保育園のエキスパート地方議員が語り尽くした、最強の保活「7つの鉄則」

保育園のエキスパート地方議員が語り尽くした、最強の保活「7つの鉄則」

©榎本麻美/文藝春秋

「保育園落ちた日本死ね!!!」と書かれた匿名ブログが大きな話題を呼んでから間もなく2年が経つ。今年もまた保育園の入園申請の季節がやってきた(一部地域ではすでに締め切り済み)。

 待機児童問題がニュースなどで報じられたことで、保育園を探すための活動、いわゆる「保活」という言葉も一般化しつつある。しかし、まだまだ保活をめぐる誤解や知識不足も目立つという。

 保育園行政に詳しい地方議員3名が語り尽くした、パパママ必見の座談会。

(司会・構成:渋井哲也)

◆◆◆

――まずは保育政策とからめた自己紹介をお願いします。

 上田令子(東京都議) 私は「保育族」を名乗っています。もともと、マタハラを受けて会社をクビになり、待機児童の当事者になったことが政治家の道に入るきっかけでした。江戸川区は働く女性に冷たい自治体で「ワーキングマザーのツンドラ地帯」なんて言われていたほど。政治を介して、この課題を解消しなければと思い立って、1999年に働く母親の会「江戸川ワークマム」を作りました。当時はまだSNSがなく、ホームページと掲示板を開きました。

 本目さよ(台東区議) 私も子育て支援には力を入れています。議員になる前、ベンチャー企業で人事を担当していたんですが、あるとき社員が会社で初となる育休を取得しました。「よし、これは実績になる」と喜んだのも束の間、「子どもが保育園に入れないので、職場に戻れない」と告げられてしまった。小さな会社が一人の社員のために保育園を作ることはできません。ならば、自治体から変えないといけない。「誰か、議員になって」と思っても、なかなか難しい。そこで、まずは自分が議員になろうと志したのです。

 伊藤陽平(新宿区議) 私は、教育政策がやりたくて議員になりました。いま29歳で、同世代では子どもを持つ友人も増えてきました。ところが、きちんと保育園に入れるのかどうか、知識がまったくなくて困っているという声があちこちから聞こえてきます。集まった声をもとに議会での提言も行っています。

■初めての人には制度がわかりにくい

――本日お集まりいただいた3名の共通点は、自主的に「保活セミナー」を開いていることです。

 上田 いわゆる「保活セミナー」の主催はもう19年目になります。多分、この手のセミナーを開いたのは私が初めてだったのではないでしょうか。最近でこそ「保活」の情報がインターネットでも手に入るようになりましたが、当初は不正確な噂も多くて……。ノウハウを知らないために保育園に入れない人も少なくありませんでした。保活のトレンドは変わりますから、情報は毎年アップデートしています。

 本目 私は、保活セミナーを開いたのは今年が初めてです。知り合いの区議から、とてもニーズがあると聞かされたからです。本来、行政がきちんとアナウンスすべきですが、区に提案してもオフィシャルな説明会は開かないと言われてしまいました。保育園の入園手続きは点数の計算方法が複雑で、台東区ではどういう人が優先されるのか、初めての人にはわかりにくい。分厚い資料を読むのも大変です。

 伊藤 私も今年からです。保活セミナーは、もともと先輩議員がやっていたんです。保活のテクニックに加えて、子育て支援セミナーという形で開きました。また、インターネットを中心に活動をしていることもあって、普段からフェイスブックなどのSNSを活用したコミュニティで意見や情報を交換しています。

 上田 コミュニティは本当に大事なこと。去年はオロオロしていたママも、1年経てば「先輩ママ」になりますから。

 伊藤 そうですね、私のセミナーにも行政よりも詳しいような人に参加してもらっています。行政に相談するのと違って、先輩ママが相手ならば精神的な安定度が違いますからね。

――まったく知識がない人からすると、子どもを保育園に入れようと思ったら「保活とは何か?」から始まりますよね。

 上田 以前はそうでしたが、最近では勉強熱心な方が多くて、こちらも詳しく調べておかないと突っ込まれてしまいます。基本はまず公的な資料をじっくり読むこと。この読み解きには、是非パパも関わってほしいですね。

