武蔵小杉・多摩川河川敷のホームレス男性「避難所に行ったらゴミ扱いされる。だったら……」《台風19号被害》

【台風19号】多摩川河川敷で暮らす50代男性 避難所について「ゴミ扱いされる」

記事まとめ

  • 多摩川河川敷で暮らす50代男性は、今回の台風について今までにない恐怖を感じたそう
  • 川崎市の職員から避難指示が出されたが、なかなか場所を離れられなかったという
  • 避難所へ行くことは考えず「そんなとこ行ったらゴミ扱いされる」と語った

武蔵小杉・多摩川河川敷のホームレス男性「避難所に行ったらゴミ扱いされる。だったら……」《台風19号被害》

武蔵小杉・多摩川河川敷のホームレス男性「避難所に行ったらゴミ扱いされる。だったら……」《台風19号被害》

記者に話をしてくれたAさん ©文藝春秋

「今回は、嫌な予感がしていたんです。前日に川崎市の職員の方が、公園に設置されている仮設トイレを一斉に持っていってしまって。今までこんなことは一度もなかった」

 台風19号で増水した多摩川上流から流れついた、折りたたみのテーブルを公園の水道で洗いながら話してくれたのは、50代の白髪男性Aさん。Aさんは今回の台風で氾濫した武蔵小杉近くの多摩川河川敷で2年ほど”テント生活”を送っている。だが、今回の台風には今までにない恐怖を感じたという。

■風の音が大きすぎて鼓膜が破れるかと

「ゴゴゴオオォと今までに聞いたことのないような大きな風の音が鳴り響いて、川の水嵩は普段の3倍以上になって土手のぎりぎりまで迫っていました。濁流で流れてきた大きなゴミは強風で舞い上がっていました。さすがに私も、空き缶を集めるための商売道具の自転車と、仕入れといた中古のカートにテントや食料をくくりつけて、土手を上がって橋の裏まで逃げました。音が大きすぎて鼓膜が破れるかと思った。もし水が橋まできたら歩道橋に逃げようとも考えたけど、足がすくんで動けず、台風が過ぎ去るのを怯えながらただ待っている状態でした。翌日、川辺に戻ると地形が変わっていた。(河川敷で暮らす)他の人の小屋は流されたと聞いている。こりゃ、河川パトロールの人が言っていた通り、『最強クラス』なんだと思いました」

 今回の台風では日野市近辺の河川敷で生活するホームレス1名が濁流に流され死亡している。Aさんら河川敷で生活するホームレスに対しては、台風上陸の数日前から国土交通省の河川パトロール隊員や川崎市の職員から避難指示が出ていたという。

「ラジオもあるし、危険なことはわかっていたんだけど、なかなか場所を離れられなかった。河川敷はそれぞれ、我々のなかで縄張りがあって、先に住んだ人が優先、新参者は煙たがられるし。集団で暮らしてるところもあるみたいだけど、『物を盗った、盗られた』でトラブルになる。橋下は雨風を過ごせて一番いいのだが、鉄道関連会社の管轄なのですぐにどかされてしまう。

 やっとのことで見つけた場所なんですよ。このあたりに住んでいる釣り人なんかも多くて、皆いい人で、体調を気遣ってくれたり、親切に食べ物をくれたりする。嫌なのは公園で遊ぶ子供くらい。小中学生かな。彼らはすぐに物を投げつけてくるからさ。台風と同じくらい嫌ですよ」

■支援センターの人はすぐに説教するので嫌に

 台東区で10月12日、ホームレス2人が避難所受け入れ拒否に遭っていたことに批判の声が上がったが、Aさんは避難所へ駆け込むことは考えなかったという。

「そんなとこ行ったらゴミ扱いされる。だったらまだホームレス支援センターを頼りますよ。今回も親切に『頼ってくれ』と(センターの職員が)声をかけてくれた。支援センターの人は今までも優しくしてくれて、何度か施設に行ったことがある。でも、自立させようという思いが強いから、すぐに説教が始まって、成功談が自慢話に聞こえてくる。それで嫌になって飛び出してしまった。

 こんなときだけ行ったらバツが悪い。でも彼らは受け容れてくれる。どうしてものときは頼るけど、一人でいたくてこういう暮らしをしてるんだから、しばらくの間は空き缶を拾って売って生活するよ」

■寒くなるからベニヤ板を敷きたい

 Aさんはもともと会社勤めのサラリーマンだった、体調を崩し会社を退社した後、環境が変わっていき、数年で今の生活になった。

「あまり働きすぎないほうがいいよ、身体が一番の資本。これから寒くなるからベニヤ板を敷きたいな。テントだけだと夜冷えるからね」

 そう言ってAさんは流れ着いたベニヤ板を探しに川岸のほうへ向かっていった。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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