64歳の逃走犯が捜査の盲点をついた“古典的な手口”、それはカツラだった

64歳の逃走犯が捜査の盲点をついた“古典的な手口”、それはカツラだった

服も数着所持していた金容疑者 ©共同通信社

 最先端技術でも“子供騙し”にあう。そう合点させてくれたのは、齢64になる泥棒だった。8月27日、窃盗容疑などで警視庁捜査3課に逮捕された金?基(キムウォンギ)容疑者。どんな手管を駆使したのか。

 警視庁担当記者の話。

「金は8月13日、東京・中野区の寿司店で8万円を盗んで逮捕されましたが、その際に転倒して鎖骨を折って入院。18日、東京警察病院で付き添いの警察官に『メモを忘れた』と嘘を言って取りに行かせた隙に車椅子を置いて逃げました。本部が事態を把握するまで1時間かかっており、初動も遅れました」

 監視、通報と2つの“怠慢”を犯していた警視庁。捜査の指揮を中野署から本部の捜査3課に引き上げた。幾多の事件を解決してきた「防犯カメラ捜査」により、20日に窃盗事件のあった名古屋市内の薬局付近で似た男の姿を確認。捜査員も派遣し、発見は時間の問題かとも思われたが……。

「金はそこから電車で大阪市に行ってサウナで数日過ごした後、ヒッチハイクで川崎市まで戻ったようですが、警視庁は追えていなかった。後の供述によると、金はさらに都内に戻り、電話ボックスから中野署に『もう疲れた』『署の周りに(報道の)カメラがいて恥ずかしくて出頭できない』と電話を入れました。中野署までわざわざ出向いたのに誰も気付かなかった疑いもある。電話がなければ、どうなっていたか」(同前)

 結局、10日間も逃げおおせた金。捜査関係者は理由をこう指摘する。

■捜査の盲点をついた“古典的な変装道具”

「防犯カメラは防犯意識の高い地域には沢山あっても、都心から離れるほど減る。カメラは駅にもあるが、車道には車のナンバープレートを読み取るNシステムが多く、他人の車に乗られるとナンバーを追うこともできず、足取りが途絶えます」

 さらに捜査を困難にさせたのが、古典的な変装道具、カツラだった。

 前出の記者はこうみる。

「電話ボックスには金のものとみられるカツラが残っていた。実は寿司店に侵入したときも、現場で髪と間違えてカツラを掴まれ、外れています。防犯カメラ捜査では写真から三次元データを復元する技術もありますし、捜査員も変装を念頭に調べますが、カツラ姿と普段の姿の両方を探さなければならず、負担が大きくなる。当初、大阪行きの切符を買う防犯カメラ映像を見つけきれなかったのには、カツラが影響した可能性がある。ヒッチハイクといい、金が意識したかは不明ですが、結果的には捜査の盲点をついた格好になった」

 金は逮捕時、暇潰し用の文庫本まで持参していたが、カツラはつけていなかった。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年9月12日号)

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