“殿下の称号失う”ヘンリー王子とメーガン妃“王室離脱”に最終決定 「民間人になると106億円稼げる?」

“殿下の称号失う”ヘンリー王子とメーガン妃“王室離脱”に最終決定 「民間人になると106億円稼げる?」

2019年7月、映画「ライオン・キング」欧州プレミアにヘンリー王子夫妻が出席 ©ロイター/AFLO

[ロンドン発]イギリスの欧州連合(EU)離脱(BREXIT)にちなみ、「MEGXIT」と呼ばれるヘンリー王子(35)と元米女優メーガン妃(38)の“王室離脱”問題。英中東部サンドリンガムの別邸で行われた緊急の家族会議を受け、18日、エリザベス女王の声明と最終決定が発表された。

 2人は今年春には王室の称号(His or Her Royal Highness)を返上し、公務から完全に離脱する。サセックス公爵とサセックス公爵夫人の爵位はそのまま維持する。

 突然の“王室離脱”宣言からわずか10日のスピード解決となったが、「サセックスロイヤル」を使ったブランドビジネスを巡る火種はくすぶっている。

 18日に発表されたエリザベス女王とバッキンガム宮殿の声明からポイントを見ていこう。

■「2人はもう王室のメンバーではない」

(1)メーガン妃とヘンリー王子が王室の称号を継続して使用することは認められるのか?

「2人はもう王室のメンバーではないので、王室の称号は使わない」(バッキンガム宮殿)

 13日の家族会議のあとの声明でエリザベス女王がサセックス公爵やサセックス公爵夫人という王室の称号ではなく「ハリー(ヘンリー王子の愛称)とメーガン」とファーストネームで呼んだことから、2人が称号をあきらめるという観測が王室ウォッチャーから流れていた。

 その一方で1996年に離婚したダイアナ元妃から称号を取り上げて放り出す形になり、厳しい世間の批判にさらされた記憶がエリザベス女王には残り、同じ過ちは繰り返すまいと心に決めている。

 ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のポーリーン・マクララン教授(マーケティング)は筆者に「エリザベス女王が王室の称号を剥奪すれば、多くのメーガン妃とヘンリー王子サポーターは2人を殉教者とみなし、王室ブランドは傷つく」と語り、厳しい条件付きだが称号使用は認められると予測していた。

 しかし、王室の判断は称号の使用を認めないという極めて厳しいものになった。

(2)メーガン妃とヘンリー王子は今後も公務を担当するのか?

「軍の公式行事を含めて王室の公務から離れることを求められるということを2人は理解している」(バッキンガム宮殿)

「将来もキングとクイーンが残っているのはトランプの札と英王室だけ」と言われるのは、英王室が議会の監視にさらされ浪費を慎み、イギリスや英連邦の国民のために尽くしてきたからだ。

 エリザベス女王は93歳という高齢にもかかわらず、週1度、首相と会い、全ての政府文書と新聞に目を通す。送られてきた手紙も自分で読んで返事を書く。

 ダブル不倫、離婚、ダイアナ元妃の交通事故死で不人気のチャールズ皇太子もコーンウォール公爵領の農家が上手くいっているか、こまめに足を運んで、その声に耳を傾けアドバイスしている。

「民のかまどから煙が上っているか」手分けして目配りしているのがロイヤルファミリーだ。年間、国内外の公務は2000回、公式の晩餐会・昼食会・レセプション・園遊会で接待する人は7万人、受信・返信した手紙の数は10万通にのぼる。

■ロイヤルファミリーが公務をさばき切れなくなる恐れ

 王族がこなした昨年の公務の数は――。

・チャールズ皇太子521回
・アン王女506回
・エリザベス女王295回
・アンドルー王子274回
・ウィリアム王子220回
・キャサリン妃126回
・ヘンリー王子201回
・メーガン妃83回

 フィリップ殿下が高齢のため公務から引退。勾留中に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン被告の未成年性的搾取疑惑に関連してアンドルー王子は公務から解任された。

 エリザベス女王が公務を減らす中、メーガン妃とヘンリー王子が公務を一切、担わなくなるとロイヤルファミリーは公務をさばき切れなくなる恐れがある。

■メーガン妃が思い描くビジネスモデル 知名度と影響力をフル活用

(3)メーガン妃とヘンリー王子が求める「より独立した生活」とは?