 本目 本来ならば、保活をしなくても希望者が全員保育園に入れることが望ましいので、行政をチェックする身としては申し訳ないのですが……。

 伊藤 情報をキャッチする競争のようになってしまっている状況は良くないですね。行政側の情報発信、そして何よりも保育園整備は大前提です。

 本目 あと、私は保育園の新規開設情報などをブログで発信しています。確かに保育園の数は増えているのですが、そのためか「入れるだろう」と安心してしまっている方もいます。行政側で保育園を毎年増やしてはいますが、都心は人口も共働き世帯も増えていますから、まだまだ厳しい状況には変わりない。その点は注意喚起しています。

■希望園はたくさん書いてください

 上田 明らかなミスや誤解で保育園に入れなくなるような不幸はなくしたい。例えば、(1)希望園を1件だけ書くと「思いが強い」から合格する、なんて都市伝説が一人歩きしています。絶対にありえない!

 本目 間違いないです。自治体によって細かいルールは違うと思いますが、基本的に点数の高い人から順に保育園の枠を割り振っていきます。先に点数が高い方で定員が埋まってしまえば、いくら第1希望に書いても意味がありません。希望園はたくさん書いてください。欄外でも別紙でもかまいません。

 上田 江戸川区の申請書類には希望園は5つしか書けませんが、欄外に10園ぐらい書くようにセミナーではお伝えしています。

 伊藤 いま「点数」の話が出ました。細部は自治体によって異なりますが、「保育が必要な状況かどうか」を数値化したものですね。両親の勤務状況や兄弟の数など、家庭の状況が項目になっています。この点数が高い順に保育園に入れるわけですね。

 本目 まずは(2)自分の「持ち点」を正確に把握することが重要です。そのためには、市役所・区役所の窓口に行って、担当の部署できちんと確認してください。台東区の場合は、「子育てアシスト」という保育園のコンシェルジュもいます。質問をしまくって大丈夫です。

 個別に相談を受けた中では、行政職員とのコミュニケーション・ミスで点数が低かったという事例をよく聞きます。例えば、子どもの面倒を祖父母に見てもらえない場合、祖父母が遠方に住んでいる場合には、(台東区の場合)1点が加算されます。しかし「祖父母がいる」という事実だけを伝えたため、加点がされなかった、といったケースがありました。こちらの状況を正確に伝えた上で、点数の確認もきちんとしないといけません。

 伊藤 その上で、(3)最低何点あれば特定の保育園に入れるのか、確認する作業を行います。新宿区の場合、「○○保育園の○歳児のクラスは、昨年最低何点から入れましたか?」と個別に問い合わせれば教えてくれますが、ホームページなどでは公開されていません。隣の中野区では公開されているのに、新宿区の担当部署に聞いても「そういう要望が出ていない」と言われてしまう。ブログで公開するのもダメとのことです。

 上田 おかしな話ですね。そんなときは、情報公開請求の対象になるかを聞いてみればいい。対象になるのであれば、黙ってブログに書いてしまって問題ありません。本来、行政のデータは住民のものですから。

 本目 どんどん問い合わせましょう。ニーズがあるとわかれば、公表する方向に舵を切るのではないかと思います。

 伊藤 いちいち電話対応することになれば、職員の人件費もかかりますから非効率ですよね。

 本目 ただ、昨年度の最低点数は、みんなが知ってしまったら低かった保育園も人気になって、入れなくなってしまう可能性はあります。あくまでも参考なのですが、全体的な傾向はわかります。

■議員のコネなんてありえません

 上田 逆にすべて客観的基準にもとづいて審査されるため、(4)窓口で泣き落とし作戦をやっても意味がない。職員は異動しますし、役所はすべて文書で動きます。ですから、伝えたい情報はすべて文書化して、可視化しなければ意味がありません。

 伊藤 よく(5)特定政党の支持者は有利になるとか、議員のコネで保育園に入れるなんて都市伝説もありますが、同じ理由でそんなことはありえません。誤解されると嫌なので、相談を受けた最大会派の議員自身が「私のコネで入れたわけではない」とあえて説明しているぐらいです。

