反日嫌韓だけではわからない「世界史的な転換期を迎えた」現代地政学

反日嫌韓だけではわからない「世界史的な転換期を迎えた」現代地政学

6月30日、板門店で握手する北朝鮮の金正恩委員長(手前左)と韓国の文在寅大統領。中央奥はトランプ米大統領 ©共同通信社

「韓国が今、日本に挑戦的な姿勢をとる背景には『もうアメリカの時代は終わった』という彼らの見立てがある。『これから東アジアの基本構造を決めるのは中国だ』という、東アジアの未来予想図を描いた上での行動なのです」
 
 そう分析するのは、国際政治が専門の京都大学名誉教授の中西輝政氏(72)だ。

 過去最悪の日韓関係、香港での大規模デモ、米中貿易戦争、そして、北朝鮮のミサイル発射……。混迷をきわめる東アジアの情勢をどのように理解したらよいのか。「週刊文春デジタル」では、国際情勢を長年見つめ続けてきた中西氏にインタビューを敢行した。

■韓国にとって、アメリカはもはや“鬱陶しい邪魔者”

 現在の国際情勢について、「世界史的な時代の転換期」を迎えていると分析する中西氏。日韓関係悪化の原因は、経済面でのアメリカの存在感の低下によって、中国・ロシアの大陸勢力の優位性が高まり、アメリカや日本を“鬱陶しい邪魔者”と判断し始めたことだと指摘する。

「韓国の若い世代などは、『在韓米軍があるから統一が果たせない』とすら思っている。在韓米軍が占領軍のような意味合いになっているのです。米韓同盟を大切にしてきた保守派は高齢化が進んでいることも大きい。

 いまや韓国には、日本とアメリカは友人どころか、時には自国の行く手を阻む“鬱陶しい邪魔者”とさえ映っている。日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄したことに『失望』を表明したアメリカに対して、韓国政府は、駐韓アメリカ大使を呼び出して、『失望表明の自粛』を要請しました。韓国が日米双方に対しこんな強い態度に出る背景には、日米から距離を取ろうという戦略的な意図があると考えるべきです」

 中西氏は、日本外交にも厳しい目を向ける。それは、プーチン露大統領との領土交渉でも見られた、官邸主導の安倍政権の「素人外交」についてだ。

■安倍首相はカッカせず、淡々と訴えていけばよかった

「今回の韓国に対する日本の外交手法には、反省点も多い。もちろん、日韓関係が緊迫する直接的な原因となった徴用工問題は、誰がどうみても韓国の最高裁判決がおかしい。安倍政権が業を煮やしたということは当たり前だと思います。ただ、誰がみてもわかる国際法の基本線をはずしている韓国最高裁の判決ですから、日本も、そんなにカッカせずに、淡々と国際世論に訴えていけばよかった。今回一番の問題は、予告なく韓国の喉元に突然『ナイフ』を突きつけたことです」

 その結果、徴用工問題というマンネリ化していた「過去」の歴史問題から、韓国経済の存立にかかわる「現在」の問題に、「反日」を変化させてしまったことが深刻だという。

「この瞬間、『反日運動』を生み出している源泉が、歴史問題という定番化したテンプレートではなく、外敵の出現による『今そこにある危機』という強烈な感情になってしまった。外交として拙劣だった。両国が後に引けないようになる状況を見通せなかった。ここまでリスク管理のされていない、頭から突っ込んでいくような外交手法は、これまでの日本外交では見られない動きです」

 中西氏は、そのほかにも、中国が狙っている「韓国カード」という存在、ボリス・ジョンソン英国首相を生んだ世界の指導者の「プーチン化」など、大転換点にある世界の現状を分析。この混乱の中で日本の進むべき道を明らかにしている。

 中西氏の約9000字にわたるインタビュー全文は、 「週刊文春デジタル」 で公開している。

(「週刊文春」編集部/週刊文春)

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