秋元司議員逮捕 特捜部の捜査で浮かび上がってきたカジノ利権とパチンコ業界との“蜜月”

【IR汚職で秋元司議員を逮捕】カジノ利権とパチンコ業界との“蜜月”特捜部捜査で浮上

記事まとめ

  • IR汚職事件で東京地検特捜部が25日、収賄容疑で秋元司議員を逮捕した
  • 特捜部が狙う“本線”は、あくまでも中国企業「500ドットコム」の政界工作だそう
  • 特捜部は秋元氏の"別の疑惑"の捜査も水面下で進め秋元氏の"錬金術"に着目しているよう

秋元司議員逮捕 特捜部の捜査で浮かび上がってきたカジノ利権とパチンコ業界との“蜜月”

秋元司議員逮捕 特捜部の捜査で浮かび上がってきたカジノ利権とパチンコ業界との“蜜月”

2018年7月19日、参院内閣委員会でカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案が可決した際の秋元司国交副大臣(右)。隣は石井啓一国交相 ©AFLO

 かつて“最強の捜査機関”と呼ばれた東京地検特捜部が、復権をかけて臨んだIR(カジノを含む統合型リゾート)汚職がついに火を噴いた。

■羊羹入りの紙袋に入った300万円の現金を受領

 2019年12月25日、東京地検特捜部は収賄容疑で秋元司議員(48)を逮捕した。外為法違反を入り口に政界に切り込む捜査はロッキード事件を彷彿とさせるが、今回の逮捕で浮かび上がってきたのは、カジノ利権の実態と規制業界を自在に遊泳してきた秋元氏の“錬金術”の一端でもあった。

 秋元氏は2017年9月、議員会館の事務所でIR参入を目指す中国企業「500ドットコム」側から羊羹入りの紙袋に入った300万円の現金を受領。さらに2018年2月には、500ドットコムがIR誘致を目指していた北海道・留寿都村への旅行代金70万円相当の供与を受けていたとされている。

「秋元氏と500ドットコムを繋いだキーマンが、同社の“社長室日本事業顧問”の肩書を持つ紺野昌彦氏でした。紺野氏は当初から贈賄の事実関係を具体的に話しており、司法取引を望んでいたようですが、特捜部は別ルートからも“証拠”を入手。司法取引には応じず、結局紺野氏は逮捕されています」(検察関係者)

■“本線”はあくまでも500ドットコムの政界工作

 紺野氏は自らのSNSで、秋元氏とともに500ドットコムの中国・深?の本社を訪れた自民党の白須賀貴樹氏ら国会議員との親密な関係をアピール。逮捕後には、紺野氏と近い12人の国会議員のリストが怪文書のような形で永田町界隈に出回ってもいた。

「特捜部が狙う“本線”は、あくまでも留寿都を舞台にした500ドットコムの政界工作です。秋元氏以外にも同社と接触したことがあるIR議連の複数の議員からはすでに任意で事情を聴いているようです」(同前)

 さらにIR誘致を巡る秋元氏の“別の疑惑”についての捜査も水面下で進められているという。

■プライベートジェットの発着が可能な飛行場の整備を進言

「秋元氏は自著『日本の極みプロジェクト』のなかで世界の超富裕層をターゲットにしたプロジェクトについて言及しています。そこで超富裕層を呼び込むためのインフラ、具体的にはプライベートジェットの必要性を繰り返し説いています。秋元氏はスキーリゾートとして知られる留寿都にIR誘致を進めてきた北海道の加森観光などに対し、プライベートジェットの発着が可能な飛行場の整備も進言。その実現に向けても動いていたとされているのです」(社会部記者)

 秋元氏は2017年8月から翌年10月までIR担当の内閣府副大臣兼国交副大臣として航空行政も担当しており、そこに疑惑の目が向けられているのだ。

「鍵を握るのは当時の秋元氏の元部下で、国交省航空局から北海道庁に出向した官僚です。北海道出身で、政治志向があり、官僚らしからぬ派手な風貌で知られています」(同前)