 上田 ママたちも監視していますからね。「なんであの人は入れたの?」って。

 本目 私たちは決して「裏技」を持っているわけではありません。ただ、相談を受けてアドバイスをすることはできます。行政の窓口でわからない場合、区に一人ぐらいは子育てや保育園に熱心な議員がいると思います。区民がすぐにできるのは、議員を動かすこと。そして、そういう議員を応援していただきたい。自分のエリアで誰が詳しい議員なのかわからない場合には、編集部を通じてご連絡をいただければ、がんばって探します。

 上田 そうですね。私も「保育族」を増やすために、とにかく当事者である人を議員にしてきましたから、そのネットワークは拡充中です。

■とにかくすべて文書にすること

――「働き方改革」が叫ばれていますが、自営業やフリーランスの場合は大変でしょうか?

 上田 自営業のママからのご相談は多いですね。特に自宅で仕事をされている人は、保育指数など不利な部分もあり苦労されています。

 本目 台東区は自営業が多い土地柄で、フルタイムなら会社員と同じ扱いになっています。

 伊藤 新宿の場合は、自営業は1点マイナス。まったく一緒には扱われない。さらに外で自営か、うちで自営か。それによって点数が違ってきます。本来はどこで働いているかで差がつくのはおかしいのですが……。

 上田 フリーランスも大変。私がお話を聞いた中にプロスポーツ選手の方がいました。東京オリンピック・パラリンピック会場予定地のスポーツショップで働きながら、ご自身でも競技に参加したり、後進の指導もしていました。また、スポーツ振興・普及活動にも携わっていて、オリンピック・パラリンピックには欠かせない人材です。ご本人はポテンシャルに気づいていませんでしたが、「すごく貢献している人だな」と。ところが、勤務時間をストレートに点数化すると低くなってしまう。この方に関しては、きちんと五輪への貢献やこれまでの実績資料をレジュメにまとめることを提案。可視化した文書と資料が功を奏してか、無事に保育園に入ることができました。

 本目 いま、勤務体系が多様化していて、副業も解禁されつつあります。ただ、なかなか行政側の制度が追いついていなくて……。大学の非常勤講師の場合、複数の大学から勤務証明をもらいますが、保育園への入園申請時には講義をしている時間のみがカウントされます。タイムカードがあるわけではないので、講義の準備時間、研究時間は証明できない。港区だと、研究者も自営業と同じようにみなしてくれます。そのため、港区の事例を持ち出し、自営業としてみなしてもらったことはありました。

 上田 どのように移動しているのかSuicaの履歴を出すとか、定時のあとに仕事のある企業に関してはタイムカードを出してもらいます。延長保育の枠の奪い合いにもなりますから。とにかくすべて文書にすることですね。

 本目 このように審査制度も待機児童の数も自治体によって異なります。このため、保育園に入るために引っ越しをする方もいるようです。ただ、事前にきちんと制度を調べておく必要があります。(6)杉並区のように住民歴が長い方が優先される自治体もありますから(※同点の場合に、在住期間が長い方が優先)。「入りやすい」という情報が広まって、特定の自治体で待機児童が急増することもあります。わざわざ引っ越しをしたにもかかわらず待機児童になってしまったら、目も当てられません。

■保育園にすべて落ちてしまったら……

――あまり想像したくないことですが、希望する保育園にすべて落ちてしまった場合、どうすればよいのでしょうか?

