「左翼に転向した」と叩かれる私が見た“愛国ビジネス”――「保守ムラ」底辺の人びとの金銭事情

「左翼に転向した」と叩かれる私が見た“愛国ビジネス”――「保守ムラ」底辺の人びとの金銭事情

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「愛国ビジネス」をテーマとした衝撃の小説 『愛国商売』 (小学館文庫)をこのたび上梓した古谷経衡氏(37)が、作品の舞台裏を描く集中連載。最終回は、「保守ムラ」最底辺の人びとがいかに生業を営んでいるかを解説する(全3回の3回目/ #1 、 #2 より続く)。

◆ ◆ ◆

■狙い目は「地方の市議会議員」

 本稿では、保守系言論人の「愛国商売」下記4パターンのうち、

(1)出版専業の保守系言論人として(地上波露出なし)
(2)信者を囲い込む(各種勉強会、私塾等を主宰)
(3)中小零細企業経営者などのパトロンを付ける
(4)活動家方面に軸足を置いて任意団体を設立し、寄付や会費を募る

「(4)活動家方面に軸足を置いて任意団体を設立し、寄付や会費を募る」という形態を見ていくことにしよう。 #1 で、私はこの手法を採るのは「保守業界(ムラ)の中でも底辺に位置する言論人」であると書いたが、実際にそうである。

 保守系言論人の「夢」である出版媒体で一発も当たらず、「小ヒット(1万〜3万部未満での重版等)」さえ出せず(そもそも筆が遅い&文章構成力がない)……それが故にと言うべきか、 #2 で書いた勉強会・私塾を運営するという方法でのエンクロージャー(信徒囲い込み)商法も上手くいかない、という鳴かず飛ばずの保守系言論人は、大体においてこの活動家方面に行く。

 拙著 『愛国商売』 の中でもある男が、右派のネットワークを通じて地方の市議会議員に立候補する策謀をめぐらす場面が出てくる。現実にも、保守界隈(ムラ)の人的リソースを最大限に活用して、人口5万〜50万人くらいの、中堅都市の市議会議員に立候補して生活を成り立たせようという者は大勢いる。

 むろん、市議会議員への立候補=被選挙権の行使は国民に認められた権利だ。なぜ右派のネットワークを通じて地方の市議会議員に立候補する策謀をめぐらすのか。それは選挙告示時にポスターを張ったり、チラシを配ったりする、なんやかやのボランティアスタッフが、いくら小さな市であったとしても、最低限度必要だからである。

 そのネットワークは、政治的イデオロギーで結びついている保守界隈から都合をつけるのが、一番手っ取り早い。そういう目論見で、出版人にも教祖にもなれない保守系言論人は、尖閣に公務員常駐とか、憲法改正して国防軍にとか、韓国に対して物言う姿勢をとか、およそ地方議会議員としては疑問符が付くようなことをまくしたてれば、ボランティアの5名や10名は集まってくるのだから楽ちんである。

 そうしてこういった者が、あっけらかんと最下位付近で当選してしまうのも現実で、これはもう、右派がどうのという以前に、日本の地方自治のあり方が問われていると思う。

■右派の政治目標「ウ台在」とは

 さらに、議員立候補の方面に行かない「保守業界の底辺」にいる保守系言論人は、右傾雑誌・SNS・ネット動画という「三位一体」の中で細々と原稿を書いて口を糊する場合が多いが、最も多いのが強烈なオピニオンを打ち出して政治活動のための寄付を募るというやり方である。

 私が「ウ台在(うたいざい)」と呼んでいる右派特有の政治活動目標がある。ウはウイグル問題の「ウ」、台は台湾独立の「台」、在は在日コリアンの「在」で、この三つのどれか一つを政治目標として強烈にアピールすることにより、原稿やネット番組での出演収入と共に、支援者からの寄付で自らの生活を支えていこうという不埒な者が使う手である。

 そもそも、これらは法人格を持たない任意団体が圧倒的で、自分のブログ兼ウェブサイトに堂々と寄付口座を明示している場合が多く、収入の実態がどうなっているかの監視体制はない。