■大手パチンコチェーン、ガイア本社にも家宅捜索

 捜査が広がりをみせる一方、秋元氏のカネの流れを知る元政策秘書のT氏が逮捕を免れたことで様々な憶測も広がっている。

「そもそも今回の特捜部の動きは、12月7日にT氏らの自宅に家宅捜索が入ったことで表面化しました。彼は秋元氏の信頼も厚く、すべてを知る立場だった。もちろん任意で事情も聴かれていますが、彼は昨年から精神的に弱っており、曖昧な供述しか得られていないのが実情。司法取引ではなく、入院中で勾留に堪えられないことから逮捕が見送られたとされています」(司法記者)

 T氏は2011年に芸能ビジネスなどを手掛ける会社『ATエンタープライズ』を設立。秋元氏も顧問を務めていたことから、特捜部は早くから同社を舞台にした秋元氏の“錬金術”に着目していた。

 その一つが秋元氏とパチンコ業界との蜜月関係だ。

 秋元氏逮捕の翌日、特捜部は大手パチンコチェーン、ガイア本社に家宅捜索に入った。ガイアはパチンコホール業界ではマルハン、ダイナムに次ぐ三番手。最近では創業一族の内紛や不正経理を告発する怪文書が飛び交うなどの問題が浮上していたという。

■「何かあった時のために」月額40万円の顧問料

「実はガイア関係者への特捜部の任意の事情聴取は11月上旬から密かに進められていました。ガイアはもともと警察OBの平沢勝栄議員と近いとされていたのですが、創業一族の内紛後に秋元氏と急接近。間を取り持ったのは秋元氏の支援者の不動産会社社長です。

 そして2017年10月から2019年の11月まで、ガイア本体で月額20万円、関係会社から20万円の計40万円を顧問料という形でATエンタープライズに支払ってきたのです。契約は交わしているもののほとんど実態のない“架空契約”であり、ガイア側は秋元氏に対して特別な見返りを求めていたというよりも『何かあった時のために』という感覚だったようです」(前出・検察関係者)

 かつて30兆円産業と呼ばれたパチンコ業界は、今ではその市場規模が急速に縮小。ギャンブル性の高い機種の登場が深刻な社会問題となり、生殺与奪の権を握る警察当局の顔色を常に窺ってきた歴史がある。

「規制強化に喘ぐパチンコ業界にとって、政治力はある意味で生命線です。秋元氏は業界2位のダイナムとも縁が深く、毎年数十万円分のパーティー券を購入して貰っているだけでなく、ダイナムが主導する業界団体『パチンコチェーンストア協会』の政治分野アドバイザーを他の与野党議員らとともに務めていました。落選中には、都内のパチンコホール運営会社から顧問料を貰い、社員が加入する健康保険にも加入させて貰っていたそうです」(パチンコ業界関係者)

■「まさしく“徒手空拳”で這い上がってきた」

 秋元氏は2014年に設立された、パチンコ業界の諸問題を扱う『時代に適した風営法を求める議員連盟』(通称、風営法議連)の事務局長でもあった。

「秋元氏はパチンコ業界と同じように、風営法の規制を受けてきたナイトクラブの“代弁者”としても活動していました。彼は世襲議員のように地盤もなく、議員秘書から政治活動を始め、まさしく“徒手空拳”で這い上がってきた。その清濁併せ呑むスタイルが、今回のIR誘致では裏目に出た形でしょう」(前出・社会部記者)

 特捜部はIR誘致を巡る“受託収賄罪”に持ち込むために、否認を貫く秋元氏に対し、政治資金規正法違反など次々と法令違反の疑惑を持ち出し、外堀を埋めている状態だという。

「現特捜部長の森本宏氏は常々『広がりのある事件をやりたい』と漏らしており、リクルート事件のような複数の政治家がターゲットになる事件を狙っていた。その意味ではIRは格好の舞台でもあるのです」(前出・検察関係者)

 IRの“闇”の解明はまだまだ始まったばかりだ。

(西崎 伸彦/週刊文春)

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