自民党の一派閥と化した希望の党 安倍・小池“同じ穴のムジナ”の化かし合い

自民党の一派閥と化した希望の党 安倍・小池“同じ穴のムジナ”の化かし合い

©時事通信社

小池百合子 希望の党代表・東京都知事
「(排除という言葉を使うのが)早かったわね。もう使わない」
『週刊文春』10月19日号

 名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。衆議院選挙について、各社の世論調査が発表された。はっきりしたのは、安倍晋三首相率いる自民党の優勢と小池百合子東京都知事率いる希望の党の失速ぶりだ。

 共同通信社が10日、11日の両日に行った世論調査では、自民党は公明党と合わせて安倍首相が勝敗ラインに掲げていた過半数(233議席)をはるかに上回る300議席超をうかがう勢いを見せた。自民党単独でも衆院過半数を大きく上回る可能性がある。一方、希望の党は60議席前後と伸び悩んでいる。希望の党から「排除」された立憲民主党は公示前から倍増の30議席台も視野に入れている躍進ぶりだ。ただし、投票先未定は小選挙区で54.4%に上り、22日の投開票に向けて情勢が変わる可能性は大いにある(毎日新聞 10月12日)。

 公示前は「小池劇場」の影響で希望の党の議席は倍増、あるいは自民党の単独過半数割れの“大負け”という予測も行われていた。わずか数日での凋落ぶりの原因は、希望の党ならびに小池氏の自爆である。

 大きなマイナスとなったのは小池氏の「排除」発言だ。希望の党は民進党の合流希望組に対して、憲法改正と安保法制で“踏み絵”を踏ませた上、小池氏は「(民進党内のリベラル派が)排除されないということはない。排除致します」と言ってのけた(『週刊文春』10月19日号)。これまで“排除された側”として森喜朗元首相や石原慎太郎元都知事、内田茂前都議らと戦って、喝采を浴びてきた小池氏が、“排除する側”に回ったのだ。

 フジテレビ解説委員室シニアコメンテーターの鈴木款氏の指摘がわかりやすい。「小池氏は、『男社会のいじめに立ち向かう女性』のイメージ作りで、幅広い支持を集めることに成功してきた。しかし、『いじめる側』になったことで、自らのイメージを大きく毀損し、逆に『感じが悪い女』『独裁者』のイメージがついてしまった」(ホウドウキョク 10月12日)。自らが掘った墓穴に、小池氏は冒頭の言葉のように後悔しているという。

 小池氏と希望の党は「排除の論理」によって、旧来の民進党支持者のみならず、無党派層からも敬遠されるようになった。さらに、政権選択選挙と位置づけながら小池氏本人が首相候補として衆院選に出馬しないこと、小池氏が特別顧問を務める「都民ファーストの会」の「ブラックボックス化」への批判などもマイナスに働いた。

 また、6日発表された希望の党が公約として掲げる「12のゼロ」の「満員電車ゼロ」「待機児童ゼロ」「ブラック企業ゼロ」「花粉症ゼロ」などが多くの人たちの失笑を買ったことも失速の理由の一つだ。そもそも「花粉症ゼロ」ってどうやって実現するの? 「目指す」だけで公約実行だと思ったら大間違いである。たぶん話題にさえなれば何でもいいと思っているのだろう。飯島勲内閣参与(特命担当)は、ズバリ「小池のウソは、確信犯だ」と断言している(プレジデントオンライン 10月13日)。焦りの色が見えてきたと言われる小池氏。はたしてこのままで終わりということがあるのだろうか?