 むろん、ウイグル問題、台湾独立(――というか、反中国共産党)問題でまじめにやっている活動家もいるのだろうし、私は彼らの全てを否定するわけではないが、寄付の使途を公開している例を私は寡聞にして聞かないので、生活と混同してしまっていると疑われても仕方ないのではないか。

 また「ウ台在」の最後の「在」については、在日コリアンへのヘイトスピーチが主体であり、政治活動ではなく単なる差別扇動であるが、寄付から生まれたのが在特会(在日特権を許さない市民の会)であることは知っておいたほうが良いだろう。

■ほぼ寄付だけで運営されていたネット放送局

 最後に、私は事実上支援者からの寄付だけで運営されていたネット放送局について小項を割かなければならないと思う。この局は、 #1 で「古谷君、これから生活はどうするんだい?」などと嫌味を言われた局と同一である。

 この局の凄いところは、番組制作費の大半を寄付で賄っているばかりか、別口で政治団体を作り、そこでも寄付を募っていたことである。やれ「NHKを訴える」、やれ「尖閣諸島に行く船を買う」、やれ「朝日新聞を訴える」……。何か活動があると、必ず支援者から寄付を募り、しかもその額は数百万円ではなく、もっと上の、数千万円から億に到達する金額である。

 ここでも、彼らを支えるのは中高年の中産階級の男性で、自営業者が極端に多い。私は政治活動をするのにカンパを集めるのが「まるで商売の様だ」と揶揄するつもりはない。だが、時としてそういった風に思える、思われてしまうことを誰が否定できようか、と問うているだけである。

 当該局にしたところで、寄付先は番組と政治団体で厳格に分けられていると主張するが、寄付で賄われている政治団体の活動の様子を番組で紹介し、番組制作スタッフに給与が支払われているのだから自家消費といえなくもない。ようするに、民間の政治活動における寄付は、どこからが純然たる政治活動で、どこからが「商売的である」のかを線引きすることが極めて難しいという事だ。

■なぜ私は「愛国商売」と決別したか

 以上、3回にわたって、保守系言論人がどうやって生活しているのか、を省察してまとめて筆を進めてみた。実際にはもっと細かい類型があり、当然個々別々の事情が勘案されるので、私の書いたことが全ての事例に当てはまる、というものではない。

 地上波に出ることはもとより、右傾雑誌に寄稿する事すらも筆不精で面倒だが、ネット番組では好き放題なトンデモ政権擁護発言をする、という正真正銘の「自称」保守系言論人の収入源を調べていくと、一生涯働く必要がない評価額の都内一等地の土地の所有権者であり、その上に建てたビルのテナント収入で何不自由なく暮らしていたり、或いは大手上場企業を退職して悠々年金暮らしをして後顧の憂いが無いから好き勝手に差別活動をやっています、という人物もいる。

 100人の商人(あきんど)が居れば、100通りの商売がある。「愛国商売」にも、愛国の名をかさに着て、保守や祖国を叫ぶ人々の数だけ、独特の商法があると思ってよろしいが、大体が本稿で書いた通り、4つのパターンのどれかに当てはまるのが常である。しかしこの「愛国商売」を概観すると、はっきり言って他の商売よりも楽だと思う。商圏調査も要らない。客単価の向上に努める必要もない。なにより原価がかからない。

 #1の記事冒頭で述べた通り、私は5、6年前から、かつて「同じ釜の飯を食」った人々から「カネの為に左翼(ネット右翼用語ではパヨク)に転向した」といわれる。私から言わせると、差別と品性下劣の宴会芸に堕落して転向したのはそっちの方で、私は小学生のころからタカ派で何も変わっていないと言いたい。

 なにより、カネを優先するなら今でも我慢して保守論壇(ムラ)の辺境に居を構えていたであろう。

 私は他人を騙し、或いは隣国人を傷つけてまで、ガラクタを高く売りつける商人にだけはなりたくないだけだ。そんなものは商人の風上にも置けぬ。

( #1 、 #2 を読む)

(古谷 経衡)

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