オリラジ中田敦彦を「フェイク問題に警鐘を鳴らす芸能人」扱いしたNHKの罪

オリラジ中田敦彦を「フェイク問題に警鐘を鳴らす芸能人」扱いしたNHKの罪

オリエンタルラジオの中田敦彦。「教育系YouTuber」として毎日動画を配信しているほか、オンラインサロンも運営している

 先日、Yahoo!ニュース個人にて公開した「 『責任持った発信が大事』と話す中田敦彦がYouTubeでフェイクを流す問題点 」と題した記事の中で、オリエンタルラジオの中田敦彦が運営する「中田敦彦のYouTube大学」の問題点を指摘したところ、想像以上の反響を頂いた。

 その反響を観察していると、記事に肯定的か否定的かを問わず、中田が間違った内容を発信していることを問題視する記事だと捉えている人が多かった。確かに中田の間違いは洒落にならないほど多く、「満州事変で張作霖が爆殺された」など、中学レベルの誤りすらある(張作霖が爆殺されたのは、張作霖爆殺事件、または満州某重大事件である)。

■問題の核心は内容の誤りではない

 しかし、記事中で言及しているとおり、YouTube大学が無視できないのは、その内容もさることながら、中田個人に問題がある。中田はNHKのフェイクニュース問題番組で司会を務めた他、フェイクを防ぐための提言として「責任をもって発信することが大事」と述べている。その中田が、無責任に発信するのはいかがなものか。記事のタイトルや、記事冒頭に掲載したキャプチャ画像からもこの点を強調しているのだが、単に誤りが多いという批判と理解する人が多かったようだ。

 誰しも誤り自体は避けられない(中田のは多すぎるが)。そして、一般の方が記事を誤って理解するのは致し方ない面もある。だが、筆者の記事を受けて、インターネットテレビ局AbemaTVの報道番組「AbemaPrime」が1月16日に放映した、「 オリラジ中田の動画に“デタラメ”批判 」でも、単純に中田の誤りの是非に矮小化されて報じられていたのには驚いた。ネットテレビとはいえ、プロがやっている以上、問題の核心を汲んで欲しかったのだが、放送された内容には失望した。

■悪意が無ければよい?

 問題の核心について、もう少し突っ込んで話をしよう。記事に対する反応で多く見られたのが、「中田に悪意は無いからよい」といった中田擁護論だ。結論からいえば、悪意のある無しはまったく関係がない。

 そもそも、中田が「責任をもって発信することが大事」とコメントを寄せたのはどんな番組だったのか。それは、NHKのクローズアップ現代+が2019年3月4日に放映した、「 “フェイクニュース”暴走の果てに 〜ある外交官の死〜 」だ。

 2018年に関西を襲った台風21号により、関西国際空港が孤立したのは記憶に新しい。当時、空港には3000人の旅行者が取り残されたが、翌日にバスによる旅行者の輸送が始まると、「中国大使館がバスを手配した」という投稿がSNSで拡散される。

 中国大使館の行動にSNS上で称賛が集まる反面、台湾の駐日大使館に相当する台北駐日経済文化代表処(以下、駐日事務所と記す)に対して、台湾のSNS上で批判が集中するようになり、遂には台湾の大手メディアや野党議員まで駐日事務所の批判をはじめた。厳しい批判に晒された駐日事務所の大阪事務所長は命を絶つ。

■フェイクの拡散が1人の外交官の命を奪った

 しかし、事務所長が命を絶った翌日、バスを手配したのは中国大使館ではなく関西空港だったことが明らかになる。駐日事務所に対する批判は根拠のないフェイクだったのだ。

 1人の外交官の命を奪ったこのフェイクの拡散には、ほとんど悪意が介在していない。みんな事実だと思って、義憤からその拡散や駐日事務所批判を行っている。中田のコメントはこの番組の内容を受けてのものだから、フェイクを拡散することに対して、悪意の有無はまったく関係ないのだ。

 このような背景があって出たコメントである「責任をもって発信する」。皆がそうすべきと中田が言ったことを、当の中田自身が行わずビジネスに勤しんでいるのが問題なのだ。

■間違いを指摘しても得するのは中田だけ

 また、他に多く見られた中田擁護論は、「間違っているならそれを指摘して、より良いものにしていけばいい」といったものだ。が、これらは一笑に付すべき意見だ。

 単純な話で、中田がビジネスの一環としてやっているYouTube大学に、どうして無給でそれに協力する義理があるのだろうか。数十分もある動画をいちいちチェックして、一つ一つチェックを行ってそれを指摘して、得られるものは何もない。ただ得するのは中田とYouTube大学の運営スタッフだけだ。動画のクオリティ確保は中田らが考えるべきもので、それも「責任」というやつだろう。

 そもそも、YouTube大学の内容に誤りがあるとの指摘は、昨年の冬あたりからSNSで広まっていたが、YouTube大学自体は2019年4月に始まったものだ。ということは、半年近くその内容が問題視されていなかった訳で、つまりYouTube大学の視聴者に動画の問題を指摘するような人がいなかったということだ。この運営方針のまま続けていても、改善は望めないだろう。

■NHKはそこんとこ分かってる?

 Yahoo!ニュース個人に記事を書くにあたって、いささかの葛藤があった。なぜかと言えば、騒動になればなるほど、YouTube大学の広告になり、オンラインサロンといった中田のビジネスを支援することになりかねないからだ。実際、記事で取り上げた動画の再生数は、記事公開から3日経たずして13万回も再生数が増えていた。

 しかし、自分を執筆に向かわせたのは、NHKのフェイクニュース問題番組に出演し、フェイクをどう防ぐかなんてエラソーなこと言ってる人間が、自分のビジネスでは真逆な態度を示していた点である。

 中田が「責任をもって発信することが大事」とNHKクローズアップ現代+の公式アカウント内で発言したのは2019年3月。翌月にYouTube大学が始まり、さらには12月にNHKのフェイク問題番組で司会を務めた。この間フェイクや誤りを拡散し続けた中田を「フェイク問題に警鐘を鳴らす芸能人」として番組(それもタイトルが「 フェイク・バスターズ 」!)に出演させたのは明らかに問題だし、今後もそうなってはならないだろう。

 そこんとこ分かってる? NHK。

(石動 竜仁)

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