「2人は女王陛下の価値を支え続ける」(バッキンガム宮殿)

 メーガン妃は「移行期間」の今年はイギリスとカナダの二重生活を送り、ドナルド・トランプ米大統領がいなくなったら北米の拠点を映画産業のメッカ、ロサンゼルスに移すとみられている。

 メーガン妃が思い描くのは、バラク・オバマ前米大統領とミシェル夫人のように知名度と影響力をフルに活用するビジネスモデル。書籍の印税、高額のスピーチ料に加え、プロダクション会社を立ち上げてネットフリックス・オリジナル映画を作成する。

 すでにメーガン妃とヘンリー王子は友人の米人気司会者オプラ・ウィンフリーさんと協力してメンタルヘルスをテーマにしたTVドキュメンタリーシリーズの制作も計画している。

 この数週間で100以上の「サセックスロイヤル」ブランドを商標登録。サセックス公爵とサセックス公爵夫人の公式アカウントとして開設したインスタグラムのフォロワーはアッという間に1080万人を突破。

 アーチーちゃんの育児にスポットライトを当てれば世界一のライフスタイルサイトになるのは間違いない。

 英大衆紙が見積もるメーガン妃とヘンリー王子の新たな収入は下の表の通り、上手く行けば年に7430万ポンド(約106億5000万円)も荒稼ぎできる。

 英ブランドのビジネス評価コンサルタント「ブランドファイナンス」最高経営責任者(CEO)デービッド・ハイ氏は英王室の有形・無形財産について筆者に次のように解説する。

 2017年時点で英王室に属するクラウン・エステートが131億ポンド相当、エリザベス女王に属するランカスター公爵領が5億ポンド相当、チャールズ皇太子に属するコーンウォール公爵領が9億ポンド相当(いずれも大半は不動産)、絵画や装飾品などロイヤル・コレクション・トラストが110億ポンド相当。

 そして無形財産のブランド価値が420億ポンドで、総額675億ポンド(約9兆6700億円)。英王室はこの年、英国経済に17億6600万ポンド(約2530億円)も貢献している。

「英王室は象徴としても経済的にもイギリスの国宝だ。イギリスがEUから離脱した後は英連邦加盟国や他の国との貿易関係を促進させる王室外交が頼みの綱になる」

「キャサリン妃がイギリス・ブランドの衣服を着ると、アメリカ国民の37.6%が自分も着てみたいと感じるようになる。メーガン妃やヘンリー王子はそれぞれ35%と31.9%だ」

「メーガン妃とヘンリー王子の“王室離脱”がイギリスのブランド価値を下げないことを望む。2人がロンドン、バンクーバーのいずれにいても若い王族が世界に向けて持つインパクトは変わらない」

「今後もこのユニークなグローバルアピールがカップルの経済的自立に役立つ」とハイ氏は力を込めた。

 しかし英王室伝統のプロトコルに精通するウィリアム・ハンソン氏は「サセックスロイヤルのアディダスやインスタグラムとの金銭の支払いを伴うパートナーシップを見る限り、警戒警報が鳴り始めている。商業主義に走れば人々の共感は失われる」と警鐘を鳴らす。

 デーリー・メール紙によると、メーガン妃は英王室に嫁いだにもかかわらず、ハリウッド時代の豪腕弁護士、エージェント、ビジネスマネジャーをそのまま抱え込んでいる。これではエリザベス女王やチャールズ皇太子、ウィリアム王子、それを支える私設秘書団が手玉に取られても何の不思議はない。

