流行りの“ニセ医学”に「引っ掛からないために覚えたい!」医師が教える4カ条

流行りの“ニセ医学”に「引っ掛からないために覚えたい!」医師が教える4カ条

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 今年の流行語大賞には間に合わなかったが、「血液クレンジング」の問題が表面化したことで、「ニセ医学」とか「トンデモ医療」という言葉がネット上に氾濫している。科学的根拠に乏しい“治療法”のことなのだが、こうした行為を患者に行う医師と、それを受けようとする患者が存在するのは、何も今に始まったことではない。問題化しては立ち消え、また時間が経つと湧き出てくることの繰り返しが連綿と続いているのだ。

 そこで、『“意識高い系”がハマるニセ医学が危ない!』(育鵬社刊)の著者で五本木クリニック院長の桑満おさむ医師に話を聞いた。

■トンデモ医療の多くは「毒にも薬にもならない治療法」の焼き直し

 トンデモ医療の対象として話題の「血液クレンジング」とは、体内から取り出した血液にオゾンを加えて活性化させ、それを体内に戻すという“治療法”のこと。オゾンに反応して活性化した血液が体内を循環することで、様々な効果が得られる、という触れ込みだ。これを行うクリニックのホームページによると、疲労回復、肌や細胞の若返り、病気にかかりにくくなる(免疫力向上)、血行改善などの効果が期待できるという。

 その程度の改善を「期待する」ために、高額な(そのクリニックでは1回13,000円)の医療費を払える裕福な人は受ければいいのだが、その先を読んでいくと穏やかならぬ文言が出てくる。「治療効果の期待できる疾患」として、肝炎、HIV、インフルエンザ、がん、悪性リンパ腫、白血病……。そんな重病まで1回13,000円で治せるなら、こんな結構なことはない。

 しかし、桑満医師は一刀両断に切り捨てる。

「いまから100年以上も前の1892年に、結核治療法として考え出された“オゾン療法”の焼き直しです。当時は結核に対する効果が認められたものの、限定的なものに過ぎません」

 桑満医師によると、トンデモ医療の多くは、こうして過去にあった「毒にも薬にもならない治療法」が、名前を変えて使われていることが多いという。

「体が温まったような気がするとか、何となくシャキッとするとか、効いたのかどうだかわからないような“効果”に過ぎない。白衣を着た医師の言葉の力は患者を納得させるには強く、「効果が出てますね」と言われると、そんな気分になるものなんです」(桑満医師、以下同)

 では、がんや白血病はどうなのか。

「多くの場合、こうした重大疾患の患者は、トンデモ医療だけを受けているわけではありません。化学療法などの“標準治療”と併用しています。なので、効果が出たときはトンデモ医療の成果にして、効かないときは『標準治療をやってるからだ』という言い訳が用意されている」

 そんなトンデモ医療に引っ掛からないために覚えておきたい4カ条を、桑満医師に解説してもらう。

■その1)最新の医療技術なのに「エビデンスが古い」

 医療技術の科学的な根拠のことをエビデンスという。その治療法が最新の医療技術であるはずなのに、根拠となる医学論文が古いのは、すでに触れた「過去に消えて行った医療の焼き直し」である危険性が高いというのだ。それを知るには、治療法の説明に使われている引用論文やグラフの出典に注意したい。

「少なくとも最新の医療を謳うのであれば、遺伝子解析ができた21世紀以降の論文を根拠にしている必要がある。もちろん『The New England Journal of Medicine』や『The Lancet』のような権威ある医学誌に載った論文が根拠であるに越したことはないが、評価の高くない専門誌にキラリと光る論文が載っていることもあるので、こればかりは素人には分からないと思いますが……」

■その2)低く見るように「“標準治療”を悪くいう」

 標準治療とは健康保険が適用される一般的な治療法のこと。厚生労働省が認めた公認の治療技術だ。その標準治療を低く見るようなコメントが医師の口から出たら要注意だ。

「まず標準治療を優先するのが本来の医療の在り方です。それを、あたかも標準治療では効かないけれど、こっちの自由診療なら治せます――といったセールストークを使ってきたら、間違いなくトンデモ医療と考えていいでしょう」

 トンデモ医療は標準治療になっていないので、基本的に自由診療だ。ただ、間違ってはいけないのは、自由診療がすべてトンデモ医療というわけではないという点だ。残念ながら日本では保険診療適用となっていなくても、海外では標準医療とされている治療が皆無ではない。

「トンデモ医療に飛びつく富裕層は、標準治療の“標準”という言葉に納得がいかないのです。“標準”があるなら“特別”があるはず、と考えて、より高額なものに手を出そうとする、お金持ち特有の心理が働くのです」

 医療は鰻重ではない。「上」とか「並」とか「松竹梅」は存在しないのだ。

■その3)重要な部分はわざと難しい表現で「説明が理解できない」

 ご存知の通り、医学部に入るのは簡単なことではない。高い競争率を乗り越えて医学部に入り、努力して卒業し、艱難辛苦の末に医師国家試験を通って医師になる。そんな優秀な人であれば、患者に勧める医療の内容を、患者が理解できるように説明できるはずだ。

 しかし、トンデモ医療の場合はそうでもないことが多いという。

「患者が理解できては困るのです。だから重要な部分はわざと難しい表現を使ったりして、“理解”ではなく“納得”をさせるように説明するのです。少なくとも患者の側に中学生程度の知識があって理解できない説明なら、危険と考えていいでしょう。即決せずにセカンドオピニオン、サードオピニオンを取るべきです」

■その4)ブログやSNSで紹介「やたらと芸能人が出てくる」

 今回の血液クレンジングの問題も、芸能人や著名人がブログやSNSで紹介したことが発端となったらしい。

「同じ医療でも“美容”に関することであれば、芸能人の意見も参考にできるでしょう。でも、病気の治療に関して、芸能人や著名人の意見を参考にすることにどれほどの合理性があるのか疑問です。少なくとも大切な命や健康を任せる対象ではないと考えるのが普通でしょう」

 医療機関には、患者のきわめて高度な個人情報が集積する。当然そこで働く医師には、患者の情報を洩らしてはならない“守秘義務”がある。

「医師が自分のブログなどで『俳優の△△さんが当院を受診されて、こんな治療をしました』なんてことを書き込むのは守秘義務違反です。でも、芸能人の側が『△△先生に診てもらいました』と書く分には問題ない。ただ、私などは『この人はちゃんとお金を払って診てもらっているのだろうか……』なんて勘ぐってしまうんです」

 自身の健康に直結する事なので、情報の出どころや信憑性には、十分にお気をつけ下さい。

(長田 昭二)

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