山口組が「特定抗争」指定で東京に押し寄せる! “ノーブレーキの超武闘派”高山若頭と「人がいなくなる」極秘部隊

山口組と神戸山口組「特定抗争指定暴力団」に指定 東京都内に活動の主軸移すと観測も

記事まとめ

  • 指定暴力団六代目山口組とそこから分裂した神戸山口組を「特定抗争指定暴力団」に指定
  • 警戒区域内では、組事務所への立ち入り、組員5人以上での会合などの活動が禁止される
  • 活路を求めオリンピックイヤーに本拠地・関西から東京都内に活動の主軸を移すと観測も

山口組が「特定抗争」指定で東京に押し寄せる! “ノーブレーキの超武闘派”高山若頭と「人がいなくなる」極秘部隊

山口組が「特定抗争」指定で東京に押し寄せる! “ノーブレーキの超武闘派”高山若頭と「人がいなくなる」極秘部隊

山口組弘道会本部で「特定抗争指定暴力団」に指定されたことを示す標章を貼る愛知県警の捜査員(1月7日、名古屋市) ©時事通信社

 暴力団同士で久々に血の応酬が派手に繰り広げられた2019年が終わり、2020年は一転、暴力団にとっては厳しい一年となりそうだ。国内最大の指定暴力団六代目山口組とそこから分裂した神戸山口組は1月7日、様々な活動が制限される「特定抗争指定暴力団」に指定された。活路を求め、このオリンピックイヤーに本拠地である関西から東京都内に活動の主軸を移すとの観測も飛び出している。

■「特定抗争指定暴力団」への指定で活動が著しく制限

「いやあ、ひまだ」

 昨年の末、六代目山口組の関係者はそう周囲に漏らしていた。そう言いたくなるのも無理はない。六代目山口組は昨年、神戸山口組との抗争を繰り広げた結果、神戸市灘区の本部を兵庫県警によって使用禁止とされ、従来は警備・警戒のために常に傘下組織の組員が交代で本部に常駐していた通称「ガレージ当番」などが不要となったのだ。

 本部の使用禁止を受け、昨年10月に出所したナンバー2の高山清司若頭の出所祝いや同年12月の六代目山口組全体の納会も、本部ではなく、高山とゆかりのある名古屋市の山口組傘下の組事務所で実施。今後も本部再開の見通しは立たない。

 それどころか、六代目山口組と神戸山口組には究極的な「ひま」が待ち受ける。7日に公示された「特定抗争指定暴力団」への指定だ。

「特定抗争指定暴力団」とは、抗争が激化した暴力団を都道府県が指定する制度。指定された警戒区域内では、組事務所への立ち入り、組員5人以上での会合、対立組織の事務所周辺への立ち入り、などの活動が禁止され、違反すれば懲役3年以下の罰則などが科されるようになり、活動が著しく制限される。

 モデルケースとされたのは九州・福岡だ。福岡県を拠点とする指定暴力団道仁会から九州誠道会(現・浪川会)が分裂。一般人にまで危害が及んだ抗争を繰り広げた結果、警察庁が制度構築に乗り出し、2012年に第1号として指定。その後、九州誠道会は形式上解散し、抗争に一応の終止符が打たれた。

■「六代目側も神戸側も、都内に活動の主軸を移すのでは」

 今回、六代目山口組と神戸山口組が指定されれば、同様の制限を受ける。ただ、福岡のケースと違うのは、どちらの組織も全国の津々浦々に傘下組織を抱えることだ。対して「特定抗争暴力団」への指定は都道府県単位。今回の指定は兵庫、愛知、大阪、京都、岐阜、三重の6府県のみ。指定から漏れた自治体は「警戒区域」に入らず、従来通りの活動ができることになる。

 ある暴力団関係者は「『特定抗争』に指定された後は、六代目側も神戸側も、今後は東京都内に活動の主軸を移すのではないか」と予測する。

 そもそも暴力団はカネのあるところに集まることから、すでに東京には多種多様な暴力団が集中する。これ以上集中するとなれば、東京五輪を控える東京都内の治安維持に更なる難題が重なることになる。

■高山若頭の“ノーブレーキ”が垣間見える人事

 ただ、六代目山口組の舵取りを担う高山は意に介する様子はないようだ。本部の使用禁止後も自身ゆかりの組事務所を代用しただけでなく、さらなる組織改革にも取り組むとみられている。

 高山と組長の司忍と自身の出身母体である最大の2次団体「弘道会」は出所後間もない11月に人事に着手。弘道会のナンバー2である若頭を中野寿城から野内正博にすげ替えた。中野は神戸山口組とのパイプもあり、どちらかといえば「開明派」だが、野内は業界用語でいう「武闘派」とされる。

 武闘派といえば聞こえはいいが、実際は目的達成のためであれば人が「いなくなる」ことも厭わないことを指す。捜査関係者は「野内が率いる野内組は、かつて弘道会で対立相手への危害や、警察への脅迫などの裏工作を行っていた極秘組織『十仁会』との関係が取り沙汰されたこともある」と指摘する。そんな人物を中核組織のナンバー2に据えた、ということは高山がブレーキを踏むつもりが露一つないことを物語る。

 一連の素早い動きはまた、高山が七代目就任に向けていまだ意欲を燃やしていることも傍証するといっていいだろう。

■若頭という役職の前に待ち受ける「茨の道」

 若頭という役職は単に組織のナンバー2であるだけでなく、親分である組長の跡継ぎとしての意味も持つ。そのため、組長が代替わりするたびに、若頭は交代してきた。ただ、山口組の歴史を振り返ると、役職としての若頭の前には茨の道が待ち受ける。

 そもそも山口組を戦後最大の暴力団に拡大させた三代目組長、田岡一雄以降、組長とともに就任した若頭3人がそのまま組長になった例は皆無。それどころか、山を含む直近の若頭6人のうち半数は銃撃されて非業の死を遂げているのだ。

 他の若頭達の一部は組長に就任したが、最後まで苦難の道を逃れられたとはいえない。四代目組長になった竹中正久は若頭を経て組長に就任するも、就任に異議を唱えて山口組を飛び出た山本広側に殺された。五代目組長の渡辺芳則も若頭を経て就任したが、殺害された若頭の宅見勝の後を継いで若頭となっていた現組長の司忍に半ば脅迫されるかたちで組長を退いたとされる。

 たとえ司の最側近である高山といえども七代目の椅子は決して安泰ではない。弘道会のトップは司以上に高山に近い竹内照明だが、今回、その補佐役に野内を据えた人事は、山口組の中核勢力である弘道会の主導権を司派から高山派に戻す意味合いもあるのだ。

■ヤクザ組織が変革しても、変わらないこと

 無論、「特定抗争」指定などで組長就任のメリットもさらに減るばかりにみえる。捜査関係者は「メンツさえ捨てれば、警察も利用しつつ、色んな組織と合従連衡する半グレなどのアメーバ的な組織形態の方が、ヤクザにとってもメリットが大きいはず」とヤクザ組織の変革を予想する。

 ただ、半グレのような組織に近づいても、ひとつだけ変わらないことがある。それは高山の復帰前後の流れから見ればあきらかだ。ヤクザは、暴力装置であることだけは放棄せず、その掟に忠実であるものだけが生き残る。それが高山なのか、別の人物なのか、というだけで。

(末家 覚三/週刊文春デジタル)

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