■「サセックスロイヤル」のブランド使用は無制限に認められるのか

 さらにメーガン妃は“離脱”宣言直前の昨年末に自分の会社の登記を米カリフォルニア州から「タックスヘイブン(租税回避地)」の一つとされるデラウェア州に移している。

 州税の売上税なし、個人所得税率は6.6%以下、法人所得税率も8.7%以下というデラウェア州がどんなところかと言えば、米誌フォーチュンが毎年発表するアメリカの総収益ランキング・トップ500の約65%が登記を置く。

 会社の所有権について開示を求められず、たった50ドル(約5500円)で会社を代表する代理人を雇うことができるからだ。

 これから「サセックスロイヤル」ブランドを使ってエリザベス女王を支えるためにチャリティー活動をしようという人がどうしてタックスヘイブンに会社の登記を移さなければならないのか。

 常日頃、タックスヘイブンと批判される英王室属領マン島の首席大臣は「アメリカこそ秘匿性の高いタックスヘイブンだ」「規制が緩いデラウェア州では1つのビルにマン島の10倍近い会社が登録している」と批判したことがある。

 前出のマクララン教授は「実行可能な解決策を見つける方法には多くの潜在的な対立がある。王室の称号を維持するのは問題がある。商業的ベンチャーに関しては厳しい制約が付けられる」と語る。

「エリザベス女王はセレブ文化に王室ブランドが汚されることを避けるよう切望したのだろう。現代の消費者文化の中で王室ブランドの主要な課題はセレブより上位に位置し、一定の神秘性を保つことだ」

「このバランスはハリーとメーガンの独立への動きによって確実に脅かされている。2人に商業的な収入ができれば税金の問題が生じる。デラウェア州への法人登記の移転報道が本当なら、ハリーとメーガンが王室ブランドを汚す恐れが膨らみ、さらなる嵐を巻き起こす」

 王室を連想させる「サセックスロイヤル」のブランド使用が無制限に認められるのか、大きな疑問が残る。

■「公務のための公的資金は受け取らない」の真意

(4)メーガン妃とヘンリー王子が放棄する公的資金とは?

「公務のための公的資金は受け取らない」(バッキンガム宮殿)

 2人は「公的資金には依存したくない」意向だが、公的資金がソブリングラント(王室の活動費)10万ポンドまたは200万ポンド(1425万円または2億8500万円)とチャールズ皇太子に属するコーンウォール公爵領からの利益配分230万ポンド(約3億2900万円)のうち、ソブリングラントだけを意味するのか、両方を指すのかはっきりとは分からない。

 デーリー・メール紙の試算をもとに、2人の年間予算(推定)は下の表のようになる。

 チャールズ皇太子はすでに結婚、出産で出費のかさむヘンリー王子にウィリアム王子より多くの利益を配分しており、家族会議で「支援するにしても限りがある」と、陸軍時代に給料をもらった経験しかないヘンリー王子に釘を刺したと報道されている。

 公務を全くしないのでソブリングラントは受け取らないが、チャールズ皇太子は父親としてコーンウォール公爵領の利益から支援を続けるとみられる。

■カナダ首相が言葉を濁した「2人の身辺警護費」

(5)イギリスとカナダの二重生活になると身辺警護はどうなる?

「王室は身辺警護のアレンジメントの詳細についてコメントしない。税金で賄われる身辺警護について独立したプロセスが確立される」(バッキンガム宮殿)

 最大6人の警察官による身辺警護、年間予算60万ポンド(約8600万円)は王室の称号を放棄した場合、認められない。エリザベス女王はダイアナ元妃に王室の称号を認めなかったため身辺警護がつかず、交通事故死という最悪の事態を防げなかったことを後悔している。

 それもあって2人に称号の継続使用を認めるという見方もあった。カナダのジャスティン・トルドー首相は2人の身辺警護費について「大半のカナダ国民は王族を迎えることを支持すると考えるが、どんなコストがかかるのか議論しなければならないことが山ほどある」と言葉を濁した。

 ヘンリー王子はアフガニスタンに従軍していたこともあり、イスラム過激派のテロ対象になる恐れは十分にある。身辺警護の詳細については慎重に協議が継続されるとみられる。

(6)ロンドン郊外ウィンザーのフロッグモア・コテージはイギリスの拠点として使用し続けるのか?