小池百合子 希望の党代表・東京都知事
「負ける戦いはしないのよ。私が負けたのは〇八年の(自民党)総裁選くらいよ」
『週刊文春』10月19日号

 街頭演説では舌鋒鋭く安倍政権と自民党批判を行っている小池氏だが、10月8日に行われた日本記者クラブ主催の討論会では、「基本的には『安倍一強政治』を変えていくのが私どもの大きな旗印だ」と微妙な表現を用いていた。自民党との連立について問われた際も、「(選挙)結果としての判断ということになる」と可能性を排除しない考えを示している(時事ドットコムニュース 10月8日)。

『週刊新潮』10月19日号は希望の党関係者の声として、現在の小池氏の「セカンドシナリオ」を紹介している。思うように議席が取れなくても、希望の党は野党第一党になるだろう。そうなれば、憲法改正が悲願の安倍首相は、改憲勢力に協力してほしいと小池氏に頭を下げることになる。小池氏は安倍首相にリベンジを果たすと同時に、希望の党が改憲勢力の「3分の2」に協力する条件として、五輪問題で対立してきた森喜朗・東京五輪委員会会長の肩を持たないことを飲ませる。これで「都知事としての小池百合子」の権限を大きくしようというのだ。

 現時点で、自民党、公明党、日本維新の会、日本のこころ、そして希望の党の議席を合わせると、憲法改正を国会で発議するのに必要な310議席を大きく上回ると見られている(日テレNEWS24 10月11日)。宿願でもある憲法改正を行いつつ、自らの権勢を伸ばすことができるのなら、小池氏にとって衆院選は「負け戦」ではなくなる。小池氏はかつてから周囲に「負ける戦いはしないのよ」と語っていた(『週刊文春』10月19日号)。

 安倍首相は公示が行われた10月10日、演説でこう語っている。「みなさん、未来を切り開くのはブーム、スローガンではありません。政策こそ未来を切り開いてまいります」。ここだけを聞くと希望の党を批判しているように聞こえるが、実は違う。安倍首相の演説はこう続く。「この選挙、相手は共産党と社民党と一緒になってわたしたちを倒そうとしています」(NHK 衆院選2017 党首演説)。希望の党は、共産党や社民党と手を結ぶそぶりさえ見せていない。安倍首相は憲法改正の同志である小池氏をそれほど敵視していない。

 小池氏は12日の演説で「安倍一強政治に『緊張感をもたらそう』ではありませんか!」と語った(スポーツ報知 10月12日)。「安倍一強政治を『終わらせよう』」と語った10日の第一声に比べると大幅な変わりようである。ウォールストリート・ジャーナルは「小池新党は自民党の派閥」(10月3日)と断じ、ロイターも「(小池氏の政策は)安倍首相の政策理念とほとんど変わらない」と報じた(10月11日)。たしかに、「緊張感」をもたらすのなら、党内の派閥で十分だ。

 朝日新聞の社説(10月9日)は、「政権交代に期待して希望の党に一票を投じたら、自民・希望の大連立政権ができた――。有権者にとって、そんな事態も起きかねない」と警告しているが、その可能性は十分にある。現時点で小池氏を舌鋒鋭く批判している安倍首相の支持者たちは、そのときどんな態度を取るのだろうか?

なお、JX通信の情勢調査によると、小池氏の支持率は37%、不支持率は54%に上る(産経ニュース 10月10日)。また、NHKの世論調査によると、安倍内閣を「支持する」と答えた人は37%、「支持しない」と答えた人は43%と、不支持率が上回った(NHK NEWS WEB 10月10日)。不支持率が高い者同士のアウフヘーベンは起こるのかもしれない。

安倍晋三 首相
「(森友・加計疑惑について)私もこれまで予算委員会や閉会中審査で丁寧に説明を重ねてまいりました」
日本記者クラブでの党首討論会 10月8日

「国難突破解散」をぶち上げた安倍首相。街頭でのヤジを警戒してか、会場・時間とも、事前告知は一切なしの“ステルス遊説”で全国を回っていた。演説の内容は北朝鮮問題が中心で、森友・加計学園疑惑には一切言及していない(『週刊文春』10月19日号)。「批判も受け止め国民に説明もしながら選挙を行う」と自ら語っていたはずなのに(日テレNEWS24 9月25日)、なぜやらないんだろう? 説明したくないなら、最初からそう言えばいいのにね。

