《令和ヤンキー伝 side“A”》綾小路翔も「グッときた」荒川河川敷タイマン事件の全真相

《令和ヤンキー伝 side“A”》綾小路翔も「グッときた」荒川河川敷タイマン事件の全真相

警視庁千住署 ©文藝春秋

 警視庁千住署は10月30日、事前に申し合わせて喧嘩をしたとして、決闘と傷害の疑いで足立区と荒川区に住む16歳の少年AとBの2人を書類送検した。

 今年1月、荒川区の少年Bは交際していた彼女C子のことを足立区の少年AにSNS上で批判され立腹。「タイマンしよう」とAに決闘を申し込んだ。事前に「武器は使用しない」「ギブアップするまでやる」「被害届を出さない」などのルールが決められ、翌日荒川の河川敷で30分程の決闘がおこなわれた。

 氣志團の綾小路翔はこの決闘事件のニュースを受け、「何だろう。グッと来てしまった」とツイート。「河川敷でタイマン。ガールフレンドの尊厳を取り戻す為の決闘。武器無し、チクリ無し、ギブアップ有り。警官からの逃走。もう曲書けるもんな」とも呟いた。

「週刊文春デジタル」では決闘し書類送検された少年2人に話を聞いた。

 足立区在住のAは、都内の高校に通う高校1年生(事件当時は中学3年)。中学時代はバスケ部で体格は大柄の少年。深夜徘徊、喫煙、飲酒などで補導歴は多数あるという。趣味は「モンスターストライク」「コール オブ デューティ」などの携帯ゲームとアニメ鑑賞。最近はライトノベル「Re:ゼロから始める異世界生活」にハマっている。好きなヤンキー漫画は「今日から俺は!!」「HIGH & LOW」。好きな芸能人は新垣結衣。将来の夢はゲーム関係の職につくこと。

 決闘のきっかけは、日課となっていた何気ないネットサーフィンだった。

「SNSを見ていたら中学の同じクラスのC子とドラマ『今日から俺は!!』のシーンを真似たカップル動画(カップルが一緒に映ってイチャイチャしている動画)をアップしている奴がいたんですよ。それがB。C子とはあまり仲が良くなかったから、悪ふざけで『お前なんでC子なんかと付き合ってるの? やめた方がいいよ』とおちょくったコメントをしたんです。

 それにBがめっちゃキレちゃって、Bから『タイマンしよう』とLINEで言ってきた。売られた喧嘩は買うしかないっしょと思って、やるならやってやるよという気持ちで『いいよ』と返事しました。

 流れで『明日タイマン張ろう』となって、時間と場所はBが決めました。『持ち検(凶器を持っていないか持ち物検査)』とか『武器(凶器)は使わない』『顔面を殴るのはあり』『ギブアップするまでやる』『被害届は出さない』とかLINEで送り合って決めたんです。その間はお互い結構冷静でした」

 実はAはタイマン勝負が初めてで、内心は怯え気後れしていたという。だが断れないのには理由があった。

「他区との喧嘩で地元を背負ってる感じがして、絶対負けたくなかった。僕らの年代って学校にヤンチャな子が少ないから区で群れる。他の区には舐められたくないんです。朝は何も食べなかった。腹パン(腹にパンチ)されて吐いても嫌だったし、身体が重くなるかなと思ったんで。動きやすい服だったと思います。その日は学校休みで友達5、6人くらいに声をかけていてゴチャマン(複数での喧嘩)になることに備えました。制服だと学校がバレるので、みんな私服で向かいました。友達には強がって『タイマン負けたらみんなに焼肉おごってやる』と言ってしまいました」

 決闘の地となったのは足立区と荒川区の区境そばにある荒川、西新井橋下の河川敷。正午、土手に友人を待たせ、AはBと対峙した。

「ずっと心臓の音がドキドキしていました。Bも仲間数人を土手に待たせていました。SNSにアップして住所とかが晒されるのは嫌だったので、写真や動画を撮るのは禁止ということを全員に話しました。その後、互いに武器がないかを確認しました」

 足立区でもAの周辺で行われているタイマンのルールでは、帽子などの物を投げ、落ちた瞬間に喧嘩を開始するというのが通例だった。だが、Bとのタイマンはいっこうに始まらない。シビレを切らしたギャラリーの一人が開始の声を上げた。

「まず、僕が左ストレートを相手の顔に決めましたよ。そこから、相手からも殴られて、めちゃくちゃ痛かった。それから長い間、距離をとってお互い牽制し合っていました。周囲の声はまったく聞こえなかった。無言で見守っていたと思います。無我夢中だったので喧嘩中のことは正直覚えていないですが、鼻にパンチをもらって鼻血がダラダラと出て、Tシャツはビリビリ。長い時間やっていたと思います。30分くらいだったと周りは言っていますが、1時間くらいやったように感じました」

 途中、近隣住民の110番通報により警察官が駆けつけ、決闘は中断となった。Aは警察官に取り押さえられた。Bをはじめ、友人は皆その場から逃げ去ったという。

「気がつくとチャリマツ(自転車の警察官)の一人が土手を駆け降りてきました。自分は服を掴まれて逃げられなかったのですが、僕以外は全員逃げていきました。そこから、サイレンを鳴らしたパトカーも集まってきて、署に連行されました。署では事情聴取をされましたが、チクリは無しと決めていたんで、仲間の名前もBの名前も言わなかったです。

 結局、携帯を没収されてバレてしまいましたけどね。警察から『被害届出したら?』と何回か言われましたけど、被害届を出さない約束をしていたので、被害届は出さなかったです。警察に病院に連れて行かれたときに親に迎えに来てもらったのですが、特に怒られはしなかったです。父親にも『喧嘩したのか? 勝ったのか? 負けたのか?』と聞かれ『警察が来たから引き分けで終わってしまった』と伝えました。父親も昔ヤンチャだったと聞いています(笑)」

 Aは父親から「女、年下、老人には手をださないこと」「喧嘩は集団で一人をやらないこと」を常日頃から言われてきたという。 

 警察から解放されたAは、隠し持っていた別のスマホでBと改めて連絡を取り、近所のショッピングセンターで合流した。Bは荒川区の仲間と一緒にいたのだが、Bの周囲には足立区のAの仲間たちもいた。

「僕らのタイマンが長かったこともあって、途中で皆ダルくなって仲良くなってしまったそうです。『このあと遊びに行こう』って(笑)。自分としてもやれることしてスッキリした気持ちだったから、Bと話しました。『俺実は“喧嘩童貞(喧嘩したことがない)”だった』『俺もそう』という会話になって、『どうだった?』『パンチ重かったよ』『警察来て終わっちゃったけど、リベンジマッチする?』『まあ、引き分けでいいか』てな感じです。

 Bを改めて見ると、ガタイがいいなと思いました。ちょっとウザかったのは、まわりが焼肉のことを言ってきたことですが、あれは引き分けですから払いたくないですね(笑)。その後も警察の取り調べが3、4回ありました。中3の終わりくらいまで2、3カ月は放課後に調書を取りに呼び出されました。あのとき僕は彼女がいなくて、Bの気持ちがわからなかった。今、自分の彼女のことで同じようなことをされたら、僕もBみたいになると思います」

 2人はすっかり意気投合。今では互いの地元を行き来し、ショッピングセンター前でたむろし、携帯ゲームをやり合う“マブダチ”だという。

【荒川決闘ドキュメント side“B”】元野球少年が告白「彼女をめぐってゴチャマンは避けたかった」 へ続く

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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