり、これがかゆみを引き起こすロイコトリエンになってアレルギーの原因になるといわれています」

 n-6系に対して、n-3系はアレルギーを抑制するといわれる。アトピーの原因はわからないが、食事の洋風化によって、n-6系とn-3系のバランスが崩れたためにアトピー体質になったと考えられるのである。

 また、砂糖は腸管にいるカビの一種であるカンジダの餌になるとされ、摂りすぎるとカンジダが増えて腸内環境を悪化させる。このために腸管粘膜からアミノ酸だけでなく、ポリペプチドのような大きな分子まで吸収され、これがかゆみの原因になるといわれている。

 では、アトピーの症状をよくする食事はあるのだろうか。堂園氏はいう。

■「日本の伝統食に戻れ」まずは”フライパンをなくす”

「まずキッチンからフライパンをなくすことです。そうするとn-6系の油を使いません。あとは土の中、海の中のものを食べること。とくに根菜類は食物繊維が多くて腸内環境を整え、肌もきれいにします」

 つまりは日本の伝統食に戻れということである。1000人以上の患者を診てきた堂園氏によれば、純粋のアトピー患者は食事を変えただけで全員治癒したという。

 ここで「純粋の」と書いたのは、今はそうでないアトピーが増えているからだ。本来のアトピーとステロイド依存性皮膚症の合併症である成人型アトピーである。これがアトピーを複雑にしているといわれる。

 アトピーを治すつもりでステロイドをずるずる使い続けていると、「だんだんと効かなくなる患者がいて、さらに強い薬を使うようになり、麻薬と同じ依存症になっていきます」と大阪の阪南中央病院の佐藤健二医師はいう。これが成人型アトピーである。この患者であった橋本孝子さんは、その症状をこう語っている。

「幼稚園の頃から25歳までステロイドを塗っていました。どんどん強い薬になって、かゆみも強く、眠れなくなりました。このままじゃいけないと思ってステロイドをやめたのですが、リバウンドといって、体の皮膚がズルズルと剥け、黄色い滲出液が全身から出てくるのです。シーツに落ちた皮膚を集めると片手一杯になりました。これが毎日なんです。内臓を取り出したいほど痒くて、それでまたステロイドを使いました。その繰り返しでしたね」

■ステロイドをいきなりやめると悪化することも

 ステロイドの問題は、長期間使用すると、塗っても効かなくなる抵抗性や、依存性が出てくることである。このために強い副作用をもたらし、アトピーを治りにくくしているといわれる。最も強いステロイドを塗ると「生体の副腎皮質ホルモンの10万倍のホルモンが皮膚に残る」(佐藤氏)といわれていて、慎重に用いられることが求められるのに、皮膚科で安直に処方されてきたのがステロイドなのである。

 もっとも、ステロイドを使い続けたら全員が橋本さんのような事態になるわけではない。元国立名古屋病院の深谷元継医師によれば「1〜2割」だという。これを深刻な数字としてとらえるのかどうかは別にして、避けられるものなら避けたいと思うのが人情だろう。ではステロイドを使わずにアトピーは治療できるのだろうか。

 深谷氏は「古江(増隆・九州大学)教授の論文では、6カ月間ステロイドを塗り続けてアトピーが改善する率は37%ですが、玉置(昭治・元淀川キリスト教病院)先生がステロイドを使わない治療をしたら69%が改善しています」という。

 また12歳以下の小児について、都内で開業する藤澤重樹医師のデータによれば、ステロイドを使用した場合の改善率が52%に対し、ステロイド不使用のほうが97%と圧倒的に成績がいいという。

 いきなりステロイドをやめると、橋本さんのように急激に症状が悪化することもあり、これを抑えながら治療する方法は医師によって違う。私が興味深いと思うのは食事療法である。これは、かゆみの原因となる食べ物の摂取を抑えながらステロイドの使用を中止し、あとは人体の自然治癒力に任せるという考え方だ。

■リスクのない食事療法で93%の人が改善 

 下関市立中央病院の永田良隆医師は、中等症および重症の子供(15歳以下)540人を、n-6系の植物油や牛乳、卵などを除去した食事療法で2年間追跡したところ、途中で脱落した人を除外すれば、82%が元の健康な皮膚に戻り、11%が半分以上再生したという。改善率は実に93%だ。

 前出の橋本さんも、堂園氏のもとで食事療法と抗酸化ビタミンで治療を続けたが、1年後には「もう大丈夫」と確信したそうだ。

 通常、ステロイドの依存症が治るまで「標準的にはステロイドを使った期間の1割、つまり20年使ったら2年かかる」と深谷氏は言う。ステロイドを使うにはそれだけのリスクを覚悟すべきなのだ。アメリカのアトピーの治療ガイドラインは09年に失効したままだが、改訂版ではステロイドの副作用などが書き加えられるといわれている。

 食事療法などで一定の時間をかければアトピーは自然に治癒する。患者も医者も急いで痒みをとろうとするからステロイドを使うのである。佐藤氏は言う。

「私ならリスクを否定できないステロイドは使いません」

(奥野 修司/週刊文春 2011年12月22日号)

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