 8日に行われた日本記者クラブ主催の党首討論会では、希望の党の小池百合子代表らから、森友学園への国有地売却や加計学園の獣医学部の新設問題について問われたが、安倍首相は「国会で丁寧に説明を重ねてきた」と一蹴、これまでの主張を繰り返すにとどまった。9月25日の国会解散についての記者会見でも「私自身も衆参の閉会中審査に出席するなど、丁寧な説明を積み重ねてきた」と、これまでの対応を正当化している(毎日新聞 9月26日)。

「何か指摘があれば、そのつど真摯に説明責任を果たしていく。国民から信頼が得られるように、冷静に、一つ一つ、丁寧に説明する努力を積み重ねていかなければならないという決意を新たにしている」。安倍首相がこう語ったのは、6月の国会閉会にともなう記者会見でのこと(NHK NEWS WEB 6月19日)。首相が低姿勢になったのは、内閣支持率が落ち込んでいたからだ。その後、内閣支持率は26%にまで落ち込み(毎日新聞 7月23日)、7月24日、25日での閉会中審査でも国民の疑念が晴れたとは到底言えなかった。内閣支持率が上がるのは、内閣改造を行い北朝鮮問題が深刻化した8月以降。それ以降、いつの間にか首相の「説明をしていく」は「説明をした」に変わってしまった。わかりやすいといえば実にわかりやすい。

 9日夜のTBS系『NEWS23』で行われた党首討論では、今治市職員が内閣府を訪れた際の面会記録が黒塗りになっている問題について、「なぜ公開しないのか」と小池百合子希望の党代表や枝野幸男立憲民主党代表らから問われた安倍首相だが、明確な回答はしないまま「大切なことは、私が(獣医学部新設に)関与していたか(否か)に尽きる」と繰り返した。後ろ暗いことがなければ堂々と公開すればいい。

 首相は、国家戦略特区ワーキンググループの八田達夫座長や加戸守行・前愛媛県知事ら、特区での獣医学部新設を推進する側の主張が十分に報道されていないとも指摘していたが、それなら雲隠れしたままの加計孝太郎理事長本人を国会に呼んで語ってもらえばいいんじゃないだろうか。あらゆるメディアがきっちり報道すると思う。

安倍晋三 首相
「こういう詐欺を働く人物のつくった学校でですね、妻が名誉校長を引き受けたことはやっぱり問題だった。やはりこういう人だからだまされてしまった」
毎日新聞 10月12日

 そんな折、11日夜のテレビ朝日系『報道ステーション』で行われた党首討論で、森友学園疑惑について問われた安倍首相は、籠池泰典被告について「詐欺を働く人物」と断言した。籠池被告は詐欺罪などで逮捕されたが、裁判の判決は出ていない。

 ブログで首相の発言を「首相失格の暴言」と批判した元検事の郷原信郎弁護士は、朝日新聞の取材に対して「三権分立の一角をなす行政の長が、起訴されている被告のことを、司法の場で裁かれていないのに『詐欺を働く人』と決めつけた。無罪推定の原則をおかしており、大変な人権侵害だ」と話した(朝日新聞デジタル 10月13日)。

 元東京高裁部総括判事の木谷明弁護士は「司法手続きが終わっておらず、刑事責任が固まったわけではないのに、犯人と決め付けて発言するのは問題だ。自身を正当化するために他人をおとしめたと言われても仕方がない」と首相の発言を批判している(日刊スポーツ 10月12日)。

 安倍首相は以前、「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」「私の考え方に非常に共鳴した人」と森友学園と籠池氏を絶賛していたが、同学園による国有地取得問題などの事実関係が明らかになるにつれて、学園側と距離を置くようになったのは周知のとおり(東京新聞 2月28日)。