「イギリスの住まいとなるフロッグモア・コテージの改修費については返済したいと2人は望んでいる」(バッキンガム宮殿)

 300万ポンド(約4億2900万円)かけて改装したフロッグモア・コテージはイギリスの拠点としてキープする代わりに2人が負担することになった。国民の批判をかわしきれなくなったためとみられる。

■母の死を2人寄り添って乗り越えてきた兄弟の間に亀裂

 家族会議が行われた1月13日午前11時20分ごろ、渦中のヘンリー王子が別邸に現れ、エリザベス女王と1対1で話し合った。そのあと父親のチャールズ皇太子も加わり3人で昼食をとったが、兄のウィリアム王子が現れたのは家族会議が始まるわずか15分前の午後1時45分、家族水入らずの機会を意図的に避けた形となった。

 メーガン妃との結婚を急ぐヘンリー王子を、思慮深いウィリアム王子は最愛の母ダイアナ元皇太子妃の「よく知っている女の子と結婚しなさい」という助言を引いて押し留めた。その後もメーガン妃との間に見えない壁を築くウィリアム王子とキャサリン妃にヘンリー王子は不信感を強めていた。

 ウィリアム王子とヘンリー王子は家族会議の直前、英日曜紙の「絶縁」報道を否定してみせたものの、母の死を2人寄り添って乗り越えてきた兄弟の間に亀裂が入り、修復できないほど溝が広がっている現実を浮き彫りにした。一方的な“離脱”宣言もウィリアム王子が1週間前にヘンリー王子の会談申し入れを断ったのが直接の原因と報じられている。

 家族会議は午後2時から同3時半まで行われ、メッセンジャーアプリのワッツアップでカナダから参加するとみられていたメーガン妃は「他に誰が聞いているか分からない」(私設秘書団)という理由で外された。もちろんメーガン妃の報道官は即座に「必要がないと判断したから参加しなかっただけ」という反論を発表したのだが……。

 午後5時に発表されたエリザベス女王の声明は、メーガン妃とヘンリー王子に対して王室のプロトコルを破り、「ハリーとメーガン」というファーストネームで呼びかける前代未聞の内容となった。「家族」という言葉を8回も使い、王室制度の問題ではなく家族の問題であることを強調していた。

 メーガン妃がイギリスを逃げ出したのは人種差別があったからという批判に対して、イギリスのプリティ・パテル内相は英BBC放送のラジオ番組で「メーガン妃が英メディアの人種差別にあったという批判は当たらない」と一蹴した。

 英王室内で孤立するメーガン妃を母親のドリア・ラグランドさんは「アーチーちゃんの出産後、みじめで不眠に陥り、将来について不安発作に襲われた」と友人に漏らしたと英大衆紙は報じている。しかしメーガン妃はしたたかに自分の計画を実行に移しているように見える。

 エリザベス女王は18日の声明で民間人となるハリーとメーガン、アーチーちゃんに「最愛の家族」と呼びかけ、「この2年間彼らが集中的な詮索の結果、経験した困難を認識している。彼らのより独立した人生を送りたいという願望を支える」と述べた。

 その上で「今日のアレンジメントで彼らが幸せで平和な新しい人生を始めることを」とエールを送った。

 イギリスのコラムニストからはしかし、「メーガン妃が米俳優クリス・エヴァンスをハリー役にネットフリックスの『ザ・クラウン』でメーガン役を実演すればアカデミー主演女優賞間違いなし」という皮肉さえ聞かれる。

(木村 正人)

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