経済、対北、対米関係も悪化……"八方塞がり"韓国・文在寅政権の支持率半減で「死に体」危機

チョ・グク氏が辞任し文在寅政権の支持率が40%割れ 野党躍進なら『死に体』化加速も

記事まとめ

  • チョ・グク氏が就任1カ月余りで法相を辞任し、休職していた大学院教授に復職した
  • チョ・グク氏の辞任は文在寅大統領にとって大打撃で、支持率は初めて40%を割った
  • 来年4月の総選挙で野党が躍進すれば、政権のレームダック化が加速しうるという

経済、対北、対米関係も悪化……"八方塞がり"韓国・文在寅政権の支持率半減で「死に体」危機

経済、対北、対米関係も悪化……"八方塞がり"韓国・文在寅政権の支持率半減で「死に体」危機

゙国法相の辞任を発表した文在寅大統領 ©AFLO

 法相を突然辞任しだ国(チョ・グク)氏。韓国ではその辞任を当然視する声が多い。世論調査会社「韓国ギャラップ」によると、゙氏の辞任に国民の64%が賛成、反対は26%だった。「辞任が遅過ぎる」との意見が韓国社会では多いようだったが、筆者としては就任わずか1カ月余りでの辞意表明に、むしろ呆気なさを感じた。

 ゙氏をめぐっては、娘の不正入学や親族の不透明な投資疑惑などが取り沙汰され、妻が娘の大学進学に有利になるよう表彰状を偽造したとして私文書偽造の罪で在宅起訴された。にもかかわらず、゙氏は「私は関与していない。知らない」と言い張り、文在寅政権が公約に掲げた検察改革へ意欲を見せていた。

 このふてぶてしさが世論の反発を招いたわけだが、図太く法相の座にとどまり続けると思いきや、あっさりと自らギブアップ宣言をしてしまったのだ。

「これ以上、私の家族のことで大統領や政府に負担をかけてはならないと判断した」

「国民にあまりにも申し訳ない。特に傷ついた若い人たちに本当に申し訳ない」

 と頭を下げだ氏だが、図太さは残っているようだ。゙氏は法相を辞任した10月14日に、休職していたソウル大学法学専門大学院への復職をさっさと申請し、翌15日付で同大学院教授に復職した。

■支持率がはじめて40%割れ

 側近中の側近であっだ氏の辞任によって、最も打撃を受けたのは、当然ながら文在寅大統領だ。

 文氏ば氏辞任に際し、社会の対立が深まったとして「結果的に国民の間に多くの軋轢を引き起こしたことを大変申し訳なく思う」と謝罪。「われわれの社会は大きな痛みを経験した。大統領として国民に非常に申し訳ない気持ちだ」と語っている。

 大統領として、ケジメをつけた形の文氏ではあったが、その後も世論の批判は燻っていることが数字に表れた。

 韓国ギャラップが゙氏辞任直後の10月15〜17日に行った世論調査(18日発表)では、文氏の支持率は2017年5月の就任以降、過去最低の39%にまで落ちた。前週よりも4ポイント低く、同社の調査で支持率が40%を割ったのは初めてのことだ。つまり文氏の"みそぎ"に世論の多くは満足していない、ということだ。

 さらに、政権与党の左派「共に民主党」の支持率も36%まで低下した。保守系の最大野党「自由韓国党」の支持率は27%。両党の支持率の差は、8月第2週の時点で23ポイントも開いていたが、9ポイントまで縮まった。

 野党や保守派は、「国政混乱の責任は文在寅大統領にある」と任命責任追及の声を日々強めている。彼らが強く意識しているのが、来年4月に文政権が初めて迎えることになる国会議員選挙(総選挙)だ。左派系の与党が敗北し、野党「自由韓国党」が躍進するような事態になれば、その後に政権末期を迎える文政権のレームダック化(死に体化)が加速する可能性さえ十分にある。

■北のラフプレーにも「腰抜け」対応

 政権発足当初は80%台の支持を集めた文氏だが、現在はその半分の水準。韓国大統領府では「一喜一憂せず、できることに最善を尽くす」とコメントしているが、文氏と政権与党の大幅な支持率の回復は難しい。

 というのも、政権の重要課題は、どれも急激に改善されるとは思えないものばかりだからだ。相変わらず停滞が続く韓国経済。南北関係の改善も見込めない。さらに、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の韓国側の一方的な破棄決定などにより日米との関係もよくない。

 そんな現状でも、文政権の基本姿勢は変えるつもりはなさそうだ。たとえば検察の捜査権限を縮小する「検察改革」だ。

 文氏は辞任しだ氏の検察改革への姿勢を評価しており、検察改革が文政権にとって最重要課題だとし、その実現に向けて「最後まで邁進する」と宣言してもいる。゙氏は約1カ月の在任期間に、検察の捜査対象を賄賂犯罪や企業犯罪に限定するなどの改革案をまとめた。韓国政府ば氏辞任の翌15日に一部の制度改革を閣議決定している。

 また、文氏の南北関係改善への夢も不変だ。10月15日、平壌で行われたサッカーW杯2次予選の南北対決は、北朝鮮側の意向でライブ中継もない上に、無観客で行われる異例の試合となったが、韓国代表は入国審査で持ち込んだ食料を没収されるなどの嫌がらせを受けた。さらに試合中も、北朝鮮代表から悪質なラフプレーや、表現できないような罵声を受けたという。

「戦争のようだった」(韓国サッカー協会の崔英一副会長)
「ケガなく帰ってこられただけでもよかった」(韓国代表の孫興民主将)

 と、韓国代表が生で感じた「北朝鮮の現実」を語っている。にもかかわらず、韓国統一省は北朝鮮を刺激する行動を極力避け、文大統領に至っては、試合後の18日、大統領府に韓国駐在の各国大使ら外交官を招いた挨拶でも、朝鮮半島の和平に向けた持論を改めて披露した。文政権は相変わらず北朝鮮には甘く、弱いのだ。これに対しては、ネット上でも議論が白熱し、北朝鮮への怒りや韓国政府の腰のぬけたようなふがいない対応に批判が出ている。

■訪日する李洛淵首相に丸投げ

 文大統領は、10月22日に行われる天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に、政権ナンバー2の李洛淵(イ・ナギョン)首相を出席させる。安倍首相との会談も予定され、文大統領の親書を手渡すことも検討されている。 

 李首相は韓国紙の東京特派員経験もある政権きっての"知日派"。安倍首相と昨年会談した際には、「安倍首相が官房長官就任前の2005年に訪韓した際、ソウルで焼酎を酌み交わした」と語って、その場を和ませたこともあった。文大統領はそんな李首相に関係改善を丸投げした格好だ。

 国内政策で追い詰められた文政権は、これ以上日韓関係を悪化させて、不安要素を増やしたくないというのが本音だろう。だが、徴用工問題など重要課題については全く進展がない今、一朝一夕には日韓関係が改善するとは到底思えない。

(名村隆寛(産経新聞ソウル支局長)/週刊文春デジタル)

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