アフリカを飲み込みつつある中国人のエゲツない「黒人差別」意識

アフリカを飲み込みつつある中国人のエゲツない「黒人差別」意識

©安田峰俊

 最近、アフリカが日中両国の新たな衝突点となったのをご存知だろうか? 今年8月24〜25日、河野太郎外相がモザンビークで開かれたアフリカ開発会議に出席。同閣僚級会合で、日本側が中国の海洋進出を念頭にして、国際法に基づく海洋安全保障の重要性を確認したことに中国側が反発を示しているのだ。中国外交部の報道官は定例記者会見で「日本側の動機は不純」(8月22日)、「日本がアフリカとほかの国の関係に水をさすことを止めるよう望む」(8月28日)と、ずいぶんなおかんむりである。

 中国の対アフリカ投資額はゼロ年代なかばから急増しており、いまや直接投資残高は日本の3倍以上の325億ドル(約3.6兆円、2016年3月時点)に達する。そもそも中国は1950年代から「第三世界」諸国の連帯を主張してアフリカと独自の関係を築いてきたので、交流の歴史も長い。今回中国が見せた強い反発は、日本の動きに対して「自分のシマに手を出すな」といった感情も反映されているのだろう。

 欧米メディアでは「新植民地主義」という批判も出ているが、近年の中国による巨額の投資やインフラ援助はアフリカ各国でおおむね好意的にとらえられている。現在、アフリカ大陸全体からの留学生の送り出し先として中国は欧米各国をほぼ追い抜く勢いであり、中国を最大の貿易相手国とする国も多い。

 だが、中国側の対アフリカ認識を観察すると、民間レベルではトラブルの火種が少なからず見られるようだ。今回の記事では、そんなキナ臭い兆候を感じる近年の中国のアフリカ関連ニュースやネット上の動きを追ってみたい。

■アフリカの子どもを使った「商品」が問題化

 今年8月、中国のIT大手、アリババ社が運営するネットショッピングモール・タオバオに出品されていた「人気商品」が問題視された。これはアフリカの子どもに、中国語のメッセージボードを持たせた写真や動画を販売するものだった。

動画 https://youtu.be/iY6In-Fiu7I
※Youtubeで確認できる、中国語のメッセージをアフリカの子どもに叫ばせる動画。これはアウトであろう。

 8月7日付けの中央人民広播電台ウェブ版記事によると、撮影地はザンビア。サービスの価格は30〜220元(約500〜3700円)ほどで、文字の内容は買い手側でカスタマイズできる。安いコースはただの画像だが、高いコースだと、ボードを掲げたアフリカの子どもたちがメッセージ内容を中国語で叫ぶ動画となる。以下、中国のネット上で確認できたメッセージの例を紹介しよう。

「〇〇さん、21歳の誕生日おめでとう! Forever love!」

「嫁さんへ。俺が間違ってた。帰ってきてくれ。愛してる」

「大人気! スマホゲーやるなら△△△を。すぐに検索ダウンロード」

「画像のフォトショ修正なら■■■デザイン。出来が悪ければ全額お返しします!」

 中国語を理解していない外国の子どもをメッセンジャーに仕立て上げて商売をする行為にはなんだか抵抗を覚えるが、このサービスは中国人のユーモアのツボにハマったらしく大人気に。微博(中国版ツイッター)の投稿やチャットソフトでの友人間のやりとりなどで、中国語メッセージを手にしたアフリカの子どもたちがやたらに出てくるようになった。

 だが、8月7日に『北京青年報』が、メッセージの販売業者が子どもたちを不当に搾取している可能性を指摘。同紙が取材したある業者は、価格220元のうちで「(業者側は)30元しか得ていない」「残りはアフリカの子どもたちにあげている」などと主張したようだが、実際は数元しか支払われていないことも明らかとなった。

 やがてニュースは香港の英字報道を経由して世界に流れ、8月14日にはアフリカ各国ニュースメディアの『アフリカ・タイムス』、同18日には英国BBCが、異文化に対する配慮の不足や道義的問題を指摘する記事を掲載。ニューヨーク証券取引所にも上場しているアリババ(タオバオの運営元)はこの流れをマズいと感じたのか、こうした海外報道と前後してサイト上からこのサービスをすべて削除する処置を取った。

 コピーが容易なデジタルコンテンツはネット上では売りづらいはずだが、各個人にオンデマンドで作成した画像や動画なら心配がない。最初にこのサービスを考えた人はかなり賢いとも言える。ただし問題は、売り手にも買い手にも、人権意識の「じ」の字もなかった点なのであった。

■ナチュラルに人種差別を展開中?