 上田 諦めないことです。(7)仮に認可保育園に落ちても、認証や認可外の保育園を探すこと。幼稚園の預かり保育で乗り切る。あとは安心価格で見てくれるシッターさん。いずれも質の確認は必要です。また、中途での保育園の入園申請は絶対にやっておくべきです。

 本目 とにかく会社は辞めないでください。今年10月から育児休業を2歳まで延長できるようになりましたので、知識を持った上で会社と交渉してください。パパとママの子連れ出勤も模索してください。

 上田 絶対に就労は継続してほしいですね。子どもは一生保育園にいるわけではない。一人で抱え込まず、地域で仲間を作ることです。

 伊藤 住んでいる自治体の外に目を向けるのも一つの手だと思います。例えば、中野区の人が新宿区の保育園に入ってきています。通勤先や通勤経路の保育園も選択肢に入ってきます。区外の認証保育園や認可外保育園の情報もチェックしてください。

 本目 1次申請で落ちても、追加の2次申請で受かる場合もあります。可能ならば、希望保育園を増やしてください。14希望とか、15希望まで書く。

 上田 もちろん保育の質は大事ですが、あまり地理的な条件などで選り好みしすぎないことですね。自転車で通える範囲ならば、すべて希望に書くべきです。

 本目 新規開設園の情報も逃さないでください。また、台東区には、パートでも入れる定期利用保育もあります。墨田区にもあります。働かないと家計が成り立たないけれど、正規では雇ってくれない。本当に困った人が入れないと意味がない。そういったニーズをすくい取るためのものです。区によって制度は違うと思いますが、どんどん問い合わせていきましょう。

■保育園見学では、子どもに「園長先生は誰?」と聞いてみる

――保育園選びで気をつけるべき点はありますか。

 上田 「入れるかどうか」ばかりに気を取られていますが、質を問うことも大事です。マスコミで大々的に宣伝しているような保育園は、たいてい中の保育はいい加減です。普段は園長先生が不在、あるいはスカート姿で保育に関わっていないのが一目でわかる。子どもと向き合っていると、PRしている暇なんてありませんよ。

 伊藤 確かに思い当たる保育園はありますね。どことは言いませんが……。

 上田 みなさん、保育園の見学に行く機会があると思いますが、保育士同士がきちんとコミュニケーションを取れているかチェックしてください。園長と保育士の関係も重要です。園長が高圧的な態度を取っている園では、保育士がのびのび働けず、子どもにしわ寄せが行きかねません。

 また、年長の子どもさんを見かけたら、「園長先生は誰?」と聞いてみるのもいい。園児が「園長先生!」と大声で指さしたり、園長の膝に抱きついたりしたら「合格」です。一方で、「知らない」という返事や怖がって近寄らない場合は、要注意の園長です。園長が真剣に運営しているかによって、保育園の良し悪しが決まるのです。

 伊藤 認可外保育園の場合には、東京都福祉保健局のホームページに立ち入り検査の情報が載っています。また、「 福ナビ 東京都福祉サービス第三者評価 」 (http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/hyoka/hyokatop.htm)というサイトは、職員と利用者を対象としたアンケート調査を踏まえた各種保育園に対する評価結果を公表しており、こちらも必見です。

 本目 私が見学して「良かった」と感じたのは、布おむつを使っている保育園でした。もちろんご家庭でも布おむつ強制というわけではありませんし、布おむつの洗濯はすべて園で行っています。そこは、送迎でお母さんが遅れてきても、絶対に叱りません。なぜならば、叱られたお母さんが家で子どもを叱るからだと。そこまで考えられている。地域でも評判がいい園ですね。

 伊藤 新宿区のある園では、お母さん、お父さんが迎えにきたら、「よく頑張っていますね」と褒めることを徹底しています。保護者は子育てに苦労しているけれども、評価される機会はないですから。そこまで配慮している保育園は、見学をしても雰囲気が違いました。

 上田 施設よりサービス、施設よりも保育士――「子どもにとってよい保育がよい保育」だと先輩たちに教わりました。見た目の綺麗さや立地条件よりは保育士ですね。あと、ママたちの直感は大切にした方がいいと思います。

 本目 どうしても地の利が優先されてしまう傾向はあります。布おむつの保育園も、ちょっと駅から遠いのでそこまで人気がありません。ただ、逆に考えると「遠くてもいい保育園」が実は入りやすい場合もある。このあたりも考慮して保育園選びを検討していただきたいと思います。

 伊藤 命を預かる場所ですからね。

写真=榎本麻美/文藝春秋

(渋井 哲也)

関連記事(外部サイト)