「女性は大統領になれない」と言ったのか 米民主党“内輪揉め”の舞台裏

「女性は大統領になれない」と言ったのか 米民主党“内輪揉め”の舞台裏

支援者との自撮りが人気のウォーレン氏

 2月3日に予定される指名争いの緒戦、アイオワ州での党員集会を前にして、民主党内で思わぬ波乱が起きている。

「全国放送で嘘つき(liar)と言ったわね」

「君の方こそ私を嘘つき呼ばわりしたじゃないか」

 エリザベス・ウォーレン上院議員(70)とバーニー・サンダース上院議員(78)との間で殺伐とした言葉が飛び交ったのは、1月14日、CNN主催の討論会終了後のこと。英語圏では、殴り合いの喧嘩を覚悟しろと言われる「liar」という言葉の応酬だった。

 きっかけは討論会の中盤、司会者がサンダースに、「18年にあなたはウォーレンに対し、『女性は大統領になれない』と言ったそうですが、なぜそんなことを言ったのか」と尋ねたことだ。サンダースは、「断じて口にしていない」と否定した。

 録音テープもなく、言った、言わないとなる典型的な水掛け論だ。ワシントンポスト紙は翌日の紙面で、「どちらも敗者だ」というコラムを載せている。

 有力候補による、お粗末な口論が起きた背景には、ウォーレンの意外な苦戦がある。

 その苦境は資金集めの数字に如実に表れている。民主党候補者の各陣営が発表した最新の結果では、12人の候補者のうちサンダース陣営がトップとなる3450万ドルを集めたのに対し、ウォーレン陣営は4位の2120万ドルにとどまる。

■「討論会での人格攻撃はトランプ大統領を利するだけ」

 またアイオワ州の有力紙であるデモイン・レジスター紙が行なった世論調査では、サンダースが20%の支持を得てトップで、2位のウォーレンは17%。世論の風は確実にサンダースに吹いている。

「女性大統領の是非」という議論は、ウォーレンによる10%以上の浮動票を狙った窮余の策と言われる。

 このネガティブ・キャンペーンはどのような影響をもたらすのか。アイオワ大学でアメリカ史を教え、同州の民主党で要職を務めたドロシー・フェリップス氏(79)は、こう話す。

「バーニーは女性の権利を尊重してきた政治家で、彼の発言とはとても思えない。また政策を議論すべき討論会で人格攻撃をしても、トランプ大統領を利するだけで得策とは思えません」

 実際、トランプ大統領は高みの見物を決め込む。

 私はウィスコンシン州での支持者集会を取材したが、普段は「クレージー・バーニー」と呼ぶトランプ氏が「バーニーは、(そんな発言を)していないと思う」と擁護した。その表情からは、民主党の内輪揉めを楽しむ余裕すらうかがえたのだ。

(横田 増生/週刊文春 2020年1月30日号)

関連記事(外部サイト)