 実は中国では、アフリカ系の人たちに対する人種差別的な言説や広告表現などが、その問題点を誰も意識しないままに垂れ流されてしまうケースがかなり多い。例えば2016年5月には上海の化学メーカーが、汚れた服を着た黒人男性を同社の洗剤とともに洗濯機に入れてきれいに洗い上げると白シャツを着たイケメンの中国人男性に変わる――というCMを放送したことで国際的に「炎上」している。

 当時、中国のネット上には海外報道の指摘に対して「考え過ぎ」「大した問題ではない」とする反応も多く、同社も当初は批判を突っぱねようとしたのだが、あまりに海外で大きく報じられてしまったのでやむを得ずCMの放送を自粛している。

 また、対外貿易が盛んな広東省の広州にはアフリカ系商人が非常に多く、市内に複数のアフリカ系コミュニティが存在するのだが、一部の民間ネットメディア系の記事には「中国人の女性が襲われる」といった興味本位な記事も目立つ。なかには、明らかに偏見に基づいた画像が挿入されている例すらも珍しくない(黒人男性と若い女性の扇情的な画像ばかりでなく、ゴリラの画像が貼られている例もあった)。

 同様の傾向はネット掲示板などではいっそう強烈で、2000年前後から続く古参BBSである『中華網社区』や『鉄血社区』など、あまりアングラ色のないサイトでも、アフリカ人を話題にしたスレッドでは堂々とヤバい画像が貼られていたりする。この手のBBSは、仮に政府批判を書き込んだりすればそう時間が経たず削除されるのだが、アフリカ系の人たちへの偏見を示すような意見や画像は特に消される様子がない。

 アフリカ系の人たちに対する偏見や忌避意識は、海外に出た中国系移民も例外ではない。例えば2015年3月23日、ケニア最大の日刊紙『ネイション』が、ナイロビ市内キリマニ地区で中国人移民の経営する中華料理店が「夕方5時以降のアフリカ人の入店お断り」という注意書きを出していたと報道。当事国のケニアのみならず周辺各国も巻き込んで反発が広がることになった。

 また、昨年秋のアメリカ大統領選では 多くの在米中国人移民が、移民排斥を訴えるトランプを熱心に支持 する不思議な現象が起きたが、その背景にも、ヒスパニック系やアフリカ系を自分たちよりも「劣った移民」だとみなす中国人の意識が関係していたとする説がある。習近平が就任以来、オバマ政権といまいちソリが合わなかった理由も、保守的な中国人である習近平に、アフリカ系のオバマを無意識に軽侮するような心理があったためではないかと指摘する声すらあるほどだ(福島香織『米中の危険なゲームが始まった』ビジネス社)。

■人権や異文化理解の意識が育たぬまま大国化した矛盾

 もちろん日本でも、海外の歴史認識や人権概念に対する無理解や無神経さが、国際的な「炎上」を招く事例は少なからずある(麻生副総理の一連のナチス関連発言や、アイドルグループの欅坂46がナチスの軍服に似た衣装を着用して抗議を受けた例が代表的だろう)。ただし今回の記事からもわかるように、中国の事例は日本と比較してもヤバさの度合いがケタ違いに凄まじい。

 こうなる理由はおそらく、中国において近代的な人権意識や、またそれを支える民主主義的な社会のシステムが充分に育っていないため――。さらに言えば、当局が体制維持の観点から、それらを無条件で中国社会に受け入れることを意図的に拒絶しているためだろう。また、中国は多民族国家だが、当局が「中華民族」意識(事実上は漢民族中心主義)を強調しているので、漢文化を相手に押し付けることはできても、異文化を尊重・理解する姿勢はあまり根付いていない。

 人権や異文化理解に対する中国人の「意識の低さ」は、政治的な要因もあるだけに、現体制が継続する限りは今後も根本的な改善が望みづらい。だが、中国はそんな状態のままでグローバル大国に成長し、遠いアフリカにまで政治・軍事・経済の各方面で進出しているという現実がある。

動画 https://youtu.be/qxsXafclLQw
※中国の大手靴工場のエチオピア工場。毎日朝礼の際、アフリカ人従業員6000人に中国の革命歌謡『団結は力なり』を歌わせているという。

 中国が今後もアフリカ各国との関係を深めていけば、中国人のアフリカ人への偏見や無理解もより露骨に可視化されていくことになる。どこかの段階で大きな揉め事に発展するのではないか。そんなことがつい心配になってしまうところである。

(安田 峰俊)

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