池袋暴走・飯塚元院長「高齢者が安心して運転できるよう」発言に、遺族の夫が漏らした胸中

【池袋暴走事故】飯塚幸三元院長の告白映像に遺族男性は体の震え止まらず 知人明かす

記事まとめ

  • 池袋で母子が死亡した事故で、飯塚元院長は「高齢者が安心して運転できるよう」と発言
  • 遺族男性は取材へのコメントを控えたが、周囲には苦しい胸の内を打ち明けていた
  • 遺族男性は元院長の映像に体の震えが止まらなかったといい、虚しさが湧き上ったという

池袋暴走・飯塚元院長「高齢者が安心して運転できるよう」発言に、遺族の夫が漏らした胸中

池袋暴走・飯塚元院長「高齢者が安心して運転できるよう」発言に、遺族の夫が漏らした胸中

実況見分に立ち会う飯塚幸三元院長

「事故から7カ月、きょうがスタートライン。被害者参加制度を使って、刑事裁判に臨んでいきたい」池袋で暴走する自動車による死傷事故で、妻子を失った遺族男性は、11月12日の会見でそう語った。

◆ ◆ ◆

■「警視庁は起訴を求める『厳重処分』の意見書をつけています」

 今年4月、池袋で起きた暴走事故で、運転していた飯塚幸三・旧通産省工業技術院元院長(88)が11月12日、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で書類送検された。

 事故は4月19日の午後0時半ごろに発生。横断歩道を渡っていた松永真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃん(当時3)が死亡したほか、10人が負傷した。

 社会部記者が解説する。

「これまで入院中の被害者への聴取などに時間が掛かり、事故から半年以上が過ぎてからの送検となりました。また、警視庁は起訴を求める『厳重処分』の意見書をつけています」

 送検直前の9日、TBSの直撃取材に応じて、飯塚容疑者が告白する姿が放映された。

 両手に杖をついた飯塚容疑者は「おごりがあったのかなと思い、反省している。自分の体力に当時は自信があった。(被害者に)おわびの気持ちをずっと持ち続けていることをお伝えいただきたい」と、ゆっくりした口調で謝罪の言葉を述べた。

 その後、「安全な車を開発するように、メーカーの方に心がけていただきたい」、「高齢者が安心して運転できるような、外出できるような世の中になってほしい」と続けた。

 警視庁は、ドライブレコーダーの記録などを分析した結果、事故原因について「アクセルとブレーキの踏み間違い」と断定している。事故の目撃者からも「(事故を起こした車両は)ブレーキランプが点いていなかった」との証言があり、メーカーと警視庁の共同での車両検査では、事故車両のブレーキに異常は確認されなかった。

 だが、飯塚容疑者は事故直後の聴取に「アクセルから足を離したが、ペダルが戻らなかった」と主張。その後は「ブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性がある」とも供述していたが、「今回の映像では飯塚容疑者が当初の自説を再び繰り返し、補強しているようにも見えます」(前出・社会部記者)

 実は、今年5月に、週刊文春は飯塚容疑者の息子を直撃していた。

■身体機能の衰えを自覚していながら……

「このたびは本当に申し訳ございません。警察の方が捜査しているところです」

 そう言って、頭を下げた。記者が、容疑者は手足の震えや筋肉のこわばりが起きるパーキンソン病に罹患しているのではないかと尋ねると、答えずに一礼して自宅に入っていった。

 遺族の代理人である高橋正人弁護士は疑問を呈する。

「飯塚氏は事故前から杖を使用するなど、身体機能の衰えを本人が自覚していました。当然、運転は通常より慎重になるべきで、注意義務違反の程度は重いと考えられます。また、(自動車の安全性向上についての発言は)第三者が言うことであって、加害者本人が言うのはおかしいのではないでしょうか。反省や自覚の念は、少なくとも私には読み取れなかった。常に上から目線、という態度が自然に出ているように感じました」

■「軽い罪で済むという前例を絶対につくりたくない」

 妻子を失った遺族男性の心中は、いかほどだろうか。

 男性は、週刊文春8月15・22日号のインタビューで、加害者の処罰について、こう話していた。

「司法で裁ける限りの厳罰に処してほしいと思います」

「しっかりと、罪に見合った刑期で償ってほしい。2人が亡くなり、10人が怪我をするという重大な結果を引き起こしておきながら、軽い罪で済むという前例を絶対につくりたくない」

 今回、あらためて男性に取材を申し込んだが、「あくまでニュースの映像を見ただけで、(飯塚氏が語った)全ての言葉を聞いたわけではないので、コメントは控えさせていただきます」と答えた。

 だが、周囲には苦しい胸の内を打ち明けていた。遺族男性と親しい知人が話す。

■「彼は体の震えが止まらなかったそうです」

「ニュースの映像を見た彼は、体の震えが止まらなかったそうです。どうしてここまで体が震えるのか。自分でも理由がわからないほど激しく湧き上がってきた感情は、怒りではなく、虚しさだったそうです」

 男性は容疑者の言葉や態度について「あまりに衝撃的で、激しく心を揺さぶられた」と話したという。

 そして、彼は知人にこう洩らした。

「自分にとってのすべてだった、最愛の家族を2人同時に失った。2人の人間が亡くなったという事実にしっかりと向き合っているのは、私たち遺族だけだったのか」

■「僕が憎しみの感情にとらわれている姿を、2人は見たくないと思う」

 男性はこれまでずっと飯塚容疑者への怒りを自制してきた。8月の週刊文春インタビューではこう語っていた。

「加害者に対して、例えば『2人と同じ目に遭ってほしい』とは思いたくない。もちろん心から悲しいし、悔しいです。でも、莉子や真菜は、きっと僕のことを『優しい父』『優しい夫』と思ってくれていたはずです。僕が憎しみの感情にとらわれている姿を、2人は見たくないと思うんです」

 今でも同じ思いなのだろうか。

「憎しみの感情にとらわれたくないという気持ちを持ち続けられるように、彼は何度も何度も、自分に言い聞かせながら必死に毎日を送っています」(前出・遺族男性と親しい知人)

 遺族男性は、再発防止への活動を続けていくという。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年11月21日号)

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