 安倍昭恵首相夫人と籠池被告ら森友学園側との蜜月ぶりは疑いようがなく、名誉校長就任の経緯については、「籠池園長、副園長の本当に熱い熱い思いを何度も聞かせていただいて、この『瑞穂の國記念小學院』で何か私もお役に立てればいいなと思って……」と語っていた(BuzzFeedNEWS 2月24日)。詐欺師に「騙された」というのなら、被害者とされる昭恵夫人の証言をぜひとも聞かなければなるまい。安倍首相の地元で精力的に選挙活動を展開しているのだから、ぜひ証言してほしいものだ。

菅義偉 官房長官
「反対したさ。でも、総理が言うんだ。国会が始まったら、またモリ・カケ(森友・加計両学園問題)ばかりだろ、もうリセットしたいんだって」
毎日新聞 10月7日

 毎日新聞編集委員、伊藤智永氏によるコラムより。衆院解散に反対だったはずの菅官房長官に、側近議員が「なぜ同意したんですか」と尋ねたところ、このように答えたのだという。

「日本をリセットする」とは小池百合子氏が掲げたキャッチフレーズだが、安倍首相もリセットしたがっていたとは思わなかった。過去をリセットして「なかったことにする」という考え方が2人に共通しているのだろうか。

小池百合子 希望の党代表
「どうだっていいじゃない、そんなこと。もっと前向きに次のこと考えなきゃ」
毎日新聞 10月7日

 同じく伊藤氏のコラムより。政局が静かだった8月、小池氏と会った旧知の大学教授が築地市場移転の話を振ったところ、このように一笑に付されたという。このとき、小池氏の頭の中は国政のことで一杯だったのだろう。

「希望の党の代表に彼女が就いたというニュースを見て、『この人はもう、都知事の職を投げ出したいんだな』と確信しましたね」と呆れるのは、豊洲移転反対派の急先鋒、「築地女将さん会」の山口タイ会長。一方、移転賛成派のマグロ仲卸業・生田与克氏は次のように語る。「ここまで散々ひっかき回して、結局いつ移転するのかさえいまだはっきりせず、設備の維持費用が嵩むばかり。我々を振り回すのはもういい加減にやめてほしい」(『週刊新潮』10月19日号)。

 翻弄される移転賛成派と反対派が、「どうだっていいじゃない、そんなこと」という小池発言を見たら、何を思うだろうか。「我々賛成派と反対派が、“小池さんは、とにかく一刻も早く都知事を辞任すべき”という点で、はじめて意見が一致しました」(生田氏)

ティム・ライト ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)アジア太平洋地区統括
「70年以上にわたって休むことなく核廃絶に取り組んできた被爆者への裏切りになる」
産経ニュース 10月10日

 今年のノーベル賞が発表され、日系英国人作家のカズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞、安倍首相も祝福のコメントを送った。

 ノーベル平和賞を受賞したのは、核兵器禁止条約採択に貢献した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」だ。同条約には日本は参加しておらず、今回のノーベル平和賞受賞について首相官邸と外務省は当初コメントを出さなかった。共産党の志位和夫委員長は「ICANが広島、長崎の被爆者はじめ市民社会全体と共に進めた活動が評価された。この機会に、禁止条約に日本政府が調印することを重ねて強く求める」とコメントしている(朝日新聞デジタル 10月6日)。

 ICANは10月10日にニューヨークで記者会見を開き、核兵器禁止条約に参加しない米国や日本の対応を批判、あらためて参加を呼びかけた。ICANで日本人唯一の国際運営委員を務める川崎哲氏は、「政府が禁止条約を評価しないことに失望し、憤りを感じる。北朝鮮が核開発を加速させる今だからこそ、禁止条約についての議論が必要だ」と政府を厳しく批判。そのうえで「北朝鮮の非核化ばかりが強調されているが、そもそも核兵器そのものが悪であり、すべての国が手放さなければならない」と述べ、アメリカなどの核保有国に加え、日本なども条約に参加して核廃絶を目指すべきだと訴えた(NHK NEWS WEB 10月11日)。

(大山 くまお)

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